犬飼こむぎ……遂に念願の学舎に立つッ!
魔法の国の都合の良い奇跡で、戸籍やら学歴証明やらをなんもかんも蹴っ飛ばし、怒涛の転入を犬人間が果たす、わんぷり第9話である。
まー家で悶々とし続けても、学園コメディがスムーズに回らねぇし、なにより面白くねぇ上にこむぎ最大の願いを無下にすることになるので、ゴリッと都合の良い横車押して一気に転入まで行ったのは、むしろ良かったかも知れねぇ。
バトル要素の排除といい、わんぷりはかなりダイナミックにいろんな挑戦をしておるわけだが、それに必要な割り切りが学業の下地を整えるうえでも出た……って感じか。
かくして転校なったこむぎであるが、何しろ数週間前まで物言わぬ畜獣だったわけで、中学生がもっているべき慎みや社会性は一切なし!
犬由来のフリーダム&パワフルが、学校という日常と衝突し楽しく弾けるコメディ回、全体的に元気が良くて明るくて、とっても良かった。
アニマルタウンは大変成熟した街なので、こむぎの幼さをクラスメイトが嘲笑うこともなく、というか悟くんの胃が限界になりそうなフォローもあって、こむぎの学業初日は明るく楽しく過ぎていった。
人間成り立て、な~んも理解ってねぇこむぎを主役にすることで、幼い主役が色んなことをゼロから学んでいく物語ってのが、わんぷりの大きな柱なんじゃないかと僕は思っているわけだが、『学校楽しい、いろはと一緒楽しい!』と心弾ませるこむぎの姿は、新たな環境に飛び込んでいくメイン視聴者層に親しみやすい、ポジティブな希望をお話につれてきてる感じもある。
憧れのお姉さんたちを主役に据えた”プリキュア”の基本形を、ずらして新機軸を模索しつつ、よりダイレクトにプリキュアらしいメッセージを、コミカルに元気に伝えていく……というか。
そんな前向きな描き方を支えてくれたのが、こむぎの身体能力に真っ直ぐライバル心を燃やす、猪狩翔くん。
いろはお姉ちゃんと超仲良しなのはいままでどうりとして、せっかく新しい環境に飛び込んだんだから新しい友達が生まれて欲しくて、中学生にしてはトンチキなこむぎの良いところ……『ボールを取るのが巧い』だけ見て、強めの感情をぶつけてくれる彼と知り合えたのは、メチャクチャホッコリした。
彼が『犬飼こむぎ……スゲェヤツだぜ!』と言ってくれるおかげで、現状明らかに適正も知見も足りてない学校生活に、こむぎがはじき出されていない感覚を見てるこちらも得ることが出来る。
ガルガルを癒やして帰り道、いろはお姉ちゃんに釘を差されたように、学校は楽しいことばかりではないけども、楽しく頑張ると願い続け、実際行ってみて心に決めたこむぎの願いは、一年間の人間世界留学を経て形になっていくだろう。
今はハチャメチャトラブルまみれでも、ちょっとずつ何かが出来ていくようになる姿ってのを書ける余裕が”プリキュア”にはあるはずで、犬であり幼子であるこむぎが『大好き』と『楽しい』を武器に、学校生活を自分のものにしていく歩みを、明るく見守れる。
そういう予感がしっかり育まれて、とても良い転入初日だったと思う。
犬と人間、動物と児童。
こむぎはどの属性に寄せて描くか結構難しいキャラだと思うが、今回はいろは大好き小型犬の顔がガンガン表に出てきて、最高に可愛くありがたかった。
目を輝かせて新しい楽しさに向き合う姿も、天真爛漫にオトボケぶっこむ顔も、念願のフルタイムいろはシフトに幸せそうな表情も、どれもこれも良かった。
純粋で元気なこむぎが、その善良さを曇らせることなくピカピカ輝いている姿を見ると、コッチも幸せになり『もっと幸せに生きな……』と思わされてしまう造形は、わんぷり最大の武器だなぁと再確認。
ズルズル服を引きずってる犬モードのおバカ感も、見知らぬ学校に興奮して駆けずり回っている人間モードも、その全てが”犬飼いろは”過ぎてマジ良かったです。
ドタバタコメディ色が強い今回、バトルもあんまハードコアな味わいにはならず、アヒルさんを相手にどこかのんびりした味わいに。
奴らは水辺でバシャバシャグワーグワー、自由気ままに振る舞っている姿が良いので、そういうアヒル特有の”善さ”がしっかり描写されてたの、大変良かったです。
アヒルガルガル、口元がぷにぷに余りがちで、怪物化してんだけども愛嬌あるデザインなの良かったな……。
学園生活においてもメチャクチャ色んなアシストしてくれてた悟くんが、作戦参謀としての仕事をバトルの中でも果たしており、良い感じに存在感が上がっていた。
感情のブレーキがない暴走超特急共に、なかなかついていけない体力の無さも含め、なかなかのチャーミング・ボーイで嬉しい。
彼が理性的で落ち着いたポジションを一身に背負うことで、物わかりの良い大人しさでお話が縛られることなく、頑是なく暴れる力強さが生まれてもいるわけで、苦労人ではあるが大事な立ち位置だ。
野生児こむぎは勿論、いろはちゃんもかなりパッション重点の生き方してるので、話を本筋に戻すハンドルを悟くんが握ってくれないと、脱線したまま戻ってこないわけだな……。
不思議な奇跡と話の都合で、人間の形を得て中学に通えるようになったこむぎだが、そこら辺の事情は他人にはなかなか話せない。
苦しい嘘で色々取り繕いつつ、ハプニング山盛りの中学生活が、苦労するだけのことはある夢の形なのだと、結構しっかり伝えてくる場面が多かったのも良かった。
遊ぶだけ遊んでおねむになっちゃった(可愛い)後、目覚めて『夢……?』と尋ねるのは、ここまで何度もいろはと手をつなぎ一緒に走る夢を、見てきたからなわけで。
純粋な幼子がそんな風に願ってきたものが、実際に叶うのは……まぁ色々苦労とか都合の良さはあるけども、間違いなく良いことなわけで。
今後ドタバタ転がっていくだろう、こむぎの学園生活が根本的に明るく楽しく、正しいものであると示すスタートになって、大変良かったと思います。
やっぱよ……ガキが望んでること、叶えてやれる世界のほうが良いよ……。
手のかかる妹が好き勝手暴れるほどに、”姉”の優しさ頼もしさがしみじみ感じられるのも、こっからの学園生活楽しみなポイントですが。
そういう犬飼姉妹の距離感とはまた違った尊さが、ビリビリ渦を巻いている猫屋敷の女たち。
次回はその起源が描かれるようで、コッチも大変ワクワクします。
自由気ままなようでいて、コミュニケーションと自己像確立に難しさを抱える”妹”を見守り見捨てないユキが、なぜ運命を共にするようになったのか。
次回も楽しみです!