イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイドルマスター ミリオンライブ!:第11話『とびらの向こう 繋がる想い 』感想

 運命の杮落とし公演に向けて、全速力で駆け抜けろ!
 最終話で高く跳ぶための滑走路を、合同合宿で丁寧に整えていくミリアニ第11話である。
 大変良かった。
 最終話、テーマ語りでドラマのテンポを落として空気を冷やすのを避けるべく、最後の事前準備では自分たちがどんな物語を編み上げてきたのか、そこにどんな意味があったのか、じっくり振り返る場面が多いと思う。
 僕はアニメが自分の言葉で、自分の描線で自作を語る自己言及的な場面がとても好きなので、本番前の事前準備、デビューを果たして輝くアイドルたちを追いかけつつ、『ミリアニってなんだったのか』をキャラが伝えてくれる今回は、メチャクチャ待ってましたの仕上がりだった。
 見る人によって好みは様々だと思うけど、やっぱ少なからぬ苦労を重ねて作り上げた物語的構造物が、どういう意図の上に積み重なり何を作り上げたのか、作り上げたと造り手側が考えているのか、感じ取れる場面が作品自体から差し出されると、僕はとても安心する。
 自分が感じたものが間違っていなかったか、答え合わせが出来るから……てのもあるけど、作中の現実がテンション上げて物語を走り切る前に、このタイミングでしか告げられない赤心を素直に、キャラを通じて手渡してくれている感じが、アニメと対話している錯覚を与えてくれて嬉しい。
 いち視聴者に過ぎない僕が、真実アニメが作られる内情や真意を捕まえることは出来ないんだけども、それが出来ていると思い込めるからアニメを見てきたし、これからもアニメを見ていくのだろう。
 そういう、自分がアニメのどこが好きで、物語の何を求めてこういう文章描いているのか、思い返せる最終話一個前だったのは、個人的にとてもありがたかった。

 

 お話としてはこけら落とし公演に向けて準備を整え、明るく楽しくみんなでシアターお披露目に向けて駆け抜けていく感じ。
 作中の現実としてはスタートであり、アニメ放送としてはフィナーレとなる、入口と出口が繋がった最終回になるのが、個人的には豊かで面白いな、と思う。
 この始まりの続きをアニメで描けるかは、なかなか難しい課題を越えた先にある夢なんだと想うけど、しかし作品内部ではこの輝かしいデビューの後に52人それぞれの困難があり、奮戦があり、開花があるのだと、幕を下ろした後の劇場でライブが続いていくのだと、思えるような終わり方。
 そこにたどり着けるよう、どっしり腰を落として準備を描く今回は、色んなアイドルが入れ代わり立ち代わり、賑やかに輝いていてとても良かった。
 第5話を思わせるアコースティックな”トワラー”でもって、あの手作りライブと地続きで華やかなデビューが成り、シアターという家の一つ屋根の下、肩を組んで前に進んでいくアイドルたちの過去と今と未来が、ひと繋がりに感じられる。
 お話をまとめ上げるにあたって、やっぱりこの連続性ってのは僕にとって大事で、今まで描かれた色んなことに意味があって、それが繋がってここからのライブが生まれ、それがもっと輝かしい未来に繋がっているのだと、お話自体が見取り図を手渡してくれたのが良かった。

 そういう堅苦しい視座を横にのけて、アイドルちゃん達はただただシンプルに可愛く、すンゴイ萌えオーラ振りまきながら元気だった。
 プレッシャーに弱い紬のお口が、なんどもへにゃへにゃになるの可愛かったなぁ……。
 静香や未来から”本気”の意味を受け取った翼が、瞳に宿した輝きもそうだけど、白組がずーっと可愛い女の子を可愛く書こうと頑張ってくれているのは、このアニメのとても偉いところだと思う。
 事務所合宿をキャンバスに刻まれていく、アイドルたちの日常スケッチをたっぷり浴びながら、しみじみ『可愛いなぁ……』と思えるのは、やはりありがたい。
 ライブ始まっちゃうと、そういう滋味より『頑張ってるなぁ、凄いなぁ』が前に立ってくるだろうから、自然……を装って精妙に削り出された、二次元美少女のあざとい魅力を摂取するラストチャンスなのだ。

