ラスボス襲来に時間旅行、使える手筋は何でも使って、暴くぜ敵の譲れぬ事情!
残り話数を数えろォォォッ!! って感じの、終盤戦本格始動のひろプリ第44話である。
夏休み最終日の小学生にも似た、ガチに切羽詰まった本気感でタルい導入全飛ばし、明らかに二話使うべき間尺のお話をガッチンガッチンに詰め込んで、アンダーグ帝国との関係を精算しお話に幕を下ろすのに必要なネタを、一気に駆け抜けにきた。
僕個人としてはこの詰め込み過ぎなグルーヴ感は嫌いではないし、遅かろうがやろうとしてくれること自体には嬉しさもあるが、まー客観的に見ると遅いしやり過ぎではあるよね……。
ひろプリは徹底的に敵の事情を彫り込まず、エルちゃん中心の虹ヶ丘邸に絡ませることも少なく、それ故空いたスペースで赤ん坊が夢いっぱいの子どもになっていく上で必要なモンを、それを守る中で歳も性別も違う個性が集って生きる様子を描いてきた。
この終盤の超早足はそのツケ……とも言えるのだが、俺はそうやって描かれたものがかなり好きなので、無様だとも失敗だとも思ってはいない。
それはまだひろプリが終わっていなくて、この大慌ての年末ダッシュがどこにたどり着くか、ゴールはたどり着いて見えていない状況だからかもしれない。
倒すべき敵がどんな存在で、強さだけを価値とする危うさの向こう側には、正義の反対側には何があるのか。
ここからの物語的突進を駆け抜けて、最後の最後それを描くのが間に合った時、今回のエピソードをどう思うのか。
自分としては、それが一番気になっていたりする。
つーわけでいきなり事件勃発のホットスタートから、ラスボスへの超必殺技パなし→迎撃、時止めから時間逆行、わんぱくお姫様との邂逅から伝説の生まれる瞬間まで、トップギアーでお送りするエピソード。
蓋を開けてみたらスキアヘッドとカイゼリンの距離感が超美味しく、『オメー愛を秘める戦士だったら、そういう”匂い”今までの出番で漂わせておいてよ!』という気持ちにはなった。
アイツがバトルノルマ発生装置として、対話もドラマもなく場面ウロウロしてた時期ほんっと味がしなくて、その無味乾燥が他のことに注力する上で必要だったとしても、こんな美味しいネタ仕込んでるんだったらもうちょい噛みしめる時間は欲しかったよッ!
前々回ほざいてた『愛のため戦ってる』がフカシでないと、カイゼリン様が幼い時から側仕え、そっと指を添える仕草からムンムン匂ってきたので、ソラちゃんが開眼した対話主義がスカされることはなくなったのは良いことだ。
『プリキュア・マジェスティック・ハレーションでこい……ッ!』と、バラン相手にしたクロコダインみてーなこと言い出したカイゼリンは悪の格があって好きなんだけども、『暴力こそが全てである』というアンダーグ主義を自分に納得させるために、プリキュア最大の武力を打たせた感じもあった。
次回過去が暴かれる……つうか親父のマチズモ引き継いでイヤイヤ侵略者やってる雰囲気出とるが、300年前に色々ネジ曲がった果てに赤ん坊に本気で詰め寄り、街を焼くのに暴力比べの儀式経由しないといけない、厄介な人格が作られたのかな?
