イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

江戸前エルフ:第4話『古今東西エルフ合戦』感想

 摂津難波より、褐色の衝撃到来!
 かわいいかわいいヨルデ様が散々に東京を荒らし回り、ほっこり暖かな空気が流れる江戸前エルフ第4話である。
 3話までで作品大体の”形”を理解らせた上で、ベストタイミングでの新キャラ投入、それ触媒に描かれる新たな魅力。
 作品のポテンシャルを最大化する”アニメ化”で、大変ありがたく視聴させている。
 おこちゃま通り越して赤ちゃんなヨルデ様を相手取ることで、エルダの新たな顔が見え、小糸がもっと彼女の生き神様を好きになる流れが、ひっそり控えめ……ながら作品の底流として、とても力強いのが良かった。
 アニメで見返すと、まーーじで小金井小糸16歳がエルダリエ・イルマ・ファノメネル621歳を好きすぎて良いんだよな……。

 

 

 

画像は”江戸前エルフ”第4話から引用

 つーわけでAパート、『釘宮声のおしゃまなライバルが訪れたとあれば。ちったぁ摩擦も起こるだろう!』という常識……”江戸前エルフ”はやらん!
 お互い別ベクトルでダメダメな生き神様を抱え、東西巫女はすぐさま打ち解け、当のエルフも600年以上の因縁を平和にこねくり回して、ダダこねたりお姉さんぶったり、大変平和である。
 エルダはなにかと小糸の背中に隠れるヒキオタ、ヨルデは手のかかるお子様と、可愛いダメ要素をたっぷり搭載することで、永生者特有の上から目線を上手く粉砕して、むしろ巫女が先導する距離感を作れてるのはいいな、と思う。
 しかし”生き神様”というポジションに収めることで、ただのダメダメ美少女では背負えない『エルフである意味』てのが際立って、作品独自の面白さになっているのもグッドだ。
 やっぱそのお話でなければ描けない面白さがお話の手中になっていると、創作物は面白いわな。

 ヨルデ様とお世話係の向日葵ちゃんは、ニ号エルフ&巫女として大変良い造形で、心地よい騒がしさを作品に連れてきてくれる。
 エルダと小糸の生活をここまでの三話で、しっかり煮出したことが生きていて、大阪の凸凹コンビにもそれぞれの思い出と絆があり、持ちつ持たれつな生活があり、確かな愛があるのだろう……と、賑やかなやり取りを見ながら思えるのは良いことだ。
 異邦の客(あるいは幼い昔なじみ)を懐に迎えることで、相手を気遣いお姉さんぶるエルダの新しい顔も見えるし、そこに新たに惹かれていく小糸の思いも、爽やかに暖かくて嬉しい。
 ベタベタ愛情を表に出すわけではないが、毎日違う顔を見つけ共に笑って過ごす中、しみじみと柔らかな感情を新たにしていく独特の描写は、日常モノのライトな食感に分厚い芯を入れて、作品の背中を伸ばしてくれてもいる。

 過積載な要素を強いデザインと声帯でブン回す、ヨルデメインのエピソードに一見思えるけども。
 見通してみると、ヨルデが来たことでエルダが普段見せない対応をして、それに小糸がどう感じ入るかという、『エルフと私と月島』な基本線を、しっかり守っている話だ。
 エルフのいる日々を過ごすことで主人公が何を感じ、彼女の目に映る下町がどんな景色なのか。
 ヨルダはそこに新たな色を見出すための触媒であり、主役たちの当て馬……には終わらない、独自の魅力と関係性をしっかり持っている。
 そういう豊かな広がりが、騒々しくも楽しく暴れまわるAパートであった。
 可愛いし清々しいし、最高のアニメだな……。

 

 

 

画像は”江戸前エルフ”第4話より引用

 そしてBパートは待ってましたの看病回、日常同居モノはこれがなくっちゃぁな!(偏った嗜好の発露)
 何しろエルダは神様なので、普段はわがまま放題に小糸に強くも出るわけだが、身体が弱ってくると甘えが表に出るというか、関係性にヒネリが出てくる。
 看病という行為を通して、失われた母の面影を投影されていたエルダはかつての自分となり、小糸はもう会えないはずの母と出会い直す。
 それは彼女が時の流れに身を置く徒人で、エルダとは違う存在だからこそ掴み取れる、大事な成長だ。
 この実年齢が生み出す関係性の逆転が、最年少ながら一番しっかりしている小柚子と、おかゆ作ってたはずなのにカレーになってる、キメきれないお姉ちゃんとの間でも起こっているのが、多層的で良い。

 つーかブツクサ文句言い続けるテイで偽装かけてるけど、小糸はダラダラウザい普段のエルダも、風引いて弱って甘えてくるエルダも、どんなエルダも甘やかし過ぎ大好き過ぎなんだよなぁ……(最高)。
 生き神様には似つかわしくないだらしなさや弱さも、全部間近に受け止めて『あーはいはい』な距離感は、家族として過ごした十数年で既に完成されていて。
 普段表に出ている微かな摩擦熱は氷山の一角、その根本にはどっぷり分厚い”愛”がお互いを支えていて、変わりゆく日々に時折揺らぎつつも、大きく沈むこむことはない。
 同じ屋根の下で暮らし同じ釜のメシを食っていれば、いろんなことが起きる。
 ”病気”という不測の事態に慌てず、それもまた日常の一部として彼女たちらしく向き合っていく姿を、生き生きとスケッチしてくれることで、作品世界やキャラクターへの理解と愛情が深まっていく。
 こういう手応えのあるお話は、やっぱ好きだ。

 一生バブバブしてるヨルデ様とか、それを鷹揚に受け止める向日葵ちゃんとか、”看病”という行為が浮かび上がらせてくるそれぞれの愛しい弱さと強さを、たっぷり堪能できるエピソードといえる。
 何故か揚げ物を食べたくなるエルフの生態も明らかとなり、この奇妙な世界で永生者と人間がどう生きているか、ゆったり削り出してくれる回だった。
 ヨルデ様の寝室、あんなにワイワイ騒がしいおこちゃまなのに無茶苦茶シックなのが、良いギャップだよね……。

 

 というわけで、元気なちびっ子とクールな保護者を迎い入れつつ、作品の懐が深く広く描かれる回でした。
 エルダと小糸の穏やかで強いつながりを土台に、新たな要素を付け足しても作品の良さが濁らない……どころか、新たな風に背中を押されて豊かに羽ばたいていける。
 そういう物語の強さを、ゆったりと教えてくれるエピソードで、大変良かったです。
 次回も楽しみですね!