イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブルバスター:第10話『波止工業、崩壊の危機!噛み合わない想い…田島、苦渋の決断!』感想

 島民の願いを踏みにじる真実も、会社ごと飲み込んでしまえば消しされる。
 塩田の無法に屈して生き延びるか、最後の牙を矜持と突き立てるか。
 波止工業社員それぞれの決断が燃える、ブルバスター第10話である。
 バッキンバッキンに不祥事握りつぶすつもり満々の塩田に対し、波止工業の現場社員は対抗姿勢を維持。
 長いものには巻かれねぇぞと、Youtubeを用いた広報テロとも取れる独自行動に突っ走っていく。
 これを諫める立場にある社長もスッパリ身辺整理して、為すべきを為すべく腹を固めての全面戦争態勢。
 利に飲まれた大企業と中小ヒーロー企業、生き残るのはどっちだ! つう状況になった。
 現実だったら立ち止まる要素も多いんだろうけど、小市民の正義とヒロイズムを問う”お話”としてはここで立たない理由ないので、波止一丸となっての造反は大変スッキリした。
 イヤまぁ、ここからがメチャクチャ大変だとは思うし、その泥まみれの大変さにどんだけ切り込んでいくかで、作品が目指したリアリティと面白さのバランスも決まってくるとは思うが。
 さー終盤戦、どうまとめてくるかなぁ!

 

 沖野くんにド暗い陰気ボーイだった過去があり、だからこそヒロイズムに浮かれてやらかした経緯があったように、波止の社員にもそれぞれ歴史と後悔がある。
 パワハラ見て見ぬふりしてきた白金さんとか、長いものに巻かれた結果会社潰れちゃった片岡さんとか、生っぽい家庭事情背負って社長やってた田島さんとか、これまで見えにくかったそれぞれの地金が一気に分かったのは、ちっぽけな人間がそれでも退けない理由を飲み込む上で、とても良かったと思う。
 正しくない行いを正せなかった後悔があればこそ、こうなりたいという理想があり、しかしそうはさせてくれない現実があって、その上でどうするのか。
 塩田の公害隠蔽は社員全員にそれを厳しく問いただし、暴走気味に抗う覚悟を固めた連中は軒並み、大企業との倫理的ゲリラ戦へと踏み出していく。

 そこら辺を飲み込まんとする塩田の論理を、ギト付いた笑顔張り付かせて”道理”飲ませに来る鷲津が、大変イヤ~な感じで体現しているのが良い。
 鹿内さんや猪俣さんといった、分かりやすい感じでマウント取って気持ちよくなってくるタイプを前座に、あくまで朗らかな感じで手足を縛り、なんもかんも飲み込んで自分たちに都合よく生きていこうとする鷲津の、イヤやり手としての実在感……イヤだな~(褒め言葉)
 一見フランクな態度取りつつ、武藤さんや片岡さんに合併後の椅子を用意せず、”効率的”にリストラクションぶっこもうとしてる立ち回りとか、最悪にギトついてて最高よね。
 法務だの契約だの、大企業だからこそ繰り出せる大砲が今後波止工業にドッカンドッカン着弾してくると思うが、ネット世論にコンテンツ力で訴えかけるゲリラ戦でもって、どんだけ立ち向かえるのか。
 世知辛いヒーロー稼業のサバイバル物語が、今までとは違う画角に入ってきた感じがあり面白い。

 鉛くんの冷静な分析が射抜いた、他人からの輸血を頼みの経営姿勢。
 これを改め、独力でのミッション遂行が可能な現代的企業集団へと生まれ変わらんとする波止は、巨獣駆除生放送の影響力でもって、果たして生き延びられるのか。
 第3話で情報漏洩とその対応を既にやっておいて、ネットメディアの限界を書いた上でそこを突破口にしていくのは、ちょっと面白い視座だなと思う。
 あの時は上手いこと対応して焼け野原にしなかったわけだが、逆に言えば大企業の長い手でもって鎮火させられる、危うい武器だって話でもあって。
 しかし波止の懐事情とスケールで、他に塩田と戦い武器があるかと言われれば大変怪しく、さてどうなることか……次回を楽しく待ちたい。

