イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブルバスター:第9話『進む合併計画!明らかになる塩田の策略と、巨獣発生の原因…どうする波止!?』感想

 世知辛い世の中を生き延びるためなら、巻かれろ巻かれろ長いモノ!
 塩田本社の長い手が大スキャンダルを隠蔽しようとする中、中小下請けの選べる道はどこにあるのか、いつにもまして生臭いブルバスター第9話である。

 武藤さんの首は飛ぶわ一大不祥事が明らかになるわ、どんっどん会社の空気が悪くなる中会社と個人の舵取り、一体どうすんの! という回になった。
 バイオSFテイストをいい感じに取り込んだ巨獣発生のメカニズムはなかなかワクワクするもんだったが、それに伴う塩田の対応は企業の論理全開の超絶隠蔽絵巻で、『私企業に災害対応任すのやっぱヤベーなッ!』という、サイバーパンクな感想が湧き上がってくる。
 社長のしょぼくれた過去に関わってるだけだと思ってた塩水プラントが、こういう形でクリーチャーホラーに関わってくるのは面白い伏線の使い方で、しかし事態は原因究明すれば終わる段階ではなくなってしまっていて、さてはて……という感じ。
 遺伝子操作バクテリアが、実験室より複雑度の高い現実世界で思わぬ挙動をして制御不能の大惨事発生……というのが事の真相だったが、波止の人間札束と内規で抱き込んで黙らせて、このまま社会的責任を果たさぬまま逃げ切るのが塩田の基本戦術になるようだ。
 猪俣さんが渚ちゃんにぶっ込んでいた、個人レベルのハラスメントを遥かに超えるスケールのコンプライアンス違反がもりもり湧いて出てきているが、このヤバ体質企業に飲み込まれて新世紀を生きていくか、古くて新しい”筋”通して波止独自の道を進むか、大きな岐路に立ってる感じ。
 泥臭い中小企業の意地と根性でどうにかするより、時代の潮流に乗っかって適正な査察入れる方向でギャフンと言わせるほうがスッキリハマる感じはするので、クラウドファウンディングの伏線がいい形で生かされると収まりいい……かな?
 塩田本家のイヤらしい寝技力、どんだけ振りちぎって社会正義を為せるかって話にもなってくるわけだが、いかにも古臭い日本企業だった波止が現代的内部告発の先端に立ちそうなの、個人レベルで収まってた世代闘争が、塩田VS波止に拡大されてステージ変えていく感じもある。
 災害復旧モノと思っていたら、巨獣発生のメカニズムを暴いたことで『公害と補償』という古くて新しい問題に正面対峙することになり、さー現場の人間としては何選ぶか……次回の決断は見ものだ。

 

 その前段階として、波止の連中はてんでバラバラ烏合の衆。
 登場以来軸がぶれてないアル美ちゃんが一番安心できるとして、浮きたいんだか沈む腹固めてんだかはっきりしない社長とか、説明少なさ過ぎて誤解しかされない鉛くんとか、産業ロボを自分のおもちゃと勘違いし続けている沖野くんとか、まー相変わらず問題だらけだ。
 社長が元々は外様というか、塩水プラント事業でしくじって島流しにあった元エリートだってのが、塩田が波止巻き取ろうとしてるこの局面で、いい塩梅に効いてきた。
 離婚調停中の家族にも未練たらたら、物分り良く本社の意向を飲み込むクズカスに落ちればワンチャン栄光怪童への復帰もあるかも! という、大変生々しい悩みを抱えて、しかし”いい人”であることもやめれない半端さがメチャクチャイライラして、大変良かった。
 この期に呼んで約款の話しかしねー片岡さんは……逆に”会社員”としては納得行く立ち居振る舞いであんまキライじゃないんだよな……倫理とコンプライアンスを置き去りにすれば、道理ではあるし。
 このお話が生っぽい企業模様を書いてるのは、銭稼がなきゃ話にならないけど銭以上のなにかがあるはずの”お仕事”を、フィクションとして独自の解像度で削り出していくため……だと思う。
 なので生っぽいところに足を取られてるオッサンたちが、スパッとあるべき理想のために現実から飛び出す瞬間のカタルシスは、大事だし面白いものになると感じている。
 次回以降、そこら辺スカッと書いてくれると嬉しい感じ。

