イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ひろがるスカイ!プリキュア:第39話『大魔女ヨヨとハロウィンパーティー!』感想

 プリキュアの季節イベントと言ったら、もちろんコレですハロウィーン
 不気味でキュートな秋のお祭りに、虹ヶ丘邸の住人と地域社会の関係を問う、ひろプリ第39話である。

 エルちゃんを無事マジェスティに育て上げ、彼女中心の物語構成から自由になった後半戦のひろプリは、今まで触れなかった部分に意識してアプローチしている感じがある。
 ソラシド市はおろか学校にすら舞台が広がりにくかったお話が、ハロウィンというイベントに腰を落ち着け、可愛いお客さんをホームに向かい入れるエピソードを展開していくのは、今だからこそ出来る話だなぁ、って感じがある。
 敵さんの事情含めて、”ひろがる”プリキュアのわりには狭く集中した物語を展開してきたお話が、フィナーレが見えているこのタイミングで色々手をを出すのは、人によって評価は様々だろう。
 僕は何かを描くのに遅すぎるってことはないし、書かないより書いたほうが断然いいと思うので、今回プリキュアと地域社会の関係が見えたのはとても良かったと思う。

 

 生っぽいヤバさとイヤさで悪事を働く、キュアパンプキンことバッタモンダーが表に出るまで、今回は妙にぷにぷにほわほわ柔らかい感じのタッチでもって、絵も話も進んでいく。
 このほわっとした手触りが、名もなき園児たちの小さな冒険を追いかける展開とマッチして、凄く可愛くてよかった。
 一般人だけが可愛く描かれるのではなく、地球の見知らぬ風習に瞳を輝かせるソラ・ハレワタール氏の頑是ない感じが強調されていて、大変良かった。
 あげはさんが幼稚園の先生やってることで、普段プリキュアが取り扱うよりもう少し幼い(≒メインターゲット層にダイレクトに近い)年の子が良く出てきて、幼い無邪気さが作品を彩ってくれるのは、ひろプリの好きなところだったりする。
 大魔女の噂に怯えつつ、勇気を出して来訪した可愛いゲストを精一杯出迎える虹ヶ丘邸の面々も凄く良かったし、ここまであんま外部に門戸を開かなかったあの家が、祝祭の中で地域の一分になっているのが、なんだか嬉しかった。
 こういうしみじみ落ち着いた良さは、ある意味”定形”がある季節イベントだからこそ生まれてる感じもあったね。

 約10ヶ月、そのカッコ良さも抜けたところも色々見てきたソラちゃんの弾むような幼い元気を、菩薩のような微笑みで全部包み込んで隣り合っている虹ヶ丘ましろさんも、相当に”仕上がった”感じがして良かった。
 地に足付いた目標に向けて、地道に努力を重ねる着実さまで身につけて、今の虹ヶ丘ましろは慈愛と強さを兼ね備えた無敵の存在であるけども、そういう人になれたのはやっぱり、ソラ・ハレワタールという女の子と出会えたから。
 彼女を窓にして広がった世界、花開いた生来の資質がましろさんは大好きで、それを届けてくれたソラちゃんに格別の感謝と愛情を持っているのだと、ハロウィンにウキウキなヒーローガールに微笑み、一緒に楽しむ姿から良く解った。
 この”仕上がった”感じは彼女が真っ白なところから、自分をどう染めていくか選び取って来たキャラだからこそで、登場時点である程度ヒーロー色が眩かったソラちゃんとは対照的だ。
 そんなふたりが、ふたりだからこそどういう結びつきで今隣り合っているのか。
 じわりと暖かな喜びが染みる、10ヶ月目の手応えが嬉しい。

 

 このホッコリいい感じの手応えを、ぶち壊しにするリアルなヤバ感で暴れ倒すバッタモンダー。
 アンダーグ帝国からは離れたものも、浄化ビーム浴びて綺麗になったわけでも、敗北の中で己を鑑み改めたわけでもないので、ド下らない流言飛語で自分をビビらした相手を貶めようとする、性根の腐り方が治ってない。
 幼稚園児にすら憐れまれる(ていうか、あの園児たちのモラルが成熟しすぎてる感じでもあるけど)惨めさに腹を立てて、なお変われないどーしょうもなさは、卑近な悪の書き方としては存外嫌いでなかったりする。
 ソラシド市は理性溢れる立派な街なので、プリキュアの評判を汚す策略に踊らされることはなく、自発的に偽物を駆り立てる浄化作用すらある。
 ここらへんは色々生っぽい問題を抱え、そこにプリキュアが関わることで何かが変わっていくという、手数のかかる物語展開を今更やるタイミングでもない……という話でもあろうけど。
 とまれ、街の人達がプリキュアを信じて疑わないのは、ここまで地道にクズどもの暴力行為を防ぎ、人命救助頑張ってきたヒーローが報われる感じの描写で、なかなか良かった。

 もはや毎度お馴染み、感情なき暴力装置・スキアアヘッドの乱入がなければ、バッタモンダーはアンダーグエナジーを使って、破壊を撒き散らしていたのだろうか?
 バイトに勤しみ社会に馴染んでいるように見えて、国一つ脅迫し人を覚めぬ眠りに落としてた時代からが、そこまで変わってもいないな、と感じた。
 だからこそ何か決定的に、見えないなにかに怯え続け、そんな弱い自分を塗りつぶすように嘘と暴力に身を寄せるこのクソカスバッタ野郎と、向き合ってあげる必要はあると思う。
 今回もバッタモンダーは怯えながら目覚め、嘘で憂さを晴らそうとして果たせず、無垢なる子どもから手渡された真心を握り潰して、どうにも実りのない場所へと自分を追いやっていった。
 そのどうにもしょーもない、延々同じ場所で足踏みし続けている救えなさは、虹ヶ丘邸に集う善き人では描けない生な手応えを、確かに宿しているように感じる。
 なのでスケジュール的にはキツキツだろうけど、終わる前にどっかで決着付けるエピは欲しいのよね。

 

 というわけで、祝祭の活気と落ち着いた秋の気配、両方を感じるエピソードでした。
 ソラシド市にとって、家の外の人たちにとってプリキュアたちが集う場所がどう扱われているのか、話の幕が下りる前に一回書けたのは、とても良かったと思います。
 虹ヶ丘ましろが今、どういう視線でソラ・ハレワタールを見ているのかも、”答え”出してくれたしな……。

 そして次回は霜月の花嫁、まさかまさかのエルちゃんブライダル回。
 初のメイン男性プリキュアであるツバサくんを、どう使って何を描くか。
 ひろプリらしい一幕が見れると、嬉しい回になると思います。
 次回も楽しみですね!