イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ひろがるスカイ!プリキュア:第42話『迷いをこえて 未熟なヒーロー!』感想

 残りニヶ月のひろプリ、ソラ・ハレワタールの迷いを掘り下げ対話の足がかりを築く回……というには、なんかしっくりこない手応えのエピソードだった。
 前置き略して思っていることを書くと、ここまで42話今の彼女達が思い悩むことではないように感じたし、そこを”悩み”だってことにしたいのならもうちょい緊迫した……それこそ第22話・第23話で自分たちがやったようなテンションが必要だった気がする。
 ひろプリはアンダーグ帝国側の描写を徹底的に省略し、掘り下げないことを選び取って一年話を続けてきたように思う。
 結果そろそろゴールも見えるこのタイミングで話の中軸が未だ無く、敵さんの事情をソラちゃんが気にかけるのも、遅ればせながらそこを掘り下げてクライマックスの形を整えるため……だとは思う。
 そもそも対話不能な敵対存在として、ガッツリ刃を交えてきたわけではないので、今回ツバサくんの助言で見えた”対話”というアンサーは新鮮なものではないし、それが適切であるかを問いただし掘り下げるには、ぶっちゃけ遅きに失した感じもある。

 スキアヘッドがアクションノルマ発生装置として、淡々と暴力機械に徹してきたことで、ソラちゃんの働きかけにも体温低く自分たちのことを語らないし、ソラちゃんが差し出してきた対話主義がどう間違っているのか、照らす鏡役としても圧力が足らない感じになっている。
 ましろちゃんと絡めてバッタモンダーに積み重なったような、善悪の間にいるからこそのおかしみみたいなものも持たないまま、未熟未熟と主役を切り捨てるスキアヘッド’(と、彼が所属するアンダーグ帝国)のどこが”成熟”しているのか。
 ズレたコミュニケーションが終始展開する状況ではさっぱり見えてこず、否定されるべき悪にしてもノッペリした顔のまま、一話使ってしまった感じがあった。
 ここら辺は『そういうキャラ』としてスキアヘッドを、そのキャラクター性に踏み込むこと無く話数使ってきた結果なので、今回一話で一気に削り出すのは無理な話であり、ノッペリしてるのは必然かなとも思った。

 

 ソラちゃんは優しい人なので、自分を語らない敵対存在の事情を知りたくなるのは、キャラの必然だろう。
 しかしスキアヘッドの塩対応では対話が深まらず、自分ひとりで考えるのか仲間の助けを借りるのか、いまいちボンヤリしたままなし崩し的にバトルになってしまった展開もあって、タイトルにもある”未熟”の手応えは不鮮明なままだ。
 対話を拒み非情を貫く、スキアヘッドが信じる(らしい)”成熟”がどんなものなのか、今回より具体的でわかりやすい形で示されたのなら、ヒーローガールの新たな成長も描けたとは思う。
 しかしひろプリが選んだ敵軽視の作劇一つの必然として、悩みに悩み抜いて一つの答えを選び取る手応えも、苦境に手を差し伸べてもらって答えにたどり着くでもない流れの中で、主役のヒロイズムも敵のアンチヒロイズムも、顔が見えない回となった。
 ソラちゃん自身は幾つかいいエピソードをもらい、そこで手応えのある描写で彼女なりのヒロイズムを削り出されているからいいが、こっから最終盤に入るひろプリが、”敵”として選んだものの不鮮明さがクライマックスの仇になりそうな、不確かな感触のある回だった。

 ”ひろがる”をタイトルに関しつつ、エルちゃんを中核とした虹ヶ丘邸の狭い地域主義、家族主義に捕らわれて物語に広がりが少なかったことなど、ひろプリが選び得なかった物語、それが生み出す欠損は、少なからずあるだろう。
 ”敵”の不鮮明さ(それに照らされる味方の、ヒーローの不鮮明さ)もまたその一つになっていくのか、”対話”に彼女なりのヒロイズムを見出したソラちゃんの、けしてもう多くはない足取りでもって決まっていくだろう。
 僕は物語は幕を閉じるまで評価不能だと思っているので、『ひろプリ全体がどうだった』という話は二ヶ月後まで持ち越すけども、このエピソードはひどくぼんやりとした手付きで、ソラ・ハレワタールの”未熟”もスキアヘッドの”成熟”も十分には扱えていない回だったと思う。
 『敵とも話す』という大方針が(今更感は多々ありつつ)定まって、それでこの先の話数をどう描き使っていくか。
 そこ次第かなぁ、と思う。
 次回も楽しみである。