 んでずーっとギスギスガツガツしてる新入り二人だが……やっぱ沖野くんは凄いなッ!
 産業機械でしかない(からこそ、モニターの中のロボと違って色々善いことが出来る)ブルバスター達を、自分が夢見たまんまのヒロイズム実現装置としてガッチリ自己像に癒着させて、『僕たちのもの』にしている姿は本当に凄い。
 設計者としてそこまで思い入れるのはなかなか出来ないことだと思うが、明らか適正距離を見失って過剰な埋没に陥っているので、どっかでもう1発デカい横なぐりキメた方がいいと思う。
 クラいロボオタ青春時代にネジ曲がったのか、自我境界線の引き方が沖野くん何しろ極端なので、ヤバさとしては鉛くんより全然上だと俺は感じるね……一度帰属すべき場所として認めた、波止への過剰な”僕ら”感とかね……。

 沖野くんの過剰な愛情が『新兵装開発!』とか『大ピンチ打破!』とか、わかりやすい活躍に繋がった描写が現状ないので、ヤバい若造のヤバい執着(一回キツめのツッコミ入れられている)に思えるのは……どーなんだろうか?
 企業モノとしての生っぽい展開に重点を置いて、ロボモノとしてブルバスターが作中にどういう意味合いを持っているのか、あんま鮮明に打ち出せてない感じもあるけど、それが”ブルバスターのパイロット”であること、”僕たちのブルバスター”に過剰に体重預けている沖野くんが、自分にピンとこない原因かもしれん。
 ここら辺、今後一発説得力あるの欲しい感じ。

 

 鉛くんの怪しさ満点スパイムーブは……まぁミスリードだと思う。
 あの子悪気や計算で立ち回れるほど頭良くないので、言われた通り現状の材料から推測できる通り、筋が通った行動を徹底している(そしてその背景を一切説明しない)だけである。
 優秀はガチ優秀なので状況事態はあっという間に進むが、その優秀さを人間ってパーツが飲み込む前に次に進んじゃうので、歩調が合わずに孤独になって行ってしまう……哀しきロボ人間よ。
 そんなロボ人間に苛立つばかりで哀れみに先回りしねぇのが沖野くんだが、ヒーロー願望の肥大した青臭い若造が、理解ってもらうつもりもない天才ロボとちったぁ通じ合う瞬間は来るのか。
 贔屓目抜きでやってること見ると、まぁまぁ妥当なことしかしてないと思うんだけども、坊主憎けりゃ袈裟まで憎い状態だからなぁ沖野くん……設計者としての知能と、人間として周囲を見渡す視界が繋がってねー!
 逆にいうと、1クールかけてそこら辺が繋がるまでの話……とも言えるか。
 やっぱ深夜アニメのペースやリズムとは、ちょっと違った作りだわな。

 アル美ちゃんが巨獣発生の秘密を暴露したことで、『一番ちゃんとしてないのは塩田』ってのが可視化された。
 鉛くんのロジック最優先主義って、説明ないだけで狭いスケールからはみ出す視野を持ってるってのはここまで描かれたことなんで、論理的帰結として塩田に殴りかかるのは十分ある線だと思っている。
 『他人から極めて観察しにくく、当人がそれを表明する意味を全く見出していないだけで、感情も倫理もある』っていう鉛ロボの描き方は結構好きなので、現状沖野くんから見えている無感情な裏切り者で終わらせず、いい塩梅の一捻りがここにも欲しいか。
 ……鉛くんという、スペック鬼高だけど人間社会という環境での動き方が判ってないロボットを、周囲の人(特に沖野くん)が把握し適切にパイロットするまでの物語としてみると、これも”ロボットモノ”になるのか?
 長くて重くて古臭い会社の理論に対抗していくだろう次回以降、鉛くんが自分の善さをどう周囲に認められ、制御されていくかも注目したい。

 

 というわけで、巨獣の真実判ってもな~んも解決しない、むしろ重苦しい空気が事務室に張り詰める回でした。
 蓋を開けてみれば一大バイオハザードだったわけだが、塩田は現場まるごと札束で殴ってなかったことにする気満々。
 野放図な開発最優先時代もとうに終わりを告げた昨今、企業の論理でどんだけ押し流せるものか。
 それに抗して為すべきを為す人たちを、どういう角度から書いていくのか。
 ブルバスター終盤戦、楽しみですね!