イマワノキワ

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NieR:Automata Ver1.1a:第13話『reckless bra[V]ery』感想ツイートまとめ

 NieR:Automata Ver1.1a 第13話を見る。

 『可哀想なヤンデレアンドロイド一体ぶっ壊した程度で、地獄が終わるわきゃねーだろッ!』と、ギガアダム撃破の余韻を軒並みぶっ飛ばすような、衝撃的な第2クール開始となった。
 処刑者たる本性を剥き出しに、幾度目か真実にたどり着いた9Sを幾度目か殺す”2E”。
 彼女の本当の名前が解るのと、戦争の記号ではない彼らだけの名前で”ナインズ”を呼べるようになった、こころの揺らぎが重なるのがなんとも切ない。
 それが一回だけの悲劇ではなく、繰り返し繰り返し置き続ける宿命だと解るのが、死をリセットして量産される機械の悲しみを、強く増幅させる。

 

 

画像は”NieR:Automata Ver1.1a”第13話より引用

 曲も映像も凄すぎたんでまずEDの話をすると、戦の装束、ヨルハの眼帯を脱ぎ捨てて生身一つ、月下の砂浜で祈るように踊る2Bは、天女のように穢れなく見えた。
 9Sの残骸に思いを馳せた後、彼女はショールだけを残して月光の中に消えていく。
 極めて示唆的な”終わり”であるが、羽衣伝説が常に妻恋とともにあることを思うと、人間モドキがその身に宿した恋の末路が、こっちの覚悟通り相当ロクでもない顛末にたどり着きそうで、なんとも苦しい。
 全てが淡い光の中に消え果てても、天女を天女たらしめる飛天の衣だけは消えずに残る。
 その残響が、消滅の虚しさをより際立たせる。

 いつも通り2Bスキスキ過ぎな9Sのアプローチに、ツンツンクールな対応…と思いきや、確実になにかが積み上がって変わって微笑ましい、いつもの二人の歩み。
 大きな戦いを乗り越えて、その報酬を受け取るように”人間らしい”幸せが少しは続くのかと思いきや、物語は一気にアクセルを踏んでバンカーの暗い真実と、その奴隷として2Eが繰り返してきた愛の切断を描く。
 ホントなー…『ずっとそうやって、世界で二人きり睦み合っててくれ…』と思えるような、幼く純粋な幸せをしっかり結晶化させた上で、一回砕くので飽き足らずそれが幾度も繰り返されていたのだと示すの、良く効く一発でビックリするよ。

 

 死んでもバックアップから記憶を再生し、新しい身体に移し替えるアンドロイドの不死は、ここまではいかにもゲーム的な”Continue”の色合いを宿しつつ、機械戦士の特権…あるいは強みとして描かれてきた。
 しかし死すら終わりにならない永遠を、愛すら救いにはならない定めの重たさを描くと、祝福は反転し呪いに変わる。
 2Eは何度でも9Sと出会い、戦いの中でお互いの魂に触れ合い、眼帯を外して自分と世界の真実を見つめる。
 9Sは最初から顕な2Bへの愛に突き動かされて、何度でも真実にたどり着きその度殺され、白紙にリセットされても愛はけして消えず、またもう一度戦いの旅を始めなおす。

 幾度も終わって幾度も始まる、シジフォスの苦行めいた愛と死のダンス。
 それは人間のマネをして、目的もなく奇妙な生活を重ねていた機械生命体…2Bたちの”敵”として設定されていた存在のグロテスクと、極めて近い。
 前回2Bが疑念を向けていた、アンドロイドと機械生命体…あるいは神たる人間を隔てる薄い壁は、残酷な真実が暴かれたことでもはや崩壊し、世界を切り開いていく主人公の特権的な立場は、永遠に繰り返す終わりのなさに飲まれていく。
 機械も命も、皆出口のない場所に立ち止まり続けている。
 その停滞を壊して先に進めるのか、繰り返しを止めて一回性の死に身を投げるのか。
 先は全然読めない。

 

 

 

 

画像は”NieR:Automata Ver1.1a”第13話より引用

 『んおぉぉ…ととにゃん最強ッ…』となる廃墟の美術は相変わらず冴えに冴え、2Eたちの旅路が、人間が消え去った世界が美を失っていないことを改めて教えてくれる。
 本当にこの作品の廃墟美は圧倒的で、猥雑な人の営みを断ち切ったからこそ存在する荘厳を、毎週浴びれて幸せである。
 それは忌避するべき死が生み出す美であり、それぞれ個別の方向へひた走る、混沌たる命に満ちていては感じられないものだ。
 ヨルハの眼帯は、死神の装束なのかもなと、ふと思わされるような静謐のスケッチを、二人は静かに進んでいく。

