イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイドルマスター ミリオンライブ!:第9話『もうひとつのバトン』感想

 先行く星の眩しさに、瞳を焼かれて立ち止まっても、重なる光が明日を照らすなら……。
 ミリオンライブ! 最終章の開幕であり、THE IDOLM@STER一つのエピローグとなった765PRO ALLSTARS函館公演を描く、ミリアニ第9話である。

 6th、7thのデビューを思い切ってトバし、新信号機&かおつむの五人を軸に展開する(だろう)ミリアニ終盤戦。
 その最初に、既に自分たちの物語を終えなお前を向いているALLSTARSを描き、バトンを手渡すエピソードとなった。
 2011年の無印、2014年の”THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!”を経て、今少女たちがどこに居るのか……懐かしくも見るもののノスタルジーを超えて新たな部分もあり、不安に揺らぐ後輩に確かな導きを手渡す頼もしさもあり、感慨深いスタートとなった。
 話としては第6話に近い作りで、新旧信号機とかおつむ-伊織・雪穂・真がガッチリマッチアップして、それぞれの現状を照らしあって未来に進んでいくお話。
 白組が描く函館がたいそう美しい街になっていて、特に静香と千早が語らう海辺の夜闇、次第に白んでいく朝焼けの表現力は大変良かった。
 勝負どころで光の表現が凄く豊かで、眩しく輝く”アイドル”という存在がどんなモノなのか、説得力をもってヴィジュアルで押し込めるのは、このアニメのとても良いところだと思う。

 

 後半戦一発目になるこのお話を、こういう構成にしてきた以上、チーム8thの五人はかなりがっちり腰を下ろし、その人格を掘り下げられていくという、安心と期待がある。
 人数の多さをある面では割り切り、ある面では向き合ってきたお話が最終コーナーを回るにあたって、焦点を絞ってクライマックスをやる気があるのだと、話の組み立てでしっかり理解るのがまず良かった。
 それでもなお人数が多いので、乗り越えるべき課題となるリハでの挫折はスピーディーに済ませ、唯一余力を残している翼の才気であるとか、常時緊張しっぱなしな紬のギリギリ感であるとか、現実を前にチームそれぞれの顔がよく見える描き方だった。
 一見問題なく思える紬に、彼女を超える天才であり憧れでもある立ち止まらない天才”美希をぶち当てることで、『本気になれていない』という問題点を浮き彫りにしていくのは、あふぅあふぅアクビばっかりしてた彼女を知っていると、感心するかみ合わせだった。
 チームの仲間は翼に危機感を与える余力がないので、眼をキラキラさせて美希を追いかける可愛げなども描きつつ、同系統でレベルが違う(翼が超えるべき場所を既に突破してる)美希に指摘させたのは、プロの”アイドル”になった美希の現状を描く上でも、凄く良かったと思う。

 変化という意味では千早もまた凄く良くて、色々ありすぎてバキバキに張り詰めていたアニマス時代から、”写真”という趣味を手に入れ人間を見れるようになったある種の余裕が、静香を受け止め導く姿が眩しい。
 千早は自分が撮った写真を通じて、静香の悩みに向き合っていくわけだが、歌しかないと思い詰め自分を追い込んでいたあの頃に比べると、世界や他人を受け入れるチャンネルが増えたのだなと、思わされる描写だった。
 歌以外の要素からも色んなものが解るのだと、力むことなく既に学んでいるから千早は自分が撮った写真を、何より大事に思っている”アイドル”に相応しいか判断する素材にした。
 静香があの頃の千早を思わせる余裕の無さ、蒼い悲壮感を背負ってるキャラなだけに、同じく家庭に重荷を背負う先輩でもある千早が向き合ってくれたのは、めちゃくちゃ良かった。
 次回はソロでのマッチアップとなるようで、より素敵な千早の”今”を見ることも出来そうであり、そういう意味合いでも期待している。
 千早が後輩を気にかけたり、お姉さんぶったりしてるのも良いんだけど、現在進行系で余裕がない静香にとにかく優しいのが好き。(俺は最上静香に優しい人が好き)

 

 翼と静香が教え諭すような向き合い方をしてもらっていたのに対し、未来ちゃんは同系列な春香と肩を並べて、同じ景色を見ていることでやる気と目標を定める感じの語らいになっていた。
 元々未来ちゃんはアイドルとしての抜群の資質、安定感と可能性を強調されていたキャラだけに、作中”アイドル”の正解として描かれている春香さんと同じものを見ている描写には、かなりの納得がある。
 それがステージのキラキラ、それを浴びて輝く自分だけでなく、ファンの笑顔にまで広がっている様子もさり気なく、しっかり描かれていて、このお話がどんな”アイドル”を理想としているのか、終章始まるタイミングでもう一度確認できたのが良かった。
 細かい技術や実績は横において、人間の在り方として未来ちゃんがどっしり揺るがず構えて、作品が追いかけるべき正解からブレない存在なのはミリアニの良いところだと思うので、その”答え合わせ”を春香がしてくれたのは、”アイドル”天海春香がなんだかんだ好きな自分としては、ありがたく嬉しかった。

 実際に幕を開けたステージが凄く美しく表現されていて、春香さんが後輩に語っていた”アイドル”の良さ、この景色を瞳に焼き付けて未来へと進んでいく夢の輝きに、分厚い説得力があったのも良い。
 サイリウムで飾られた観客席を瞳に映し、練習では出来ないと凹んだ表現を本番では見事にやり遂げる少女たちの、眩しい輝き。
 その眩しさに魅入られてALL STARSは”アイドル”をやってきて、今後もやっていくのだし、デビューを控えた8thの心にも、先輩が見せてくれたあの美しい景色が、かけがえない導くとして焼き付いているだろう。
 そういう、色々厄介なこともある道のりをそれでも進んでいける特別な証はどんな色をしているのか、説得力ある形でちゃんと書けていたのは凄く良かった。
 無印の天使とミリオンの蝶、二つのロゴが重なっていく舞台演出と、春香と未来、二人のセンターが高く掲げた指先が光の中一つになっていく表現が、懐かしくも新しい”READY!”に乗って美しかった。

 あとアイドルたちの眩い交流を邪魔しない程度に、Pちゃんも彼女たちの未来をしっかり考え努力し、思い悩んでいる様子が描かれていたのも凄く良かった。
 縁の下の力持ちに徹しつつも、彼の助力がなければ”アイドル”が輝けないいいバランスで、ミリアニのPちゃんは彼自身の物語を走っているように思う。
 朝早くから待ちきれず練習に励む少女たちを、ちゃんと見つめて食事を用意している姿とか、同じ迷い道を(時に奈落に墜落とかしながら)走ったからこそ、”アイドル”と同じいい先輩になれたチーフPの頼もしさとか、大変良かったです。
 良く書けすぎていて、時折アイドルよりも鮮烈な”艶”出ている感じは……まぁエロいし良いか……バネPエッチすぎんだよなーミリアニ……。

 

 

 というわけで、デビューを控えたチーム8thの現在地を眩く照らし、一度物語を終えたALL STARSがどういう”アイドル”になったのかを、手応え満点で教えてくれるエピソードでした。
 ただ見守るだけで終わらない、現在進行系で”今”を走っている春香たちが見れたことと、その眩さが話の本道である未来たちの物語を凄く頼もしく、力強く照らしてくれていたのが、凄くいいバランスでした。
 今回千早先輩が見せた人間力を次回に引き継ぐ形で、静香に差し出されたリサイタルの誘いは、一体どんな明日を拓いていくのか。
 力の入った物語が展開されそうで、次回も大変楽しみです。