イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ひろがるスカイ!プリキュア:第31話『新たな脅威! エルちゃんを取り戻せ!』感想

 夏も終わった新展開だ!
 新たな幹部新たな脅威新たなプリキュア、九月頭の燃料注入、ひろプリ第31話である。

 遂に……来てしまった。
 いやまぁこんだけ物語リソース突っ込んでエルちゃん描いた上で、プリキュアにさせない選択肢は色んな意味でないわけで、既定路線だったのは間違いないし、喋るマスコットもいない中『弱いからこそ守られる、愛され育っていく私』をメイン視聴者層から投影されていただろう彼女が戦士になるのは、多分良いこと……なんだが。
 そこら辺の判断アタマで飲んだ上で、エルちゃんが一足飛びに育って戦場に出たのがなんだか寂しく哀しい気持ちである。
 『ガキが闘うんじゃねぇ!』言い出したら作品全体の否定なわけで、弱いからこそ可愛い存在としてエルちゃんを愛で続けたかった気持ちがあるから、キュアマジェスティの誕生を丸呑みできていないのかもしれない。
 ひろプリがエルちゃんを中心に、子どもが育つこと、愛されることを描いてきた筆致が僕はとても好きで、彼女が育ってしまうと、そういうものがどっかに行ってしまう危機感があるのかもしれない。
 キュアマジェスティの誕生と、まだまだ赤ん坊のエルちゃんがどういう関係で、どういう比率で扱われていくかは、顔見せである今回だけでは測りきれない部分があるので、落ち着いて先行きを見届けたい所でもある。
 いやまー、エルちゃんのヨチヨチ人生絵巻をね、俺はもっともっと見てたいんだよ本当に。
 ちっちゃくて必死こいて前に進むから、それを周りが支えるから描けるもの今までいっぱい積み上げてきたし、今回もいい具合に思い出アルバムに追加されてたからさぁ~。

 

 さて前半、新幹部の圧倒的な実力を際立たせるようにも描かれた幸せな日常において、訪ねたエルちゃんは訪ねた写真館でプリキュアを演じ、笑顔で仲直りして楽しい日々が続く。
 どこにでも行ける魔法の馬車として、すっかりお話に馴染んだ若葉マークのハマーが初めてぶっ壊れるのは、スキアヘッドの遊びのない脅威が迫り、幸せな日々が簡単に壊れない状況へと話が進んだことを、上手く示していた。
 筋トレに興じすぎて大ボスに退場させられるという、わりかし前代未聞の仕打ちを受けたミノトン……あるいは暴力行使を通じてエゴの充足を目論んでいたカバトンやバッタモンダーと違って、スキアヘッドは(ソラちゃんが指摘してたように)闘争行為に感情を動かさず、最短距離で目的を果たす。
 それはアンダーグ帝国がその気になれば、効率的に目的を果たせた事実と繋がっていて、より冷たさと苛烈さを増した脅威を前に、狙われるエルちゃん自身が戦士となる必要も際立つ。
 スキアヘッドが非常に冷たく(宮本充の好演が光る)、最低限の動きで立ち回るのに対し、言葉にならない憤怒を総身に紛らわせ、積極的に殴りかかるプリキュアたちが印象的だった。
 こんだけ感情むき出しにひろプリが戦いに挑むの、あんま記憶にないので、そういう意味でも『こっから新展開なんだな……』と納得する作りではあった。
 憤怒と憎悪に満ちた異空間での戦いから戻って、エルちゃんと再開したプリキュアたちが一人、また一人と変身を解いて、守れなかった申し訳無さと守ってくれた愛しさに抱き合う場面が、そういう特別な緊張感を上手くほぐしてくれる回でもあった。
 プリキュア……特にましろさんがああいう張り詰めた表情をしているのを見るのは辛いので、戦士・キュアプリズムではなくただの虹ヶ丘ましろとして、包み隠さず泣ける場所に戻ってくれて、良かったと思う。

 

