イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ひろがるスカイ!プリキュア:第46話『ヒーローたちのクリスマス』感想

 年の瀬も迫る戦時下の街、不安に怯える人々に笑顔を届ける怪人は……実在するッ!
 最終決戦を前に日常の暖かさを新たに描く、プリキュアサンタ大活躍なひろプリ第46話である。
 ぶっちゃけ放送されるまでは『やってる場合かよ……』とか思っていた最後の日常回だが、やられて見るとホッコリ暖かく、いつアンダーグ帝国が襲撃カマしてくるか分かんないスカイランドの緊張感も裏に見えて、今やる意味がちゃんとある回だったと思う。
 後半のファンタジーがリアルになる異世界の旨味凝縮実在サンタ展開も良かったが、旅立つ前に各プリキュアが家族と触れ合い、何が大事なのか静かに確認するフェイズが、じんわりと染みた。
 カイゼリンの過去と未来を知って自分に何が出来るか、生真面目に考えているましろさんとか、愛すべき児童たちに満点笑顔を届けるあげはさんの置き手紙に匂う微かな悲愴とか、いつもは折り目正しいソラちゃんが実家では砕けた雰囲気で笑ってる様子とか、最終決戦始まる前にちゃんと見ておくべきモノだったと思う。
 ツバサ君の研究でシェルター機能が整った、王都に避難しないと安心して過ごせない人たちを描くことで、情勢がだいぶヤバい感じになってる手応えもあったし、『オメーも赤ちゃんだろ!』と赤ちゃん心配するエルちゃんにツッコんだ後『……ああ、もうちっちゃい赤ちゃんじゃないんだな、自分より小さな子を心配できるところまで育ったんだな……』と、一年積んだ成長にしみじみもした。
 色んな人の日常を守る盾を王都に張り巡らせるという、偉業を成し遂げたツバサくんを両親が抱きしめるのは、小さいながら彼が一年どういう物語を進んだのか教えてくれる描写で、とても良かったです。
 そしてエル公育ちすぎだとは思うが、過去の悪霊に魅入られた運命の子どもなんで、尋常じゃない発育するのは英雄の資質……か。
 『金太郎は生まれ落ちた時から歯が生え揃い、自分の足で立った』とか、『釈迦は生誕するなり七歩進み、『天上天下唯我独尊』と唱えた』とか、そういう感じで腹に収めよう。

 

 途中までは『スカイランド異世界とは言いつつちょっと逆立ちした地球の文化が目立つし、あんまガッツリ文化衝突/交流はやんなかったなぁ……』などとスリクマスを見てたんだが、ガチ鳥類がガチサンタを職業としてやりだした辺から、ファンタジー世界特有の『いい嘘』が滲んできて斜めの姿勢を真っ直ぐにした。
 何しろ鳥が喋る不思議の国なんで、サンタが実在してもいいだろッ!
 みんなのプリキュアが、戦いのための異能を笑顔を届けるために使ってもいいだろ!
 そういう力強いメッセージが、子供らのために駆けずり回るプリキュア(と、スカイランドの大人たち)から溢れていて、児童に向けた物語としてめっちゃいいなと思った。
 完全奉仕でサンタやってる鳥のやりがい搾取力は凄いことになってたし、虚無から生まれたいじわるトルネードでバンクノルマこなすの、めっちゃひろプリらしい腕力展開だとは思ったが、まーそれはそれだッ!
 ……なんだかんだ俺は、このヘンテコで凸凹したプリキュアが好きなんだと思う。

 クライマックスに向けて戦況が激化してきて、王都以外にスリクマスなんて贅沢な行事やってられない戦地と化した、夢の国スカイランド
 この世知辛さがじんわりいい塩梅に描かれていたからこそ、それでもなんとか笑顔で要られる聖域を守る盾のありがたさ、それを生み出したツバサくんの偉大さ、夢の届け人を頑張るターサンとプリキュアの尊さも、ググッと際立つ。
 『残り話数が少ない中でやる、最後の日常回』つうポジションを、エピソードに独特の味わいを生み出す足場に使って生かした感じがあって、今回とても良かったです。
 こっから衝突し解決していくだろうアンダーグ帝国のシリアスな空気を、完全に消し去るわけでも飲み込まれるわけでもなく、暴力が間近に迫りつつもそれに屈しない強さとして、ガキが笑ってプレゼント守る世界を守るという、スゲープリキュアらしい正しさが書かれていた。
 ド直球故にヒネた受け取り方しちゃいそうなメッセージなんだが、それは本当に大事なことよ……。

