イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アンデッドガール・マーダーファルス:第5話『倫敦の不死者』感想

 仏蘭西の殺鬼事件を解決した鳥籠使いが次に向かうは、怪人集う霧の倫敦。
 怪盗紳士に名探偵、八十日で世界を一周した鉄人まで躍り出る、ゴシックノベル大戦の様相を呈してきた、新章開始のアンデッドガール・マーダーファルス第5話である。
 19世紀末、啓蒙と退廃と入り交じるロンドンを舞台に元ネタあったりオリジナルだったり、いずれ劣らぬ曲者共がドワーフの作り出した人造ダイヤを巡り、飛んだり跳ねたり大騒ぎ……その前夜である。
 ハッタリの効いた絵でもって、ダイヤに惹かれた連中がぞろぞろ思惑抱えて顔出してくる様子は、大変にワクワクする。
 ”怪盗紳士ルパン”八十日間世界一周””最後の事件””女吸血鬼カーミラ””フランケンシュタイン”……綺羅星の如き怪奇小説からぞろぞろスーパースターが出てきて、一体何が始まるものか……。
 やっぱ”リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン”的シチュエーションは問答無用に心揺れるし、ここにこの物語の主役である鳥籠使い達、癖強すぎなロイズエージェントがどう居並んでくるか。
 大変ワクワクの、素晴らしい新章開幕となりました。

 

 

 

 

 

画像は”アンデッドガール・マーダーファルス”第5話より引用

 というわけで鳥籠使い達の新たな舞台は、霧のロンドン。
 そのファーストルックとして、貧民のガキがスモッグの下、紳士達の靴磨いて日銭を稼いでる姿をまず見せてくるのは、怪物たちがのたくる世界の泥をざぶざぶ進んでいく、このお話らしい選択だと思う。
 第1話、全てが始まったあの下世話な浅草と同じ空気が、奇人たちが巨大な博物館に集うこのエピソードにも満ちていて、人間社会の下流に集う業と欲が、この大げさな事件にもみっちりと詰まっている予感が、良く伝わる。
 怪盗紳士に名探偵、功なし名を上げた鉄人と、全ヨーロッパに名高い連中が書棚から勢ぞろいするお話ではあるが、そのハッタリに負けじとこのお話独特の剽軽で薄汚れた感じを維持してくれるようだ。
 ホームズ&ワトソンも美少年ナイズされることなく存分にオジサンだし、初手逮捕されてワッパつけてるし、名声を利して事件現場にヤードの場所で乗り付けるし、あんま超然とした感じのない、ヒネた知性の怪物風味を、たっぷりとまとわせている。
 ミキシンボイスもしっかりハマって、嫌味な視線でジロジロ鴉夜を睨んでくるこのお話のホームズは大変いい感じで、今後の推理合戦にも期待が持てる。

 伝説の名探偵と首だけの推理装置に相対するのは、フランスから来た怪盗と宿敵”M”。
 本格的な衝突は次回以降として、曲者共が雁首揃えて漂わせるにはたまらないものがある。
 爆発の瞬間を待ちながらチリチリ言ってる火薬庫の匂いというか、どでかい花火が打ち上がる直前の空気というか。
 ここに露骨に超人力高そうなロイズのGUNG-HO-GUNSが加わって、不穏な空気は最高潮だ。
 こんだけ癖の強い連中を動かすには、マクガフィンにもそれなり以上の格が求められるが、『人狼に滅ぼされしドワーフが作り出した、14世紀の人工ダイヤ』ってのは、怪物が実在する物語らしいお宝だった。
 宝石としては価値が低い人工ダイヤなのに、滅びた超技術種族が憎悪を込めて生み出したオーパーツってなると、伝奇力マシマシでメチャクチャ格が上がるの、世紀末ゴシックロマン特有の味わいだね。
 濃いキャラを自製したり借りてきたりするだけでなく、それが動くセッティングにも怪奇なハッタリを忘れずたっぷりまぶして見せてくれるのは、見たいもの届けてくれてる感じがあってとても嬉しい。
 今後勃発するだろうバトルの中でも、トンチキロジックで怪能力をビシバシ暴れさせて欲しい物だ。
 仏蘭西の血吸小僧は、半鬼のニヤケ笑いを消すには実力不足だったからなー……。

 とかコスってるけど、津軽と師匠が大物相手にも飄々と自分らしさを崩さず、戯けて食ってかかってるのはとても好きだ。
 何しろこの話は”シャーロック・ホームズの冒険”の外伝ではなく、”アンデッドガール・マーダーファルス”なのだから、笑えない笑劇の中心に立ってる首だけ探偵と半鬼とメイドには、堂々主役を張ってもらわないと困る。
 そのためにホームズやルパンという文化的アイコンを、下に扱ってオリキャラの地位上げるのもまた困りものだけど、まーいい塩梅で扱ってくれるんじゃないかな。
 まだ本格的な衝突は先だけど、小競り合いの顔見世段階で大概みんなひねくれたクセ見せてくれているので、舌鋒と暴力でバチバチやり合うとどういう化学反応が生まれるか、大変楽しみである。
 既に評判を確立した名作からキャラ借りてくる以上、ある種の二次創作的技量も試されることになるけど、どういういじり方してくんのかなー。
 ”鉄人”フォッグがかの旅で手に入れた最大の宝物、インド人の奥さんが全然顔見せないのとか気になってんだけども、これは追々捻ってくるネタなのか、それともあんま重要ではないのか……どうなるかねぇ。

 

 という感じの、ロンドン編開始を告げるエピソードでした。
 吸血鬼たちの暗い城とはまた違った、スモッグの濃い倫敦の空気がなかなかに心地よく、そこに数多の怪人ぞろぞろ揃い踏みとくれば、期待も高まるというもの。
 攻めつ守りつ狙いあうお宝もいい塩梅にハッタリが効いて、この魅力的な舞台建てに我らが鳥籠使いはどう立ち向かうのか。
 次回も大変楽しみです。