 今回改めて二人の旅に付き従って、バンカーもまた巨大な廃墟なのかもな、とふと感じた。
 そこにあるのは命なき機械ばかりで、実りのない足踏みを艶々に続けながらその虚しさに気付かず、芽生えた何かを踏みつけにしながら、ただそこに在り続ける。
 そここそが戦士たちの頂点であり、守るべき正義の居城なのだと眼帯の奥思いこむことで、ヨルハたちの世界は成立しているが、しかしそこがなにもない空虚な廃墟であるのなら、彼らが生きる戦いもまた、命なき虚しいダンスでしかない。
 そういう、実はとうに終わってしまっている場所の真実に全身で突っ込んでいって、何もかもがようやく終わる話に、第2クールなりっそー…。

 

 

画像は”NieR:Automata Ver1.1a”第13話より引用

 9Sがチャラく2Bへの愛をささやき、鋼の戦士がつれなく受け流す。
 いつも通りのアレソレの中に、ここまでの物語と戦いが確かに積み上げた執念と感情が確かに焦げ付いていて、殺し合う定めを未来に据え付けながら、人形たちは極めて”人間的”に愛しさに立ち止まる。
 9Sが拾い上げた金貨がヨルハの眼帯に当たり、光に刃をせき止められ定めに抗う気配が……愛の勝利の予感が、旅の中に弾む。
 それが何もかもを跳ね除ける絶対の正解になってほしいと、”人間的に”願いながら見てたから、かなりあっけなくあっという間に、赤い血を流しながら二人が殺し合い一人が生き残ってしまう決着には、愕然としつつ納得した。
 こうなっていくお話ではあるし、ここは始まりでしかない。

 たかだか一度愛を殺した程度で、全ての物語が終わってくれるような生ぬるいシステムでこの戦争が駆動していないことは、既に幾度か描かれている。
 生身の人間ならば肉体が砕かれれば全てが終わってくれるという、破滅的な救いすら永遠をプログラムされた人形にはなく、彼らは何度でも繰り返す。
 確かに第1クール、戦いの果て二人は眼帯を外し世界のあるがままの形を見たのに、それは幾度も封じられて始点に戻され、何もかもがリセットされてしまう。

 果たして本当に、2Eの心は戦う機械以外の機能を封じられて真っ白なのかと、ここまで見てきたなら疑いもするが。
 積み重なる愛の死骸を、忘れられないという苦行。

 

 

画像は”NieR:Automata Ver1.1a”第13話より引用

 それを人間が死に絶えた美しい地獄の中で、延々積み重ねているのだとしたら……。
 司令が事の顛末を見届けた後、展開するファイルには沢山の悲劇が積み上がっていて、そんな真実を示唆してくる。
 いやー…ヨルハの運用のされ方からすりゃ、そらE型は必要だろうし機能もしてるんだろうが、感情というバグを消去するワクチンそれ自体が、愛というウィルスに耐性がないのは致命的欠陥だよなぁ。
 見てりゃあ解るじゃん9Sが2B好きすぎで、2Bちゃんが9S好きすぎなのはさぁ!
 向いてないこと押し付け過ぎなんだよなぁ、人類絶滅後の支配システム!

 この苦行に司令も飽き飽きしているのか、最後の戦いを告げる表情は苦く重い。
 終わりがなく不変であるという、機械特有の属性がどれだけの呪いであるのか、今まで以上に深く突き刺してきた後、物語はどこに転がっていくのか。
 アダムとの戦いに幕を引いても、何も終わりじゃなかった旅の残酷な終わりの、先にまだ続いていく物語。
 まー美しくて残酷で、素敵なおとぎ話になるのは間違いなさそうだな…腹筋鍛えておかなきゃ。
 絶対ボッコボコに殴り倒してくるでしょ、間違いなく。

 

 『いやもう限界でしょ、2Bちゃんもヨルハもシステムも…』て感じだが、軋む輪廻の行き着く先に待つのは、再生か終局か。
 覚悟キメさせてくれる、良い第2クール開始でした。
 次回も楽しみ!