親父が超問答無用で怪物テロぶっ込んでいるのに対し、手続き挟んでいるのはまーそういう血が流れていない証明だと思うし、ここにも対話の余地があると思う。
しかしカイゼリンに暴力をためらう余地があるほど、豚やらバッタやら歪めまくった帝国の体制を300年是正できないまま、自分と同種のマチズモの犠牲者生み続けてきた愚かしさも強調されるからなぁ……味付け難しそう。
一年通じてエル公のおしゃべり力と、とはいえガチの赤ん坊なのでなんも知らない巻き込まれっぷりが妙に面白かったが、圧倒的暴力に押しつぶされそうな状況を一時停止→巻き戻しして、時間軸は真実を秘めた過去へ。
ザ・お姫様って感じの初代エルちゃんがなかなか好みの造形で、唐突な真相開陳を飲ませる良い調味料になっていた。
つーかウマ三期のダイヤちゃんといい、虹ヶ丘ましろさんといい、強さと気高さと優しさと美しさを兼ね備えた、たっぷりの布地をふわりと踊らせるノーブルな存在が自分特攻であるのを思い知らされる昨今、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
自分はここで得た気づきを大事に、お姫様キャラ大好き人間として胸を張って生きていきたいと思います。
さておき、プリキュア誕生前の時間軸では未来人の寝言はなかなか信じてもらえず、しかし暴力的現実が髭面仮面マッチョの形で襲いかかって、信じざるを得ない……というか自分自身が伝説となっていく展開は、なかなか面白かった。
変身できなかろうが窮地を見過ごせない、ソラ・ハレワタールの”血”が見えたのも良かったし、たおやかなだけかと思われた姫様が鳥さん乗りこなして火中に頭から突っ込み、果たすべき正義を体現できるヒーローだと描くのも熱かった。
ぶっちゃけ超駆け足の詰め込み展開なので、投げつけてくるタマ1発1発に火力が必要になるのだが、ヴィジュアルデザイン含めて今回出てきた連中は、そこら辺いい塩梅に満たしてくれてる感じ。
それはカイザーアンダーグも同じで、今までの幹部の上位互換というか、社会通念と暴力的制度で内面化させられていた暴力信奉を、極めてナチュラルに遂行できる生粋のクズらしさが、燃え盛る街をバックにギラギラしてた。
あの自分を一切疑わない感じ、めっちゃテストステロン出まくってて力強かったな……絶対自分の側にはいてほしくないタイプだ!
この男を頂点に独裁体制が敷かれた結果、アンダーグ帝国は例えばバッタ野郎が自分の弱さと向き合えない、無価値と断じられる辛さから逃れるために暴力を手に取る、余裕も思いやりも発展性もない社会になったのだろう。
一個人のメンタリティが国家レベルまで拡大され、外部からの是正が届かないのが独裁制最大の急所だと思うが、そこら辺のヤバさを見事に体現している造形で、ゲップが出るほどイヤったらしかった。
あの問答無用の侵略っぷりは、ソラちゃんがたどり着いた対話主義とは真逆だ。
今回もとりあえず話しようとしてて、自分なりの正義に努力する姿が爽やかだったけども、善なる存在を暴き立てる鏡としての悪役の仕事は、シンプルながら果たしていると思う。
今回ソラちゃんが対話重視の立ち回りを貫いたことで、放送当時はぼやけてた前々回の値段も、結構アガった感じはする。
相手の事情を知るのに対話以上にダイレクトで、問答無用に分からされるのが”体験”である。
ソラましを当事者に300年前の因縁、カイゼリンと彼女の帝国がなーんでああなっちゃったのか、疑いようもなく体験させるために時間を巻き戻したわけだが、さてこの侵略はどういう推移を見せるのか。
赤ん坊に異常執着見せてる今のカイザリンが、対話の余地を残しつつ父と同じ暴力主義者になってしまっているのは何故か。
ここらへんを次回掘り下げ、超絶早足で駆け抜けていく(しかない)勢いをクライマックスの加速に繋げられたら、まーいい感じになんじゃねぇかな?……と、期待混じりで放送を待つ。
なんだかんだ俺ひろプリ好きなんで、楽しく盛り上がって終わってくれるなら、それに越したことはないんだよね。
プリキュアを支える柱としてコレまで重視されてきた”敵”を横にどかして展開してきたひろプリは、結局この最終盤”敵”の話をしまくる形になった。
ヒーローに力が必要な理由、それだけでは”敵”とおなじになってしまう理由を描く上で、なんだかんだ彼らは大事な存在なのだ。
ぶっちゃけかなり遅い発火ではあるが、相手の心情事情を一切気にせず踏みつけてくるカイザーアンダーグの侵略と、今まさに歴史の裏側を体験し、敵の事情を学び取ろうとしているプリキュアたちとの対比には、強さには常に相手をわかろうとする優しさ、真実を見抜く賢さが必要だと、上手く削り出せている手応えがある。
こういうお話の真芯を射抜く巧さを最終盤活かし切ったら、異形ながらもひろプリらしい”敵”の描き方を、なんとか間に合わせることができるのではないか。
そんな期待とハラハラを抱えつつ、次回明かされるカイザリンの真実を見届けたい。
蓮っ葉なオーラ漂わせる現在と、優しさを表に出して戦えない内気少女っぷりの対比が良く効いてて、やっぱカイザリン良い造形なんだよなぁ……。
ハイ、僕はどこに出しても恥ずかしいお姫様キャラ大好き人間ですッ!
次回も楽しみッ!!!!!!