イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

時光代理人-LINK CLICK- II:第5話『最後の晩餐』感想ツイートまとめ

 時光代理人-LINK CLICK- Ⅱ 第5話見る。

 優しいママとお兄ちゃんに守られ、久々ほんわかタイムだッ! と思ってたのも一瞬、スーパー差別主義のDVモンスターが最悪の大暴れをぶちかまし、子ども達の運命や如何にッ!
 …てサスペンスのが、現実で警察署を訪れた謎の密告者のミステリと重なり合う、色んな意味で”時光”っぽいエピソード。
 小さな幸せがネイルハンマーでぶっ壊される瞬間の破壊力が本当に凄くて、それなりサイズのぬいぐるみを素手で引き裂く親父の膂力に驚いてる暇もなかった。
 マージで心に辛い描写を、ノーブレーキで踏み込むからこそ生まれる”時光”の破壊力、久々に味わったぜ…時光辛い。

 

 今回はほぼ写真の中の過去をなぞる回で、ピンク髪が特徴的な兄妹が現在の密告者とどう繋がるのか、事件の裏側を暴く前段階…といった塩梅。
 人格交換殺人鬼の引き起こした悲劇を思うと、簡単に謎の密告者には心を許しちゃいけないとは思うのだが、惨劇の当事者に心を重ねて過去を追体験できるトキの異能が、いい具合に心を被害者(であり、おそらく後に加害者になるモノ)に寄せさせる。
 心を預けたら辛いと解っているのに、人間として相手を見てしまう足場がガンガン固まっていく話運びは、トキが写真の中で感じている辛さと見てる視聴者がシンクロしていく強さもあって、大変パワフルな引力を持っていた。

 ママとの帰り道、お兄ちゃんとの手話レッスン、楽しい晩餐。
 街の片隅に確かにある小さな幸せをしっかり描けているからこそ、BGMが止まって急に親父がバチギレし、手前勝手な暴論とネイルハンマーぶん回しながらママの顔面腫れ上がらせる展開が、あってはいけないけど確かに起きてしまった事実の世知辛さを、より際立たせていく。
 トキが潜る過去のリアリティを、細やかな描写の積み重ねでしっかり生み出して、惨劇への没入感、見ているだけで何も出来ない異能者の無念と噛み合わせていくのは、『そういや”時光”のやり口こうだったな…』と思わされて、他では味わえないビリビリ感だ。
 正直勘弁してほしいが、止められない。

 

 お兄ちゃんがティエンシーちゃんに親身に色々教える様子が、トキに色々指図するヒカルと覆い焼きになっていて、もしかしたら不倶戴天の敵かもしれないピンク髪が、主人公と同じ絆で誰かと繋がった”人間”かもしれないと、ズクズク心を疼かせてきた。
 それが解ったところで過去の惨劇も、現在の悲劇もどうにもなりはしないのだけども、だからといって確かにそこにあった愛とか無惨とか…明暗同居する人間の存在証明を忘れてしまうのは、”時光”ではないだろう。
 どれだけ時が過ぎても写真に刻まれた、思いを頼りに過去に潜り、未来を変えぬまま届かなかった言葉を代弁する。
 そういう異能の使い方を、主役に課しているアニメだ。

 だから事実がどうであろうと、あの幸せな午後と最悪な晩餐を通じてトキと僕らが感じたものには真実なはずで、でもそんな人間的感情をどれだけ抱いた所で、死人は生き返らないし過去は変わらない。
 積み重ねた罪も消えないし、出口のない歪みも解消はされない。
 そういうアンビバレントの中に、異能で現実を書き換えられそうなチート野郎は既に囚われていて、色んな人がバンバン死ぬこの現状でも、彼らを縛る情と理の鎖は重たいままだ。
 そういう事を、過去と現在が呼応しながら不確かな未来を照らす今回のエピソードは、思い出させてくれた。
 写真の中の惨劇の結果がどうなるか、既に解っているのがなおさらキツいな…。

 自らをティエンシーと名乗る密告者が、己の過去を語る写真をヒカルに手渡した真意は何か。
 不透明な現実に自ら顔を出したということは、写真の中の過去を見届けただろうトキはそんな彼に、何を問い何を聞くのか。
 あんだけ最悪な状況、とっとと全部終わらせてくれ! と思う気持ちを見事に宙ぶらりんにして、ヒキの強いラストシーンで次回に引っ張るとこ含めて、マジで”時光”を堪能できる展開に、スタイリッシュサスペンスの腕力をつくづく感じさせられる。

 

 色々繋がりそうな要素を的確な距離を開けてバラまいて、非常に不穏な状態で間を空けることで、視聴者自身が点と点を結んで線にせざるを得ない構造を作る。
 解っていても乗っかっかるしかねぇ、釈迦の掌上のオタクって感じではあるが、こうして作品に振り回されている気持ちよさは、やっぱこのアニメの強さだ。
 共感できねぇ、好きにもなれねぇ奴が主役の話ならこんなにぶん回されないんだが、白黒コンビの人情と倫理はどうやっても好きになっちまうし、彼らが潜る過去に刻まれる人情味も否応なく、こっちの心を掻き乱し釘付けにしてくるからなぁ…。

 そうして感情を煽られて、俯瞰で作品全体を見る視点を揺すぶられ、冷静に作中のヒントを繋いで先を読ませるようになってるの、振り幅が極めて的確に大きいね…。
 過去と現在が重なり合う酩酊感と戦いつつ、次回も楽しく”時光”やってくぞ!

 

 

 

・追記 見てる側の揺さぶられる感情と、作中に描かれている客観的な情報を、難しかろうが切り分けて整理した上で挑まないと、全体的な構造がつかみにくい作品ではある。
 お兄ちゃんが出逢った新しい友達が、現在においてどういう意味あいを持ってくるのか。(人格交換殺人鬼を、便利に使っている黒幕との接点? それが銭弁護士?)
 お兄ちゃんとティエンシーちゃんが触れ合った時、ヒカルの声が聞こえなくなったのはどういう現象なのか。(異能者どうしの干渉が起こり得る?)
 ここら辺、絶対後々効いてくる要素なのでメモっておく。
 極めてしんどい物語のインパクトで判断力を奪いつつ、要所要所に誠実にヒント置いておくの、ホント頭良くて性格悪い(褒め言葉)作劇だよなー…大好き。