イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ライザのアトリエ 〜常闇の女王と秘密の隠れ家〜:第12話『変わりゆく日々』感想

 龍を倒しても、私たちの冒険は続く。
 ライザアニメ、遂に最終回である。
 最後まで自分たちが選んだペースとサイズ感をはみ出すことなく、むしろ全話数で一番『放課後の冒険』感が強いまであるフィナーレとなった。
 サブタイトルにある”常闇の女王”がその影すら見えることなく、いかにもデケー裏設定に繋がりそうな謎モンスターは優秀な師匠たちがぶっ倒して終わっていくわけだが、まー最終話だけ急にデケー話しされても困るもんな……。
 原案となったゲームがどういう速度と大きさで、田舎の島の物語を展開していったかをアニメしか見ていない僕は知ることがないので、にわかの的はずれな意見かもしれないけども。
 子どもたちが故郷の大地に両足付けて、一歩ずつ自分だけの未来へと進んでいくこのお話の足取りと語り口、とても好きです。
 なのでそれを信じやり切って終わってくれるのは、個人的にはありがたい。

 

 冒険物語としてのピークは先週の龍殺しにあって、今回は朝起きて夕方帰ってくるまで、バレンツさんが『子どもの遊び』と見過ごしてくれるような……でも当人たちにとってはとても大事な無駄足を、皆で必死に進んでいく。
 レントくんの剣が唸ることも、クラウディアの弓がひらめくこともなく、古代文明の名残を分割されたプレートを探し回り、今まで関わった人たちと触れ合いながら、お金にはならない子どもたちの戯れだ。
 前回突っついてたボオスくんとのわだかまりを解消して終わるかな、とも思っていたけども、複雑な関係性は未解決のまま残って、元気なガキ大将が率いる四人組はちょっと島の人に認められ、あるいはその暮らしや思い出を助けた名残を、旅の中で感じていく。
 ちゃんちゃんばらばらド派手な見せ場があったほうが、フツーの話作りとしては収まりがいいんだけろうけど、そういうわかり易さに頼ってこなかった物語なのだから、徒歩で行ける距離を、自分の目と育った知恵と確かな勇気で進んでいく冒険が、最後に似合いだと思う。

 このコンパクトでハンディな手応えは、世界と自分がちいさく狭い年頃……十代初頭のほうがやっぱしっくり来る感じはある。
 いつの間にかあんま気にならなくなったけども、年相応(以上)の発育を果たしたムチムチな身体で、画面向こう自分たちの青春を窃視している観客にサービスを振りまくにしては、ライザたちは未熟で無邪気で眩すぎる気がする。
 こういうミスマッチを抱えて、深夜アニメには珍しい呼吸でもって一夏の冒険を描くのならば、アトリエシリーズという看板、ゲームという原作抜きでやったほうがノイズ少なかったかもな、と。
 しかしまぁ、そういう諸条件がなければこのアニメは放送されていないのだろうし、全部が台無しになるような違和感でもないので、好みの素朴な味付けで押し流すように最終話まで見届けてしまった。
 優しい大人たちの『随分大した連中になったなぁ……』という目線とか、やっぱ18歳に向けるものではない感じもあるけど、作動原理の良くわかんねぇ錬金術と同じように『まぁそういうもんかッ!』で飲み込んでしまった。
 それは僕個人が創作に向き合う時、心がけているスタンスの結果であろうし、この多分相当ヘンテコなアニメが歪さよりも強く持っている、独自の面白さの助けかなとも思う。

 

 この小さな島を出ることも、地下に封じられているのだろう太古の因縁を紐解くこともなく、自分たちなり選び取った物語を思い返しながら、ライザの旅は骨折り損で終わる。
 手に入ったのはもはや島に当たり前にあるクーケンフルーツの種であり、そこから少女は『お家が一番』という、古ぼけたスタンダードな答えを導き出す。
 ベタと言えばベタで、この話らしいといえばらしいエンドマークだと思う。
 僕はとにかく代わり映えしない日常に飽き果てていたライザが、島と島にいる自分の今を冒険の中で見つめ直して、新しくも懐かしい意味合いを見つけていくのが好きだった。
 思い切って新たな景色へ飛び出して、鮮烈に描かれる出会いや価値にも、もちろん大きな意味があるだろう。
 ド派手なバトルの中で、新たな力に目覚めて切り開いていく運命には、大きな興奮が宿るだろう。
 でもそういうモノに飛びつかないからこそ、じっくりと描ける物語が確かにあるのだと、12話で終わらなかったライザの物語は、ちゃんと書き切れたように思った。

 すべての要素が使い切られ、あらゆる因縁が収まる所に収まる大団円ではないけども……というか、親世代の新たな感情がライザパパとレントパパで急に炸裂とかしとったけども。
 ちいさく、しかし確かに変わった日々の中で、まだまだ幼く未熟なまま自分たちの可能性を追いかけていく足取りには、このお話にしかない土の匂いがした。
 それが好きで見てたから、最後までその芳香を漂わせてくれるのは、僕にはありがたい。
 男女混淆パーティーでありながら、恋の気配すらなく無邪気に清潔に冒険しまくっていた物語が、話を閉じるこのタイミングでもそういう所に触らないのは、徹底しているなと思う。
 幼く瑞々しい季節から、一歩ずつ巣立とうとしている子ども達の心を、絆をゆっくり追いかけたからこそ、描ける微細な変化。
 それを受け止め、同じく少しずつ変化しながら穏やかな日々を繰り返す、故郷の景色。
 テザービジュアルから想起したものとは全然違ったが、良いもの見れたなと思った。

 

 というわけで、ライザアニメも最終回を迎えた。
 いつ加速するのかさっぱり読めないまま、最後まで独自のスローペースを貫いた作風には、賛否あるかなと思う。
 幾度も書いてきたように、ゲームというよりも児童文学の味を色濃く宿すこのアニメが僕は好きで、最後まで選んだ筆致に誇りを持ってやりきったこと含め、墨痕豊かに”賛”を書く視聴者だ。
 錬金術をイマジネーションを形にする方法、世界と自分を知っていく手立てとしてファンタジックに扱う手付きは、実はむしろ霊的黄金の練成というその本分に近い描き方だったのかなと、感じたりもする。
 同時に明らかに豊かな鉱脈として用意されている、古代文明との本腰入れた向き合い方とか、各キャラクターの人格的完成、他キャラクターとの関係性の決着は、未決のまま置き去りにされている。
 それを『豊かな伸びしろを残した』といってしまうと、あまりにこのアニメが好きな人の感想になってしまうけども、そういうアバタもエクボを自分に許してしまう程度には、このアニメとは水があった。

 全然続きがやれる余地が残っている……というか、この穏やかな語り口を維持したままぜひ続編やってほしい気持ちだけども、先のことは解らない。
 冒険も成長も止まることなく続いていくこの終わり方には、何かを投げ捨てた中途半端さよりも、自分たちが選んだ語り口をやり切ってくれたありがたさを感じている。
 だから、お疲れ様とありがとうをちゃんと言いたい。

 楽しく、好きになれるアニメでした。
 面白かったです、ありがとう!