オカルト業界新入生な二人が立ち向かうには、あまりに凶暴なターボババアに対抗するべく、スゲェババアがやって来た!
ハイテンション&ハイスピードで突き進んできた物語が少し落ち着き、霊能修行や関係性の整理に勤しむ…と思いきや、待ったなしな地獄の追いかけっこへと駆け抜けていく、ダンダダン第3話である。
強敵撃破に必要なヒントだけは与えつつ、圧倒的強キャラである星子に勝敗を委ねず、オタクとギャルの連合軍がエモく出陣していく流れは、このお話らしいスピード感だった。
ジャンプ定番の修行パートで停滞するより、足場だけ整えて一気に走るの、元気が良くていい感じだね。
とはいえ落ち着いた調子でモモちゃんなりの家族愛や純情、オカルトと戦う技術の下地づくりなんかを、しっかりやっている回でもある。
地面に書いた陣や貼り付けた呪符なんかで、土地神の力を借りて魔を滅する結界術。
最初の戦いでは自分のテリトリーに引きずり込み、圧倒的なパワーを見せた星子の術は、境界を超えた場所に本拠を構えるターボババアを滅するには不向きで、結局はモモちゃん自身が戦うしか無い。
体力ないオタクくんも、筋トレに勤しむ余裕なく自分のための戦いに向き合い、イカれた世界へと自分の足で突き進んでいくことになる。
暗い青春に足踏みしてたオカルンを、苛み強くもする試練が”ターボ”ババアなの巧いな…。
表向き反目し合っている祖母と孫だが、異能の力に目覚め誰かを守るためにそれを使う心は同じで、常人に見えているのとは違う場所に目が開けているのも、また共通している。
色んな面白さを贅沢に横断していくこのお話、安全安心な当たり前からはみ出してしまった能力者が、それでも人間らしく戦っていくという異能バトルの文法も、結構しっかり踏まえて話を転がしている。
星子が悪霊トンネルの奥に見ているものと、モモちゃんが覚醒したオーラの感覚は、結界術と超能力…オカルトとしてのバックボーンは違えど、どちらも現実と重なる”あちら側”へと繋がっている。
この「自分だけには見えてしまっているが、他人には共有されないもの」を素直に語ると、的外れな占いをブン回すインチキ占い師という、星子のペルソナが生まれる。
むしろその世評を結界に使って、マジでヤバイ領分に一般人が首を突っ込むのを防いでる感じも漂うが、ババアの心ギャル知らず、祖母譲りの侠気でもってモモちゃんは、命がけの霊能業界に首を突っ込んでしまった。
ならば”解る”もの同志、教えれるだけを教えて生き残ってくれることを祈るくらいしか、テリトリーに縛られた結界師にはしてやれることがない。
なかなかに切ないババ心が、蓮っ葉で破天荒な態度の奥に滲んで、星子はやっぱり良いババァである。
「見える/見えない」という境界線はモモちゃんと星子だけに通じているものでも、オカルトの領域だけにあるわけでもない。
むしろヤベーオカルトに傷つけられぶっ壊される、家族の絆や甘酸っぱい恋心なんかにこそ、合わせる顔がなかったり、なかなか目を合わせられなかったりする複雑な心理が、心地よく弾んでもいる。
ウゼークソババアと祖母を遠ざけ、その目を見れなかったモモちゃんは、星子が見ていた世界を目の当たりにしたことで、素直さを取り戻し頭を下げる。
その時初めて、見ようとしなかった祖母の表情が見えてきて、孫の気持ちと確かに繋がる。
自分と他人を隔てる結界を、解いて心を通わせる日常的なオカルトがそこにはあるわけだが、オカルン相手にはこの結界を、モモちゃんはバタンと閉じることになる。
クソ彼氏に散々翻弄され、純情を弄ばれてきたモモちゃんは恋の予感に臆病になってる部分もあるわけだが、人付き合いドヘタなオカルンもまた、閉じられた扉を明けて相手に近づく手段は、まだまだ良く解らない。
どこに進んでいったら適切に壁を壊し、お互いの顔をちゃんと見て間を繋げられるのか。
オカルト業界新入生たちは、そういう日常的な結界術もまた、イカれたバトルの中で学んでいくことになる。
星子とオカルン、両方の間に立ってワーワー騒がしく、ももちゃんは一瞬の安らぎに身を置く。
そうすることでなかなか素直になれない年相応と、その奥にある素直な可愛さが同時に滲み出してきて、モモちゃんをもっと好きになれる回だったなぁと思う。
そして「見る/見れない」の境目は青春ど真ん中のオタク少年にももちろんあり、モモちゃんが心の高鳴りに耐えかねて思わず閉じてしまった扉は、せっかく手に入れた関係の喪失に怯える彼の視線を伏せ、白く光る眼鏡の奥に生身の気持ちを隠させる。
