イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

葬送のフリーレン:第13話『同族嫌悪』感想

 天国に向かう旅の途中、腐りかけた夢を拾った。
 バトルもいい話もなし、辺境でまったりととある人生に出会うフリーレン一行を描く、葬送アニメ第13話である。

 この作品にいい所はたくさんあるが、肩の力が抜けたぼんやりボケっぱな独自のユーモアはやはり良く、今回はそれをたっぷり味わう事ができた。
 龍の一撃をものともしないシュタルクが脳髄蕩かし毒蛇で死にかけたり、クソボケエルフ渾身の色仕掛け……へのトボけたリアクションだったり、なんかヘンテコなことが血圧低く当たり前に行われ、作中人物たちも特に気にかけた様子もなく、スルーするでもなく当たり前に受け流して、トントンと状況が進展する。
 この呼吸と歯ざわりがやはりいい感じで、泥まみれの出会いから始まる落ち着いたエピソードに、いい具合でハマっていたと思う。

 フリーレンがヒンメルの死という劇的な切っ掛けでもって、自分がどんな旅をしそこにどんな意味があったのか思い出したのに対し、アイゼンは長い旅がじんわり染み込むように、生きることの下らなさを寿ぐようになった。
 決定的に何かを変えてしまう大きな変化も、どれがと断言できないけども一個一個が愛しく下らない生活の欠片も、時の流れの中で堆積しその行く末を変えていく。
 卓越した才能を持ちつつも田舎に埋もれ、夢も約束も忘れて終わっていきかねなかったザインが、四人目の旅の仲間として何かを見つけていくのか。
 道が別れていったとしても、下らない出会いと交流はお互いの心に、大事な何かを残すのか。
 自堕落な僧侶との日々はもう少し続くが、どんな風に転がっていくか楽しみになる、良いスケッチだった。

 

 稀代の魔法使いがど派手なバトルしたり、サラッとした顔で偉業を成し遂げることもなく、今回はごくごくありふれた人生の隣に偶然いきあって、自然とその道筋を変えていく感じのエピソードだった。
 ファンタジックでヒロイックなあの世界にも、ザインの出発未遂みたいな出来事は山盛り沢山あって、異能を日常に埋もれさせていく人たちが無数にいるのだろう。
 ともすればフリーレンもその一人になりかけたわけだが、物好きな勇者と出会い、j下らないお節介を手渡されることで、その名を歴史に刻まれることになった。
 なんてことない切っ掛けで世界も運命も変わっていくが、ヒンメルを見送った後のフリーレンはそういう小さな切っ掛けと積極的に関わり、他人の後悔が少なくなるよう、下らないお節介を積極的にバラまく立場になっている。
 エルフが身を置く永遠の中では、瞬きに過ぎない十年で大きく人は変わるし、その中に一生追いかけても届かない後悔も、深く突き刺さる。
 田舎の泥の中、諦めたフリで自分を騙していたザインへの働きかけは、みすぼらしい小市民を大英雄たる自分と同列に見る、公平な視線の賜物だろう。

 ヒンメルの思い出を辿ってヒンメルがしてくれたように生きる、弔いでありながら彼女自身の人生でもある旅において、フリーレンは凄く平等な対応を続けている。
 種族の違い、寿命の差、英雄としての力量や伝説に刻まれた偉業を隠すわけでも、消し去ろうとするわけでもなく、ただただそこにあるものとして、何でもないように振る舞う。
 そのシリアスで重たい感触が人生の真実だと、いうだけの権利が大英雄にはあると思うが、かつて共に旅したドワーフと同じように、あらゆる人が肩を並べて共有する”下らない”ことにこそ世界の真実があるのだと、物言わず告げるようにフリーレンは生きている。
 その驕らない姿勢がザインに向き合う時も崩れず、トボけた面白さと日常のテンポをずっと維持したまま、より善い方へ彼の旅が進んでいくよう手を添えている様子が、とても良い回だった。
 そんなフリーレンに文句たれつつ、かなり精神の深いところに師匠への愛がぶっ刺さってるフェルンもたっぷり堪能できて、そこも良かった。
 もぐもぐでけーパン食べたり、投げキッスにときめいたり、細かいところで可愛いアピール成功させてポイント荒稼ぎしているの、つくづくあざといキャラだなぁと思う(好き)

 

 かくして道を同じくすることになった天才僧侶、天国を目指す超人たちの旅路に果たしてついていけるのか。
 エルフだろうが人間だろうが、うだつの上がらない中年だろうが稀代の大英雄だろうが同じ……っていったって、相当ぶっ飛んだスペック当たり前に転がしてる旅路だからなぁ……。
 そこら辺のギャップでもまた一笑い起きそうな、次回も大変楽しみです。