イマワノキワ

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ブルーアーカイブ The Animation:第10話『唯一意味のある場所』感想ツイートまとめ

 ブルーアーカイブ The Animation 第10話を見る。

 すべての咎を背負って謎の顔面バキバキ携帯画面野郎に身売りぶっこいたホシノを、追って銃取る対策委員会! 便利屋68もいますぜ!! という回。
 景気よく大火力がぶっ放されまくり、悪いボスが悪いロボに乗って大暴れするアクションは大変に気持ちよかった。
 しかし銃弾ぶっ放してどうにかなりそうな領域と、暴力でカタがつかない大人の領分が入り混じってて、世界律がどんな塩梅で調整されているのか、一層解らなくなった感じもある。
 美少女がスナック感覚で鉄砲撃ってる時点で、あんま気にしちゃいけないコトなんかもしれないけどね…。

 

 このお話の子ども達は純粋で真っ直ぐで、可愛く無力な存在として描かれているように思う。
 経済や政治、世界のルールを定めて自在に操る”大人”の都合に振り回される彼女たちは、しかし各学校を自治単位、生徒会を政府(というより”王室”)とする統治機構の当事者でもあって、お飾りの正当性は生徒側にあるのに、世の中を動かす実権は軒並み学園の外の大人にあるという、捻れた構造がアビドスに重くのしかかっている。

 自分たちが望むことを望むまま、自由に叶えられるはずなのに借金に縛られ契約にやり込められ、衝動のまま突っ走っても根本的な解決が掴めない状況の中で、少女たちはなかなか世界を俯瞰で見下ろせない。

 それは『これが正義、これが法』と定める大きな権力と倫理があの世界から消滅してて、一個人のエゴに縛られた狭い一人称だけで社会が動いている(あるいは適正に動けず、機能不全のままコーポレート・パンク的に実質統治されている)事と、繋がっている感じがある。
 彼女たちが願い求めている、隣人を大事にしお互い笑える当たり前の世界が全く間違っていないと、ちゃんと保証してあげる存在…個人としての大人、あるいは集団としての社会が成立していない中で、しかし子ども達は極めて真っ当に友情を育み、お互いを慈しみ、クズに横槍入れられてその願いが叶わない。
 個人の中にある正しさが、世界全体の正しさとして機能しない。

 ここに唯一、俯瞰的な視座から絶対的正解を突き出せる”正しい大人”が先生=プレイヤー・キャラクター…なのかなぁと思いながら話を見てきたが、連邦捜査官たる権限や職務を前に出してくる場面もないし、読みを外した感じも結構ある。
 全ての価値観軸が砂に飲まれ崩壊した、アナーキー&アモラルな世界観と思いきや主役周辺を包んでいるのは極めてギャルゲ的な平和で当たり前な日常であり、行使する暴力には取り返しのつかない加害性が付与されず、でもライトでポジティブなその手触りが打ち砕けない、イヤーな生っぽさが壁となって行方を塞ぐねじれ。
 正直どうなれば道が拓くか、ここまで見てもなかなか解らない。

 

 社会全体の大きな正解を、暴力を背景にした法執行や社会成員のコモンセンス形成を通じて保証する柱が、機能していないアビドス。
 そこでも正当性の形骸はまだ残っていて、『生徒会が既に存在しない』という事実を逆手に取られて、大人たちはアビドス実効支配の足場を固める。
 何が正しいのか、どうすれば正しさを力に変えていけるのか、全く見えない状況でアヤネが吠えるのは極めて正当だと思ったが、便利屋が巻き起こす暴力の嵐でこの問いかけはウヤムヤにされ、作品からアンサーが返ってくることはない。
 この宙ぶらりんな感覚は、例えばホシノ奪還作戦をコネてる間にPMC襲撃という問題が発生して、その対処に赴く流れにも感じる。

 現実には実現が難しい、『正しさが厳しい試練を乗り越えて成就し、だからこそ大きな力を得る』という相関関係は、『そんなに都合よく行くわけ…』とヒネつつ、フィクションを見る多くの人たちがどこかで期待している因果だと思う。
 アビドスの子ども達も極めてピュアにそんなお話を信じていて、しかしホシノ先輩は彼女たちに希望を残すために己を売っぱらい、悪を殴ってくれる大きな装置は機能せず、自分たちだけで好きに正義を執行する強さは、顔が見えたと思ったら横から殴られ安定しない。
 個人の感情と暴力と連帯だけを支えとする、極めてラディカルなアナルコ・サンディカリズムを答えにするには、彼女らの世界学生サイズだしな…。

 

 『砂にまみれたクソッタレな世界で、私たちの友情だけが答えだッ!』と孤高の剣をぶっ刺すには、卑近で生臭い『大人のやり方』が力を持ちすぎていて、じゃあ賢く悪くなっていくことを肯定してるのかっていうと、当然そうではない。
 シロコたちなり、この作品なりに世に満ちる理不尽に負けないために、一体何が答えとなるのか、そろそろアニメの幕も引かれようというのに鮮明でないのは、まー弱いなぁ…と思うわけだ。
 ホシノをヒロインとした超絶純情主義にはしっかりときめくパワーがあって、おそらくこれが答えだって話なんだろうけども、借金と銃弾の生っぽさが”正解”を遠ざけちゃってる感じもあって…でもそこが”味”だしなぁ。

 ホシノ消失に動揺する後輩に、頼れる姿を見せられないシロコ”先輩”の未熟さとか、それを乗り越えてホシノの遺産を片手に戦い抜く決意とか、そこにちゃんと体張って手を差し伸べれた先生の活躍とか、アガる部分は多々あった。
 その上でお話が出す答えが、どういうキャンバスの上に乗っかるのか、未だ迷わされる話でもあったなぁと思う。
 これ多分作品に求めるべきじゃないものを勝手に僕が求めてて、そこで生まれたエラーなんだろうなぁとは思う。
 『そういうモンだ』で飲んでおいたほうが、あんま引っ掛かりはなかった要素なんだろう、ここら辺。
 しかしまぁ、気にして10話まで見ちゃったんだからしょうがねぇ。

 

 つーかホシノを引っ張ってったヒビ割れヤローがどんな存在なのかも、そいつが莫大な借金肩代わりするだけの値段がなんでホシノに付いてるかも、まーったく解らんので困っちゃうよッ!
 お話すごろくの進み方がゆったりなんで、ここら辺を下支えする裏設定の開示に手がつけれてないのか、特に理由はないのか。
 それはさておき、ユメ先輩との思い出を大事にするために”副会長”にとどまってたことが、大人の汚ぇ簒奪を許す隙になっちゃってたホシノはかわいそ可愛いだった。
 ガキの純情を踏みつけにする手つきが、結構エゲツなく鋭いのは好きなんだよなー、このアニメ。
 …それ故ミスマッチな毒ガスが、それなり出ているとも思うが。

 超悪そうな重火力パワードスーツをボコって、アビドス接収に一段落ついたのはいいが、ホシノは売られてるし根本的な”詰み”は解決してないし、さてはてどうするのか。
 営利企業がやべー横車押しまくって、アビドス欲しがる理由も良く解んねぇしな現状ッ!

 

 色々気になるところもありますが、こっからの終盤戦でしっかり応えてくれるのか。
 楽しみにしつつ、次回を待ちたいと思います。