他人と友達……あるいは友達と恋人の間を隔てる、社の中と外の境界線の、ちょうど真上。
青春のまん真ん中に立って、ギャルとオタクは凄くさり気ない会話を重ねて、ちょっとずつお互いを知っていく。
満面の笑顔でオカルンの心に近づいたモモちゃんの笑顔が、何かとネガティブな少年の顔を挙げさせ、視線を開く演出が凄く丁寧なの、とても良かった。
通わなかった視線が交錯し、繋がっていく表現をキャラを変えて折り重ねていくことで、味の濃いオカルト奇人たちが皆同じ気持ちと難しさを抱え、だからこそちょっとずつ近づいていこうとしてる様子を、見てる側に手渡せる回だったなぁと想った。
やっぱこういうベタ足の人間味を、アップテンポな展開の中ちゃんと積み重ねれているのが、このアニメの良いところだ。
人間三人は視線の通わぬ遠さを、ワイワイ騒がしい日々の中確かに重ねて生き延びる力を得ようとしているわけだが、最悪の地縛霊と融合したターボババアは、そんな幸せを侵食し破壊しようとする。
最初のバトルでは星子がモノクロームの怪異領域を、自分のフィールドに引きずり込む結界術でもってカラフルな人間の世界に書き換えていたわけだが、一瞬の平穏をぶち破る二度目の襲来においては、本来閉じられているべきトイレの境界線をぶち破って、怪異のテリトリーがオカルン経由で拡大している。
本来ならば見えざる領域へ遠ざけられるべき、呪詛と破滅に満ちた場所へ、子ども達は進んで行く。
その無事を祈ることしか出来ない最強の除霊師の、破天荒もケレン味もない必死な祈りが、なんとも染みるエピソードである。
ターボババアがトンネルの地縛霊との複合怪異であると解ったこと、星子の霊能が結界術ベースであることで、やばすぎ強すぎな光と闇のWババアが、”領域”という要素で対照をなすのは面白い構図だ。
敵のテリトリーに引きずり込まれれば絶対に勝てない戦い、星子は「追いかけっこして、こっち側に引きずり出せ」というヒントを孫に与える。
怪異が見える領域と、見えない日常。
他人と自分の心をちゃんと見れる場所と、思わず目を逸らしてしまう場所。
色んな境界が描かれた今回を経て、加速していくバトルもまた、境目をまたぎ領域に引きずり込む性質を強く帯びている。
こういう描き方をされてみると、オカルトと人生の守護者である若人の守護者でもある星子が”結界師”なのは、良い配置だなぁと感じる。
この世界にあるべきものと、あるべきではないものの境界を定めて、イカれてしまった日常と非日常の境界線を引きなおし、大事なモノ(大事だと見つめ、定め直したモノ)を守る。
青春とオカルトが混濁するこの物語において、適切に一線を引くこと、そのために目の前の脅威や思いをしっかり見つめることは、とても大事なことなのだろう。
ここら辺、民俗学や宗教学の核心にちゃんと繋がってる要素で、ハイテンションに暴れてるだけじゃないスタンダードなオカルトの地金を感じられる。
好きだ。
オババ心尽くしの霊的呪装を、「アガんないし!」で脱ぎ捨ててしまえる生粋のギャルと、電車で着るには恥ずかしい非日常をそれでも脱げない、純情なオタクくん。
修行というにはあまりに短い触れ合いを経て、二人の視線は甘酸っぱく通い合い、命がけの呪術戦へと雪崩込んでいく。
さんざんモモちゃん→オカルンへの揺れる想いを書いてきた回の締めが、オカルン→モモちゃんの気持ちが入った”見れなさ”なのは好きだ。
ホント可愛いねぇ二人とも…この後最悪都市伝説と極悪地縛霊が融合した化け物と、生きるしか死ぬかの追いかけっこだよ頑張ってねッ!
というわけで、ブチギレテンションで突っ走ってきた物語が、ちょっと落ち着いて自分たちの呪術的バックボーンとか、キャラクターがどういうすれ違い方と繋がり方をするのか、BPMを落として描く回でした。
やっぱ口は悪いしトイレは覗かれる治安の悪さなんだが、そういうブチギレた連中にも湿った情の繋がりがあり、甘酸っぱく揺れる心があり、境目を越えて混ざり合うもんが確かにあるのだと、しっかり見せてくれて良かったです。
この短い一休みで学び取ったものを、ターボババアとの決戦でどう力に変え、超絶オカルトバトルに生き残っていくのか。
激しい闘争は、甘酸っぱい青春をどう揺さぶるのか。
次回も楽しみッ!!