イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

異修羅:第1話『柳の剣のソウジロウ』感想

 魔王果てし地に降り立つ、数多の破壊と憎悪の炎。
 超絶いい気になった超人病患者が、別の超人病患者とバチバチやり合うっぽいスーパー異能大戦、堂々開幕の第1話である。

 といってもスタートは強烈すぎる理不尽に人生と人格ねじ曲がっちゃった凡人の前で、自称”最後の柳生”が迷宮ゴーレム相手に大規模無刀取りぶっ込んでいい気になったところまでなのだが……。
 しかし治安最悪大虐殺なスタートは大変良かったし、ダンジョンに寄生して経済成り立たせてた一般人が歯も立たない鋼鉄虐殺装置相手に、薄ら笑い浮かべながら無双しまくるアクションには、スカッとするはずなのにケツを火で炙られているような、独自の手応えがあって面白かった。
 助けられたはずなのに理不尽な恨み節全開で、強者と強者が食い合う地獄コロシアムへの道を拓くメインヒロインといい、真っ直ぐで善良なやつが一人も出てこなさそうなロクデナシオーラが濃い目に出ているのは、オリジナリティがあって良いと思う。
 異世界っぷりがイスラーム圏として表現されていたり、虐殺ゴーレムのデザインがマシーネンクリーガーみたいだったり、最初の最強がジャージ着て蛇みてぇな顔した冴なさだったり、良い角度で”ハズシ”入れてくれてる感じは好みだ。
 『こんなロクでもねぇ世界で、真っ当な成長物語が存在するわけねーだろ!』という荒らくれたメッセージと、そんな予断を貫通してちょっとイイ話見てみたい気持ちが、第1話から元気なのは良いことだなぁ。

 

 話の展開としては序章も序章、作品世界のサワリと第一の修羅顔見世といった塩梅であり、だからこそケレンと残酷と理不尽に満ちた、フックの強い物語が展開されていた。
 『ユノとリュセルス、少女二人の目指せエクスプローラー! 青春頑張り旅!!』みてーなオーラを一瞬だけ醸し出しておいて、その片割れが亜音速でブッチュブッチュの肉塊にされる趣味の悪さは、『おーおーだいたいそういう感じか……』と、見ている側にハラ決めさせてくれる親切さであった。
 なまくら一本で超巨大ゴーレムを解体する、ソウジロウの異能を強調するためには、彼が斃す怪物……どころかその眷属にも蹂躙される一般人の哀れさ、血しぶきと一緒にそれに呪われたユノのどす黒い心を書いておく必要があるわけで、パワーバランスの描写とそれが生み出す歪みは、上手く書けていたと思う。

 親友を助けるために戦う勇気が足りない、ごくごく当たり前の惨めさ。
 あるいは死の恐怖を前に、膝が震える人間当然の弱さ。
 どんな強大な敵でも寸断し、殺すための手筋が見えてしまう異能者にはそういうモンは判らないし、判ってくれず判ろうともしない強者の在り方に、ユノは逆恨みをブチ込む。
 ここら辺、話が転がった後に『凡人もまた異能を理解しないし、出来ないししようともしてない』つう形で反転すると面白そうなネタだな……とも思ったが、そこら辺は先の話だろう。
 今は目の前に広がる破滅も、蟻のようにすり潰される凡人の尊厳も気に留めず、ただただ剣の行き着く先を求める剣鬼と、ヒロイン面の奥にどす黒い情念を宿した女怪が出会い、修羅待ち受ける運命の荒野へ進みだした……つう事が大事だ。

 

 初手から専門用語バリバリでぜーんぜんわからん部分もあったが、『”まろうど”は客人神であり転生者なのかな……』とか、『既に真の魔王は倒されて、僭称者がロクでもないことしてる感じなんだな……』とか、ケレンと血しぶきに満ちた展開に乗っけられる中で、飲み込めるものは結構あった。
 大虐殺ゴーレムブラザーズが大暴れしてくれたおかげで、この世界の魔法は半分科学技術と入り混じったもんであり、つまりは今後ファンタジックな剣技や魔法だけでなく、現代兵器無双なんかもルール無用で飛び出してくる期待感が高まった。
 ソウジロウ級のぶっ飛び人間が色んな種族、色んな”強さ”で出てくる時に、『いや~~本格ファンタジーにガトリング砲はちょっと……』みたいなストッパーかかってるとゲンナリするわけで、魔法体系のタガがいい塩梅に外れてて、ド派手な絵面が出てきてくれそうなのは良い要素だ。

 無敵に思える鋼鉄の悪魔にも、呪印砕かれると即死だったりとしっかり弱点が設定されていて、やりたい放題やりつつもバトルバランスを取るお話なのが見えたのは良かった。
 せっかく人外の強さを発揮する怪物どものバトルロイヤル、無法と無法をぶつけ合わせつつ峻厳なルールでもって納得できる決着を描いてくれなきゃ勿体ないわけで、何でも好きに設定できる創作世界だからこそ、色々枷をハメて強さが暴走しないよう、工夫している感じは受けた。
 ここら辺の進化はドデカ機械兵をぶっ倒して、俺TUEEEEのドレスアップ用品に変えた今回ではなく、同レベルの異能とお互いのインチキをぶつけ合う局面で、より厳しく問われる気はする。
 『どう考えても勝てねぇだろ……』と思わされる無敵人間二人が、ぶつかり合ってどう戦い、どう勝負がつくのか。
 そこのヒネリ方で唸らされてみたい欲求は強いので、はよう事態が転がってバチバチやり合う局面になんねーかな、とは思う。

 というわけで、かなり好みのド厨房ロクデナシアクションバトル物語でした。
 僕は”セイクリッドドラグーン”つう、PC全員超人病患者しか出来ないRPGが大好きなんですが、そこらへんの”匂い”……ありましたねぇ!
 ソウジロウが”最初の一人”でしかないと激渋土師ナレーション(最高)で告げられたので、この後もぞろぞろ激ヤバ重症中二病野郎が素っ首並べてご登場すると思いますが、そういう脂っこい話大好きマンなので、好き勝手絶頂にやってほしいもんです。
 次回も楽しみッ!