イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

となりの妖怪さん:第5話感想ツイートまとめ

 となりの妖怪さん 第5話を見る。

 『ほのぼの田舎暮らしやヒューマンドラマ、異能アクションなどなど、色んなジャンルを横断してきたこのアニメ…今回は並行世界ホラーだっ!』つう感じの、幾度目かの思いの外ヤベー世界観を、トゲトゲ化け狐・百合さん心の旅と重ねながら堪能するお話。
 猫又が新生したら行政書類が必要な世界なんだから、そらー時空の歪みが発生してたら公的機関が対処するんだろうけど、めっちゃしっかりした組織っぽくて面白かったな、時空間調査局。
 ほんわか一本でやると思いきや、人生の苦みや底しれぬ恐怖もしっかり入れ込んで、噛むたびに思わぬ味がするお話で、おもしれーわ”となりの妖怪さん”。

 

 お話としては百合さんの迷い道フラフラ(ぶちおくんとばっちり)と、妖怪が宇宙飛行士になる世界の不安定な破局が並走し交わる感じ。
 相当重たいモン抱え込んでんだろうなぁと、思わされる描写が多かった百合さんだけども、いざ踏み込んでみたら遠野の名家のクソ因習と、愛憎半ばする複雑な心境がネトネト絡み合ってて、想像以上に重たかった。
 花や弓など、詩的なモチーフを上手く活用して、故郷を離れ家を捨てつつ、忘れようとするほどに何かが軋む複雑な心を、しっかり描けていたと思う。
 こういう暗くて重たい情緒も、田舎のほんわか風味と同じくしっかり描ける絵筆の多さは、やっぱり良いなと感じますね。

『テメー幸せ家族とガッチリ心繋げやがって! ムカつくんだよ!!』と、マジいわれのないとばっちり食らったぶちおくんは災難だけども、そういう人間特有の心の揺れにあんま慣れてないだろうに、両の足ですっくと立ち上がり言うべきと思ったこと震えながらちゃんと伝えるの、真っ直ぐで良かった。
 僕はこのお話、妖怪一年生ぶちおくんの人生学び旅として見ている部分が大きいので、楽しいことも辛いことも、頑張って噛み砕いて何でも糧にしていく頼もしさ、でも瑞々しい心が震えて泣いちゃう姿が見れると、大変いい気分になる。
 コップに顔突っ込んで泣いてたぶちおくん、可愛かったなぁ…やっぱ好きだ、梶くん声の純真眉毛猫又。

 おそらく遠野の名家と繋がりが深かろう、大天狗多善防さまが普段の気の良いおっちゃんっぷりを引っ込めて、悩める若人に向き合う人生の先輩の立ち姿を、雄々しい弓道着で見せてくれたのも良かった。
 世界観レベルでもそうなんだが、一見『こういう人!』と思い込んだ所を気持ちよくひっくり返して、キャラの多彩さを見せてくれるサプライズが気持ちのイイ話だ。
 めっちゃピリピリしてる女狐相手でも、落ち着いた態度を崩すことなく受け止め道を諭す姿は、世界の危機に立ち向かう鎮守の力強さとも繋がっていて、里の長老の存在感がグッと増す回だった。
 この世界の天狗は、マージで平和と秩序維持のため働きまくってて偉いね。

 

 百合さんのこころ旅と並走する形で、パラレルワールドと容易に繋がる”妖怪のいる世界”の危うさも描かれていた。
 なにしろ妖怪がキャスターやら宇宙飛行士やらやってる世界なんだから、謎めいた虚数の力もしっかり報道され、研究され、対策されているのは当然か。
 謎めいたドッペルゲンガー現象にもしっかり対応して、時空漂流者救助を優先して頑張ってくれる時空研究所、他の作品だとあんま見ないオカルト組織で面白かった。
 異能や異形が社会の根っこに組み込まれ、なお秩序と平和を保っている世界がどんな構造をしているのか、思いの外しっかり作り込んでいるのがだんだん見えてきて、作品の幅が広がってきた感じね。

 優しい妖怪たちが人に当たり前に混じっている、この世界にすっかり慣れていたので、”神無きの世界”から迷い込んだ連中が異形にビビってるの、新鮮ながらなんか寂しい反応だった。
 あっち(あるいは”こっち”)の世界からすれば当たり前のリアクションなんだけども、オークや一本だたらは怯えられるべき化け物なんかじゃなく、日々の仕事を普通に頑張る当たり前の”人間”なわけで。
 逆に普通に暮らしていてはありえない世界交錯によって、色んな人の努力で維持されている”神ととなりあう世界”の善さが、改めて確認された感じもあった。
 でもあっちの世界だと、むーちゃんのお父さん生きておるからなぁ…。

 パラレルワールドに迷い込んだ百合さんが、『ここは自分の居場所じゃない』と決定的に悟るのが、故郷ではもう失われてしまった、むーちゃんとお父さんの幸せな姿を見たからなのが、彼女の来し方と重なって、切なく良かったです。
 唐突に故郷から切り離され、当たり前の仲直りも二度と出来ないような状況に追い込まれて、ようやく心のわだかまりがほぐれ、今するべきこと、したいことが見えてくる。
 なかなか散々な災難だったけども、こういう大きな事件が百合さんを揺さぶってくれないと、あんだけこんがらがった糸は解けなかったんじゃないかな、と思う。
 あるいは災難を糧にできるよう、抱きとめてくれる人たちがいればこそ…か。

 

 なにしろ世界規模の災厄が顔出してきたので、もうちょい引っ張るかと思いきや特殊EDも活かして上手くまとめて。
 最後は百合さんの旅が行き着くべきところに収まった、爽やかな心地よさでしっかり終わらせてくれて、とても良かったです。
 バトルとかパラレルワールドとか、『えっ!?』と思うような飛び道具も顔を出すんだけども、しっかり人情物としての主柱を打ち立てて、”となりの妖怪さん”らしさを確保して色々やってくれているのは、ブレがなくてとても良いです。

 結構ヤベー世界で、それでも穏やかに微笑むために。
 人と異形は手を取り日々を生きていく。
 そうして見つけた道の先、何があるか。
 次回も楽しみ!