 

 巨獣発生のカラクリが暴かれ買収も進み、ヤバ度が上がる中で鉛くんと沖野くんも、ようやく腹割った話をしていた。
 鉛くんは自分の内側にどういう熱があって、それがどういう理屈で動いているのか他人と共有する意味を、まーったく見いだせない厄介な天才。
 そこを先回りして内心を理解ってあげるほどの経験値も余裕も、若い沖野くんにはないわけで、衝突するのも道理だとは思う。
 しかし説明不足のロボット人間にも情と倫理があり、分かりにくいだけで同じ気持ちで戦っているのだと、本社に帰る直前にデータと一緒に伝えてられたことで、沖野くんの気持ちもちったぁ変わっていく。
 ソリの合わない同僚の、あんまりにも難しい生き様を自分と共鳴させて、未熟なヒーローにちょっとずつ芯が入っていく様子は見てて面白く、大胆な造反に踏み込んだ以上、まだまだ続いていくだろう。

 本社に戻った鉛くんが、彼なりの正義をどう突き立てていくかが、個人的には結構な見どころで。
 理屈一辺倒のようでいて理屈を超えたところに行動理念がある、分かりにくい己を周囲にまったく理解されないまま突っ走る彼を、誰かが理解ってあげると俺に嬉しい展開かな……って感じ。
 今回ようやく沖野くんに伝えたように、『現実ってこんなもん』って諦観で力をセーブして働くんじゃなくて、現実の難しさを見据えた上で自分に出来ること、やるべきことを冷静に判断して無言で動く人だからな、鉛くん。
 その思考と価値観を、他人と共有するつもりがカケラもない所がまー、厄介で可愛いところなんだが個人的には。
 鉛くんはどんな社会でも鼻つまみモノな生き方しとるが、その在り方は間違いなくヒロイックなので、ちっぽけな正義と意地に社員全員人生賭けた今、彼なりのヒロイズムがどういう形をとるかも、ちゃんと見届けたい。
 沖野くんがネットを通じたメディアゲリラ戦を思いついたのも、鉛くんからの分かりにくい遺品を受け取ったおかげなわけで、離れてなお繋がってるトンチキ人間の絆が元気になってくると、クライマックスもいい温度になってくるだろう。

 そういう意味では武藤のオヤジが若造たちの熱気に担ぎ出され、伊達や酔狂で免許持ってない反抗の切り札になったのは、なかなか良い展開だった。
 おんなじように腐りかけてたところを、武藤さんの発破で立ち上がり直した沖野くんが、恩を返すように酒瓶だらけの人生墓場に踏み込んでくるの、大変いい。
 人型重機にヒロイズムを宿したブルバスターは、大企業の仕掛けに飲み込まれ出撃不能だが、ガッツリ工作重機なオンボロ……それを唯一操縦可能なロートルを引っ張り出してきて挑むのも、波止らしい決戦というか。
 波止が選んだ戦いは(色々問題は含みつつ)正しい決断だと思うので、タメたストレスをぶっ飛ばしてブルバスターが活躍を果たし、ロボットものとして最後の炸裂を気持ちよくキメてくれると、更に気持ちよく見届けれる感じではある。
 『巨獣退治をコンテンツとして共有することで、継続可能な独立経営を維持する』って波止の新戦術に、ブルバスターの活躍は説得力を持たすピースになると思うので、そこらへんでも1発頼むわホント。

 

 つーわけで、色んな人がハラ決める回でした。
 生っぽい作風だけに、波止が選んだ戦い方が企業の長い手に叩き潰されないか、独特のハラハラ感がある最終決戦となりそうです。
 ここまで積み上げてきた泥臭い描線が、作品独自のクライマックスを支えてくれそうな手応えもあり、何が見れるか楽しみな終盤戦。
 次回も楽しみですね!