イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

葬送のフリーレン:第23話『迷宮攻略』感想

 一時の安らぎを街に置き去りに、遂に始まった第二次試験。
 前人未到のダンジョンを乗り越え、栄冠を掴むのは一体誰か!? な、フリーレンアニメ第23話である。

 すげー試験に挑むってのに血圧上げてワーワー騒ぐ連中は少なく、非常にスルリと足を踏み入れていく静けさと、いざバトルが始まった時のスーパー作画の落差がこのお話らしくて、前回とはまた違った味わいがあった。
 知恵比べの側面が濃かった第一次試験に比べて、妙にマッチョな緊急脱出手段が用意されてて、パーティ組んで協力して乗り越えるのもOKな迷宮攻略は、人殺しにならないからこそ暴れる全力が見れて、なかなか新鮮である。
 つーかラオフェン、あんなにド迫力の薙ぎ払いぶっ放せる、優秀な魔術師だったのね……。
 新参とナメてた相手の実力を見ることで、翻って参加者の実力を信じて協調主義に舵切ったデンケンの賢さが裏打ちされるの、なかなか面白い運びだった。
 というか複製体が完璧な”仕草”してると解るくらい、ラオフェンのこと良く見てるデンケンおじい、人間が好きすぎ。

 

 話の方は久方なミミック芸なんぞ交えつつ、非常にまったり進んでいく。
 このスローペースが、インチキな強さ誇る主役が敵に回るヒリツキでギュッと締まって次回に続くのが、なかなか良い緩急だとも思うが。
 それにしたって久々のフリフェル、親子であり師弟でありそれを越えた間柄でもある二人の歩みを、たっぷり味わえたのは大変にありがたい。
 重ねた年月は遥かに多いけど、瑞々しく幼い感性がそのまんま残ってる永生者と、彼女にシゴカれ倒した結果早めに老成しちゃった愛弟子の対比は、彼女たちだけの心地よいひねりがあって、見てて気持ちが良い。
 大人としての責務を存分に果たし、しっかり鍛え育てて世界を見せてるんだけども、どっか頑是ない部分が残ってるフリーレンの愛嬌と、早く老いるが故に永遠の少女であり二人目の母でも在る存在を追い越して、甲斐甲斐しく面倒見てるフェルンの頼りがいは、難度味わっても最高に良い。
 積み重なる年月が種族や個人ごとに別々で、それが生み出す影響も様々なんだけども、それが断絶ではなく個性的な融和を生んでいく描写は、永生者を主役に据えた物語として優しいな、と思う。

 フリーレンは永遠に変わり得ぬ存在として、変わらざるをえない定命者の救いとしての顔を持つ。
 しかしそんな彼女の幼い可愛げは、勇者との旅がガッチガチの合理主義を解きほぐし、過酷なこともあったろう十年の冒険を、願った通りワクワクなまんま終わらせる奇跡によって掘り起こされている。
 『ヒンメルがそうしてたから』は、今のフリーレンを支える強力なロールモデルであり、時間も死も越えて愛した誰かを手本に、楽しく正しく日々を生きていく姿は、今回も迷宮に眩い。
 そんなふうに変わったフリーレンに育てられ、その生き方を自分に引き受けて当世随一の魔術師に育ったフェルンが、だらしなくおバカな顔も含めて師匠/義母を愛していて、だからこそ今のフェルンになっている……という連祷が、僕はやっぱり好きだ。
 主役たちがずーっと仲良しなの、ホント最高なんだよなぁ……。

 

 とまぁまったりムードで迷宮探索は進むわけだが、前人未到の迷宮にはエグい罠山盛りあって、それに加えてヤバい複製体も解き放たれている。
 デンケンが選んだ協調路線が果たして正しかったのか、フリーレン・コピーを相手に力付くで証明しなきゃいけない展開になってきたが、さてはてどうなることか。
 魔族を相手に、主役がどんだけ規格外の怪物化をたっぷり見させてもらった後、生き様と拳で好感度荒稼ぎしてきたパワフルジジイ最大の障害として立ちふさがるの、面白い見せ方だよなぁ……。
 ジジイの人間を見せられているので、『デンケン頑張れ!』って自然に前のめりになるからな……。

 お互い命の大事さを知っているがゆえに、第一次試験では加減したぶつかり方になったけども、今回は意志なきコピーつうことで死ぬまでやれるし、試験の一部である以上潰さなきゃ進めない。
 英雄が魔王を倒してから幾年月、対人殺傷に特化して技術を磨いてきた現代魔術師達がどういう戦い方をするのか、見せる意味でも面白いシチュエーションだ。
 魔王の風格すら漂わせる英雄の影に、魔術師達はどんな技と意地を叩きつけ、己を示すのか。
 次回も楽しみです。