イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

外科医エリーゼ:第8話『昔日』感想

 転生皇女の医療無双! ……は一旦お休み、今回はグレアム先生のちょっといい話~~な、外科医エリーゼ第8話である。
 ぶっちゃけ無敵の主人公様にフォーカスあたってない瞬間が、一時たりともない極端な作りを続けると思っていたので、サブキャラに脇目を振ったのは意外……であり、嬉しくもあった。
 こうして話数を割り振られるとキャラの人となりも解るし、主役の椅子に座っていては見えないエリーゼの顔も見えてくるしで、やっぱお話としては時折、こういうエピソードが必要なんだなと思わされた。
 転生医療無双でスカッと一発! な態勢をとりつつ、展開にヤダ味が薄いのはこのお話の良いところだと思っているが、その副産物として出てくるキャラが軒並み善良で、こうしてスポットライトがあたっても素直に飲み込めるてのは、なかなかに面白い作りであった。
 エリーゼ一人が命の問題に本気なわけではなく、彼女の実力にぶん殴られて即座にオヒキポジションに下がった自称凡才も、自分なりの業を背負って医業に励んでいる同志だと描かれたことで、メインテーマに奥行きが出たのは大変良かったね。

 天下無敵のスーパーお嬢様だと身元がバレて、親しくしてくれたグレアム先生との切ないすれ違い……って展開なんだが、オチは『字が汚い』というスーパーギャフンで罪がないものであり、ここらへんのフワッとした着地もまた、このお話らしい味わいだった。
 革命で王宮ボーボー燃やされる未来がありうるくらい政情不安定だし、色々良くない疫病とかも流行する世界ではあるのだが、登場人物は全体的に血生臭くなく聡明で、主役にイヤなこと全然してこないマッタリ感は、不思議な落ち着きを見ている側に与えてくれる。
 ヌルイっちゃあヌルイんだが、『死にかけ人間を助けて転生者の凄みを見せつけるぜ!』つう話の基本と合わせて、違和感というより心地よい手触りにまとまっていて、僕は好きだ。
 嫉妬もあると認めつつ、あくまで敬意と連帯感をベースにエリーゼへの感情をまとめ直して、共に進んでいく決意を固めてエピソードが終わる読後感は、爽やかで大変いい。
 全編通してこのこの喉越しなんで、ジャンルに苦手意識がある自分でも飲めてるんだろうなぁ……とは思う。

 

 転生無双モノってその性質上、主役に物語リソースが極端に集中する傾向があると思っているわけだが、僕自身は横幅広く風通しが良い物語を好む傾向があって。
 作品世界全体が主役に都合よく設計され、何もかもがお膳立てされて気持ちよく快楽原則を満たす要素は、このお話にもちろんバリバリある。
 その上で、無双の手立てとして選んだ医術が根本的に他人を打ち負かすためではなく、活かすために存在していることで、鼻っ柱をへし折った相手の尊厳が別に土に塗れず、素直に同じ道を進んでいけるってのは、楽しむ上で大事なポイントだ。
 天才エリーゼ様を一番近い場所でワッショイする仕事を背負ったグレアム先生が、その才に打ち負かされつつむしろ奮起し、かつて家族を奪った病魔に今度は打ち勝って、共に年老いるまで暮らしてきた最後の家族を守れる今回のお話は、サブキャラなりに背負った物語を大事にした展開だと思った。
 間違いなく主役の引き立て役なのだが、だからといってそれだけがグレアム先生の役割ではなくて、彼なりに意地も願いもあって、それが叶う手助けをエリーゼがしっかり出来ると書いたのは、主役をもっと好きになるためにも良い手だった。

 あと展開にバリエーションを付けて、おんなじ味が連続しすぎて舌が痺れないうえでも、エリーゼから焦点をズラして他キャラ主役の話をやったのは、やっぱ良かったなと思う。
 無双を用いた快楽原則に忠実なお話を押し込みすぎると、同じ展開が連続しすぎ同じキャラクターが話の中軸に立ちすぎるため、お話の中に風が吹かなくなってくると思う。
 そこで目先を変えて話をかき回す意味でも、主役以外が主役になるお話があること、それがいい話であることは大事であろう。

 

 話数的にも2/3、いいタイミングでいいキャラにいい話を持ってきたなと思える、良いエピソードでした。
 グレアム先生は最序盤でぶっ飛ばされるワッショイ担当ながら、極めて真面目に医業に勤しむ好人物。
 そんな人を今回の主役に選んでくれたのは、彼が好きな自分としては大変嬉しかったです。

 こっから試験に向けて小さなエピソードを積んでいくのか、とっとと片付けて別の山持ってくるのか。
 そろそろアニメとしてのゴールが見えてくる話数、今後アニメがどう展開していくかも気になるところです。
 次回も楽しみ!