 

 そしてその尊みを、スーパーロマンティック演出で分かち合うソラ・ハレワタールと虹ヶ丘ましろ
 『こっから先はバトルバトルやし、叙情性の爆弾落とすならココしかない!』という見切りが突き刺さり、運命の二人が合わせた掌の中に大事なものを沢山掴み取る瞬間が、最高に素晴らしかったです。
 お互いに憧れ守られ、だからこそ強くなっていけた二人の関係がホワイトクリスマスに燃えているのも良いんですが、そこで収まらず自分たちの目で見届けた平和な日常、子どもたちの笑顔の意味を、確認し共有する場面なのが好きだ。
 『特別なあなたと片手を繋ぐからこそ、空いた片手で全てを守れる』つうヒーローの描き方が俺はスゲー好きなので、そういう爽やかで靭やかな強さが二人にあるのは、やっぱり良い。

 お互い同じ手帳を贈りあうプレゼント交換も、贈り贈られ守り守られて進んできたここまでの歩みを形にしてくれた感じがあって、めっちゃ良い。
 ソラちゃんは脳筋に見えてめっちゃクレバーな人で、異世界で出会った発見を全部メモって自分の糧にしてきたわけだが、その受け皿となる手帳を手渡してくれたましろさんへの恩も、けして忘れない。
 一年分積み重なったその先、戦いを終えた後も近くにいたいという、ましろさんの思いも新たな手帳にこもっていて、心地よい湿度のある賢者たちの贈り物であった。
 ソラましはお互いをめっちゃリスペクトしてて、より善い自分として自分を未来に進めていくための理想を、お互いの中に見てる。
 その上で、毎日笑ったり泣いたりする生身の自分たちも、心から大事に出来ている(出来るようになった)所が好きだ。
 『特別な日に、感謝を込めてプレゼントを送る』って儀礼にときめきを添え、しっかり描くことで、こういう二人の距離感が鮮明になっていた。
 強く繋いだ手がなければ、険しさに膝を曲げてしまいそうになるだろう最終決戦を前に、そういうモンを確認できたのは良かったと思います。

 

 

 というわけで、年内最後のひろプリ日常回、大変良かったです。
 クリアマックス寸前だからこその緊張した空気を上手く取り込んで、守るべきものの輪郭をはっきりさせる作りだったのは素晴らしかった。
 つーわけで新年からは終局に向けてノンストップですが、まずは不思議な赤子エルちゃんの決着からスタートっぽいです。
 俺は赤ん坊から幼子になり、なーんも出来ねぇなりにやりたいこととか出来ることとか、一個ずつ増えていったエルちゃんが好きなんで、『大人になる』がその幕引きになってほしくない気持ちが、正直ある。
 んだが、キュアマジェスティ形態が”真実”って事になりそうな圧力は変身ヒロイン物語である以上濃い目に漂っていて、プリンセス・エルとキュアマジェスティの間にある断絶を、正直上手く繋げたり埋めたりは出来てこなかった(してこなかった)お話がどういう結論出すのか。
 興味深く次回を待ちます。

 パパママが『私たちのプリンセス』をどんだけ愛していて、まだまだその両腕に抱かれているのが似合いのエル公が今回山盛り描かれたんで、最愛の子とともに過ごす時間を運命に奪われたあの人達の”義”が報われるような決着に、どうにかたどり着いてほしいんだよな……。
 『エルちゃんは途中経過でしかなく、子供時代は大人になるまでの足踏みです』っていうメッセージが、出かねない危うさをキュアマジェスティの描き方は孕んでる気がしてて、そこら辺にどういう結論出すのか、結構大事な勝負どころだと俺は思う。
 だから、次回も楽しみだ。
 なんだかんだ、俺はこの凸凹したヘンテコなプリキュアが好きなのだ。