イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ひろがるスカイ!プリキュア:第21話『ひろがれ!知識の翼』感想

 夢が叶った後も、学びの翼はより広く大きい場所へと少年を誘う。
 良い子と悪い子の学習アニメ、ひろがるスカイ! プリキュア第21話である。
 かなりど直球に『学びとはなにか』を扱う教育的エピソードで、その硬い手触りが僕の好みにバッチリだった。
 衒いなく、堂々言うべきことを言うべき相手に強く押し出していくメッセージ性の強さは、児童向けアニメの強さであり必須項目かなー、と思う。
 人生の先達として自分の体験に足を置き、若人を優しく導くヨヨさんの存在感も大きくて、とても良い回だったと思う。

 

 つーわけでキャラクターシートに書き込んだ初期衝動が、変身と同時に叶ってしまったツバサくん(TRPG的物語理解)
 超常パワーで夢が形になったら、今まで勉強してきたことは無駄になるのか。
 そもそもなんで学んで何が生まれるのかという、これから義務教育課程に組み込まれるメインターゲット層に向けた、概念的ワクチン接種を行う回である。
 他の要素もそうだけど、今楽しくてウケる要素と同じくらい、いつか遠い日思い出して意味が分かってくる要素を、分からないなりに深く差し込もうと色々あがいてお話作る姿は、やっぱ良いなと思う。
 硬い言葉でお説教されても染み込まないものが、楽しいお話を通じて心にスルリと滑り込めるのは、フィクションが持つ大きな力だ。
 ツバサくんの可愛いお悩みにお話が向き合う中で、そういう道筋が自然整えられていくのは、大変良い。

 ツバサくんが賢く生真面目な青年なのは皆さんご存知のとおりだが、エルちゃんを見守りみんなで楽しく暮らす最高の今が、別に永遠に続かないことをこの段階で認識し、未来を思い悩むのは、とても大人びた姿勢だ。
 『空を飛ぶ』という夢が叶ってしまった今、自分を牽引する情熱が退いてしまった感覚、地道な学習が夢の実現の手助けしなかった手応えも、彼の中にあるのだろう。
 そのうえで、夢の先にどう進んでいくのか。
 人生の先輩に優しく諭されながら、実地で学んでいくのが今回の主軸になる。
 一見『飛ぶ』という行為に関係がない野菜づくりが教材なことで、ツバサくんが見いだせてない各学習領域の繋がりを感じ取り、航空力学やら気象学やら鳥類生態学やら、『飛ぶ』をテーマに横幅広く学んできた自分を、肯定する足場を作っていく。

 『飛ぶ』ことばかりにガムシャラになって、自分なり学んできたことが天気予報や風読みに役立ち、誰かを助け強さに変わる。
 そういう成果を掴み取れるのは、夢を叶えた後もツバサ君の中にまだ炎が残っていて、それに突き動かされて世界を知っていく歩みは、終わりはしないからだ。
 人生のゴールが見えてきているヨヨさんが、魔女として培ったハーブ生産の知識を活かして大規模菜園に新たに挑む姿は、そういう生きた学びを実地で教える。
 夢に手を届かせるために積み上げたものは、夢が叶った後も思わぬ発見や達成を連れてきて、それがまた新しい夢になっていく。
 そういうポジティブな未来図をツバサくんが今回描けたのは、彼を『飛ぶ』という結果だけに固執する、了見の狭い人間にしない描き方で凄く良かった。
 雨混じりの曇天に押し込められ、息苦しい戦いが決着する時眩い青空にたどり着くのも、知見が広がり世界が新たな姿を見せる物語と重なっていた。

 

 そんな手堅いメインプロットの裏で、『今日は主役じゃないしな~』とばかりドヤ顔でテキトーなことほざくハレワタール氏が、大変可愛かった。
 ソラちゃん自分にカメラ回ってない時、マジハイテンションなただの小動物になる瞬間があって、それが正義マニアの意外な人間味ともなっている。
 そういうトンチキ異世界人を、幸せそうに見守ってる虹ヶ丘氏も同時に見れて、温度高くないからこそ落ち着いた手触りで、二人の関係も見れるのだ。
 つくづく、ありがたい……。

 ひろプリ、結構大胆にエピソードの主役以外を省略してくる造りなんだけども、メインじゃないからこそ肩の力が抜けた表情を、サクッと切り取ってくるのも上手くて。
 手漉きの連中が、現在育ちの真っ最中なエルちゃんをあやすことにもなるので、俺にご褒美だしね……。
 ヨヨさんのマネッコしたり、お砂すくってご機嫌だったり、今週もエルちゃんは良く育っており大変良かった。
 今後も幸せでいて欲しいよホント……。

 

 そういうハッピーに横槍ぶっ込んでくるバッタ野郎だけど、次回隊長復帰の生贄にされて終わりそうな気配。
 カバトンが悪辣なのに憎みきれない存在感でもって、主役が目指すべき正義の合わせ鏡を頑張ってくれたのに対し、バッタモンダーは現状正直、こっちの気持ちが引っかかるところが少ない悪役だと思う。
 ここら辺、主役陣営がとりあえずの関係性とキャラ立ちを確立し、話がある程度落ち着いた段階で前に立った、悪役としてのタイミングの問題でもあろうなぁ……。
 カバトンはまだ何者でもなく、だからこそグラグラ煮立っていた物語をこねくり回す、結構特別なポジションにいたから目立ってたのだろう。

 次回悪落ちした隊長の鮮烈帰還を飾るオブジェになるべく、あえて感情移入少なめに運んできたのかなー、って感じもあるが、同時に”弱さ”に寄り添うフリを続けて、その実その真の姿に目を向けない停滞が、どっから来てるかは最後に知りたい。
 アンダーグ帝国が弱く無価値だと断じるものを、『そんなことない!』と反発し守ることで、このお話が描きたい善と強さが際立ってもくるわけで、アイツのサディズムと逆ギレ気質がどういう土から芽生えているかは、退場前に描いて欲しいポイントだ。
 バックボーンが暴かれても、彼の悪行が消えてなくなるわけではないけども、学べず変われない連中の浅ましさを彫り込むことで、今回ツバサくんが得た視野の広さも、より奥行きを増す……んじゃないかな?

 

 という感じの、教訓堂々ぶっ放す系エピソードでした。
 俺はこういう歯応え味わいにプリキュア見てる側面が強いので、見ていて大変満足できました。
 今後もこういうド直球なお話を、ためらわずぶん回してくれると大変ありがたい
 次回は幹部退場の節目になりそうですが、『ゼッテー悪落ちして戻ってくるよ……』と100万ニが予測してる隊長の書き方含め、どうなることやら楽しみですね!