イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ダンジョン飯:第1話『水炊き/タルト』感想

 火竜に食われた妹を救うべく、自給自足の冒険ライフへレッツゴー!
 クセモノ本格食材な原作をTRIGGERがどう料理するか、お点前拝見なダンジョン飯第一話……期待以上の仕上がりで満腹ごちそう大満足でしたッ!
 話のテンポとしても絵作り雰囲気作りとしても、あまり長大に構えすぎずポップでライトな……しかし背景設定の作り込みがしっかり感じ取れる手触りにまとめ上げて、小気味いい船出となってくれました。
 危機と冒険が待ち構えるダンジョンの美術、悪目立ち市内が雰囲気満点な劇伴がワクワク感を盛り上げてくれて、スタンダードな冒険譚としての魅力もしっかりありながら、『モンスターを食う』という劇薬がそこに良い化学反応を起こして、特別な期待感がグンと盛り上がる。
 命がけの闘争と冒険に賭ける青春が、豊かに同居している”ダンジョン”という食卓へ、見ているものを楽しく付かせてくれるような第一話で、大変良かったと思います。
 原作もそうなんだけど情報の提示がとにかくスマートで、トンチキぶっこいてても最深部で火竜とやりあえる凄腕冒険者の実力を、第一層で歩きキノコに殺されかかってるニュービー出すことで分かりやすく見せてたり、魔物食うの食わないのな内輪もめのストレスをスルッと解消してくれることで、センシがパーティーに加入する流れを自然にしてたり。
 ワイワイ騒がしいようでいて、メチャクチャ端正に作られていたね……。

 どんくさくて騒がしいマルシル(可愛い)、子供っぽい外見違反して冷静なチャルチック(可愛い)、魔物食のエキスパートとして頼りがいが在るセンシ(可愛い)、一見プレーンだがイカれっぷりが半端ないライオス(可愛いところもある)と、主役たちのパーティーバランスも初手から大変良く、声優陣の好演も相まって気持ちいいスタートとなりました。
 のっぴきならぬ状況に追い込まれて、異様な魔物食に挑むド素人どもの手際の悪さを、突如割り込んできたセンシが穏やかに、手際よく美味しそうに導いていく流れが気持ちよくて、どんぐり眼の髭面おじさんがチャーミングに書けていました。
 僕はセンシがとっても可愛いのが好きなので、アニメでも可愛く可愛く書いてくれて嬉しい……。
 原作だともうちょい分厚い導入だった印象もあるのですが、メディアの違いに合わせて適度に描写を間引くことで、小気味いいテンポで進めていたのも、今後どう”アニメ化”されるかのお手本として、凄く良かった。
 同時に漫画では省略されていた部分をキッチリ作り込むことで、ライオスと一緒にダンジョンに潜っていく臨場感もしっかり醸し出されていて、アニメだからこその魅力も満点。
 声優陣のベストマッチな演技(特に千本木さんの汚い声と可憐さの同居)、王道ファンタジーに必要なリッチさを堪能できる音楽と、『音がついて動く絵』だからこその面白さも、とても元気でした。

 

 TRIGGER制作つうことでどういう味付けになるか、ちとビビっていた部分もあるのですが、癖強作画はあくまでアクセント程度に有効活用し、基本は作品の雰囲気に合わせて程よく落ち着いた感じに仕上げていて、とても良かったです。
 日常……というには死が間近すぎるダンジョン生活をやや抑えめにした分、キモである料理シーンでは、ライオスたちが食する元魔物がしっかり美味しく感じられるよう、力を入れて表現してくれていました。
 センシとライオスの魔物生態学への言及といい、ダンジョンをただ危ない乗り越えるべき試練場としてではなく、自分もその一員として生活を共にする場として、ある種の敬意をもって向き合う姿勢がしっかりあって、とても良かったです。
 殺して食って、命を繋ぐ。
 生の特権であり業でもあるモノと向き合いながら、今後もパーティーはダンジョンに潜り魔物を食っていくわけですが、それは堅苦しく重たいだけではなく、食べる喜び、生きている楽しさに満ちた営為でもある。
 魔物食に断固NOを貫いてきたマルシルが実際食ってみて味わい、『悪くない……!』となる過程含め、生きることの明るさが、食事シーンにしっかりあったのは良かったです。

 同時に対極にある死がダンジョンの中、主役であるマルシルの内で結構歪になってしまっている様子も、ひっそりながら的確に描かれていました。
 パーティー全滅の窮地、妹が生きたまま竜に食われる土壇場でも、マルシルが考えるのは『腹が減った』なのんきであり、『ここで死んだら蘇生できない』という、冒険者特有の思考です。
 スライムに窒息させられたり食人植物に飲み込まれたり、迷宮の中の死は取り返しのつく厄介事であり、飯を食うぐらいポップな日常茶飯事になっている。
 サラッと描写されている死との付き合い方は、しかし足を止めて考えてみれば異常で、その異常さにダンジョン全体……その外に広がり、迷宮稼業を産業基盤としている島全体が飲まれかけている危うさが、明るく楽しい冒険の裏、かすかに見えるスタートなのは良かったな。

 

 あくまで食べやすいライトな食感でスタートしたこのお話ですが、”ダンジョンと飯”から想起できる要素は、どっしり腰を落として全部向き合います。
 生きることと死ぬこと、食べることと食べられること。
 そうすることでしか生きられない人間の定めを、もしかしたら越えられるかも知れないダンジョンという異界。
 その祝福と呪いを、しかしあくまで楽しく笑える冒険譚として給仕してくれる信頼を、しっかり届けてくれる第一話でした。
 大変素晴らしかったです。
 次回も楽しみッ!