 

 そういう横幅広い回の、靭やかな芯になっていたのが翼だった。
 練習せずとも何でもできちゃう天才性を初期から発揮し、だからこそ夢中になれる何かを笑顔の奥で探していた女の子が、このクライマックスで夢に向かって熱く前のめり、努力することでしかたどり着けない場所を目指すドラマは、シンプルに良かった。
 小悪魔なちょっかいかけられるばかりだったPちゃんが、”プロデューサー”として翼に見初められて、高く跳ぶために彼だけが出来るアシストをひっそり頑張っていたのも、1クールを通じて天才少女とその仕掛け人の関係が、変化した手応えがあった。
 翼は羽ばたかなくても高く飛べてしまうキャラなわけだが、地べたを這いずる(例えば静香みたいな)凡人に我関せずというわけではなく、むしろ優れた感受性を適切に使って、欲しい手助けをしっかり差し出してくれていた。
 ここらへんの好感の持てるキャラ造形は令和のストレスコントロールって感じで、しかし造形全体はややオールドスクールな方向性で、とてもミリアニらしい描き方だったかなと思った。

 ”本気”になる前から翼は個性的な魅力を輝かせる、とっても素敵な子だったけども、今回瞳に宿った本気の光は、彼女を更に愛しく思わせる。
 前々回憧れの美希に課題を手渡され、前回静香の頑張りを間近に感じ、今回遂に真正面から”本気”になると、段階踏んでここまで至る様子を描いてきたのが、天才少女の素直で高い飛翔に繋がった印象だ。
 俺は何でもテキトーにこなせて充実もしてて、でも魂の奥底で何かがくすぶってる存在が本気で燃えられるものにたどり着く展開がいっとう好きなので、翼のゴールがこういう形だったのは大変良かった。
 おまけにたった一人でそこにたどり着くのではなく、大事な友だちのピンチに手を差し伸べたり、そうすることで間近に”本気”の意味を見つけたり、未来と静香とのお互い様な助け合いが足場を固めている所が、また良かった。
 主役三人が三者三様、自分らしい角度で”アイドル”に向き合う多角性があって、それが孤立せず連動し連帯していたのは、ミリアニを楽しく見る上で大事だったかな。
 好きになれる子たちが話の真ん中にいてくれたおかげで、安心感があった。

 その中核に堂々立つ未来ちゃんは、クライマックスだからってドン曇りすることもなく、めっちゃ合宿楽しんでた。
 じゃんけん勝てないダバダバ涙も、ようやく勝てた満点笑顔も、最高にあどけなく可愛らしく、僕が好きになれた春日未来で大変良かったです。
 激重頑張りルートを静香に任せ、未来ちゃんはあくまで天性の明るさとアイドル力でもって、”正解”を掴み続ける前向きな編成は、俺にはとっても良かったな。
 第5話でのしょんぼり自分語りがなかったら、傷がなさすぎて嘘っぽい主人公だったのかもしれないけど、あそこで中学生らしい震えをちゃんと描いてくれたことで、ただの浮かれポンチにならず彼女なり、考えた上での明るさだと思えたし。
 やっぱ各話数で描いたものが後々効いてきて、あるいは振り返って有機的に意味が生まれる、物語の網目がクッキリしたお話だったのは、自分と相性が良かった気がする。

 

 というわけで、とても良き決戦前夜であり、ライブ当日の華やかな輝きでした。
 不穏なスパークが機材に走り、最後の課題を予感させていましたが、今回描かれたシアターの絆、それが支え生み出すアイドルの強さでもって、問題なく乗り越えていけるでしょう。
 12話で扱うにはあんまりにも多いキャラクターと、出来る限りの向き合い方を積み重ねてくれたアニメも、次回一度の幕引き。
 輝けるシアターお披露目の舞台で、少女たちはどんな炸裂を見せてくれるのか。
 とても楽しみです。