 ワープ能力をクレバーに使いこなし、エルちゃん拉致をサクッと完遂したスキアヘッド&カイゼリン・アンダーグであったけども、その思惑を超えてキュアマジェスティが誕生する。
 不動のまま四人を圧倒するスキアヘッドの強さが、雷光を自在に操るキュアマジェスティ規格外の強さを上手く際立たせ、なかなかいい具合に新キュアを印象付けていた。
 まぁお目見え興行に登場補正載って無双ぶっこむのは、恒例行事といえばそうなんだけども……。
 『仕事として感情やこだわりを交えず”悪”を完遂されると、あっという間に話が終わる』→『なのでその計算を狂わせるイレギュラーとして、運命の子自身が戦う力に目覚める』というロジックは、結構飲みやすい。
 まだまだ顔見せに過ぎないので、今後彼と彼の主がどういう理屈で動いて、何を重視してるのかが見えてくると、ようやく敵サイドの懐が見えてくる面白さと合わせて、なかなかいい感じではないか。
 やっぱ折り返しすぎたこのタイミングまで、敵サイド彫り込まない作風は異質だよなー……。

 そういう意味では、今回サクッと退場させられたミノトンもまだまだダシが出る素材だろう。
 スキアヘッドが体現した冷たい合理主義と、真っ向対立するこだわりと回り道。
 仲間たちが涙に暮れる中、ただひとり広い場所を見て強くなる意味を探っていたソラちゃんと、武人気質で対比する余地も残っているわけで、いい塩梅の花道を用意してあげて欲しい感じだ。
 夏のバラエティ展開と活動時期が重なった結果、ヤツがどういう原理で動いていて、どういう物語内役割を背負っているのか、いまいち掘りきれてない印象は濃い。
 次回予告では元気に暴れていたので、ミノトンやバッタモンダーがそうしたように、背景掘り下げられない中、窮屈ながら結構的確に自分たちの存在意義を、悪の華を咲かせて欲しいもんだ。

 

 そういやミノトンがサクッと市内のジムで筋トレしてて珍妙愉快だったが、街の人がプリキュアをどう受け止めているのか、家の外に出て描かれたのも新しいな、と感じた。
 学校にしろ街にしろ、エルちゃんを中核に据えた疑似家族の外側に出ないことが、ここまでひろプリが選んだ自分なりの範疇であったと思う。
 モニタの外側に広がる現実と、奇妙で楽しいリンクを発生させながら、不思議な憧れとして街の人に受け入れられているプリキュアの現在地として、きせかえ写真館は結構いい場所だったかな、と思う。
 虹ヶ丘邸の小さく緊密な繋がりを描きつつ、その外側へ器用にカメラを広げる”巧さ”に欠けてる部分もあったひろプリだが、エルちゃんがキュアマジェスティになって、ある意味手がかからなくなることで少しは、カメラを横に振っていくのだろうか?
 それともこの風通しは新幹部&新プリキュアお披露目の御祝儀で、まだまだ狭くて濃い……だから強いものを書いていくのだろうか?

 正しさでいえば家の外とも触れ合うべきなんだろうけども、とにかく狭く強く進めてきたひろプリの語り口が僕は結構好きで、それは家の引力にプリキュアが囚われつつ、閉じてはいなかったからじゃないかな、と思う。
 今回さらりと、ましろさんが出会った絵本作家という夢がとても小さく、着実に進んでいることが描かれたわけだが、そんな感じでそれぞれ個性と夢を持ち、助け合いながら進んでいる様子は、しっかり積み上がっている。
 二足歩行すら覚束なかった頃から、自分の足で立って泣いてるましろちゃんを抱きしめられる所まで来たエルちゃんも、キュアマジェスティとなることでより広い場所へ、自分を羽ばたかせていく事だろう。
 それが大人のかたちを伴う必要があることなのかは、今後の描かれ方の中で飲み込んだり、『飲めね~~~ッ!』と咆えたりする所……なんだろうね。
(家族向けの自作ですら、ヒーローガールと出会う存在として自分を描いているの、ましろさんの脳髄にどんだけ深くソラ・ハレワタールがぶっ刺さっているのか見えて、めちゃくちゃ面白かった。
 ああいう愛され救済願望をにじませておいて、闇に沈みかけたスカイの手を真っ先に引いて廃墟に立ち上がるのがプリズムなの、面白い間柄だなぁと思う)

 

 というわけで、新プリキュア堂々の爆誕でした。
 気品と力強さを兼ね備えたキュアマジェスティの威容が、印象的になるよう新幹部の強さ、迫力のバトルを描き、それと繋がる幸せな日常も良い手触りだったの、大変良かったです。
 新たな展開の号砲としては、大変いい感じにブチ上げれたと思うので、これを受けての二の矢三の矢をどうぶっ放し、的確に的に当てるかが大事かなと思います。
 次回も楽しみですね!