オッドタクシーを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
背後に迫る狂気を知らず、小戸川は今日も夜の街を流す。
乗り込んだ狐と猫に、伸びてる長い影。
追いかけるように乗り込んでくる、自棄っぱちの暴力と裏切り。
一つ、また一つ、笑えてた日常の欠片が砕けて段々と…それでも笑うか。
静かに狂う世界の中で、笑うしか、無いか。
そんな感じの、獣人アーバンサスペンス第5話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
”アイドル”という言葉に感じる夢やキラキラをドブに投げ込み、異様に生っぽい嫉妬や愚鈍、押しの強い有能さの奥の暴力のキナ臭さが香る。
せめて夢を見たい猿のポケットから、覗く札束と借金の証書。焦げ付きながら迫る、破滅の予感。
前回田中がハマり込んだありふれた狂気の淵が、色んな人にヒタヒタと迫りつつ、謎が解かれ謎が増えてタクシーが行く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
ネットの上に膨れ上がる承認欲求と、あまりに無邪気で無防備にシェアーされる防衛戦。
さらけ出せば、嵐に殴り込まれると知ってか知らずか、何もかもがウェッブに上がっていく。
このアニメが動物化した可愛いキャラデザをしてるのは、会話劇の間を持たせるためかなと思っていたが、話数が進むにつれ顕になっていく現代のハラワタ、その分厚い臭気を覆い隠すためなのかな、と思うようにもなった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
フツーのデザインだと、この話相当アタリが強い。
ビーンボールスレスレのリアルな狂気と恐怖を、シニカルで洒脱な笑いと、動物の外見で包んで届ける計算。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
笑っている内に洒落でなくなっていく、色んな人の色んな破滅。
それをドライブさせていく手腕が、やはり鋭い。正直ナメてた部分あるな…相当”強い”わ。
Aパートはハンサムで有能な山本さんの足になって、アイドル活動と黒い謀略に接近していくお話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
しっかり担当アイドルに気を使い、活動的で前向き、押し出しが強くて優秀。
狐の顔に、時折滲む凶暴な気配がなんとも言えず不気味だ。あの人、すっげー怖い…。
ミステリーキッスの内情は過去にも触れられていたが、後部座席の舞台に乗っかると格別に生臭く、それぞれ個別の顔がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
小戸川視点で物語が転がって、ヤクザとの繋がりがチラホラ見えてくると、ただ単にアイドル残酷物語以上のヤバさが、導火線の上でチラチラと踊っている。
若いこと、無邪気であること、素直であることのヤバさを存分に見せつつ、しほちゃんとユキちゃんは散々愚痴りながら、携帯電話をにらみ続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
『オジサンにメールするのも面倒くさいし』という言葉からすると、柿花が絡み取られた網は色んな場所に広がってる。
その中心には、山本さんとヤクザ…か?
PVにかこつけてレコーダーの映像を欲しがる時の、ギラついた視線。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
何気ない会話の奥に、探りと硬質な圧力をちらつかせるマネージャーが何と繋がり、何を企んでいるのか。
推測は出来るが、まだ全体像は見えてこない。ここらのサスペンスフルな加減が、やはり巧い。
置き去りにされた携帯電話は、ギラついた眼で後を追う山田に居場所を教え、狂気の復讐者は静かに牙を研ぐ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
彼を載せたタクシー運転手は、後部座席の凶悪をフィクションと思い込み、笑い飛ばす。
だが、それが一切洒落にならないことを、僕らは知っている。山田こえーわマジ…。
相当エゲツない語調で”金剛石”をDisっていた仮面の二人が、どんだけ二階堂ルイとかけ離れているか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
アイキャッチが凄まじく残酷に、三人組の現状を切り取っている。
座り込むもの、水を飲むもの、汗一つかかず立つもの。
(画像は"オッドタクシー"第5話より引用) pic.twitter.com/uGXIhduTtl
気合と野心と才能。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
成功に必要なものが圧倒的に違っていることが、このスケッチ一つで解る。
しかしキラキラアイドル物語のように、二人は覚醒しない。
唐揚げの夢に微睡み、あるいはブツクサと愚痴たれてオジサン騙しながら、レッスンに遅刻してくる。
バズ体験に狂った椛島や、ありふれた狂気を炸裂させた田中、ヤバい金に手を出した柿花に転写されている、街の今にありふれた僕らの怠惰。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
あるいは、僕らの絶望。
ミステリーキッスもまた、それを照らし出すライトからは多分逃げ出せない。
皆当たり前に愚かで、何者にかなりたいと口だけで吠える。
だが街の夜闇は手応えなくその足掻きに食い込むだけで、手応えのある成長とか、確かな絆とかは見えやしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
”現代の病理”と定形でまとめると嘘っぽくもなるが、可愛い動物に宿っているのはそんな、笑えない現代喜劇だ。
それでも笑わされてしまうのが、良い味付けであろう。苦いコメディだこと…。
Bパートは再びドブを後部座席に乗せて、消えたクスリのミステリが暴かれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
白川さんはドブと繋がり、盗んだ薬品を売りさばいていた。チンケなヤクザのチンケなシノギに裏切られて、剛力はクリニックを閉める決断、加害者にも被害者にもならない未来を探る。
そこに恨みも怒りもあまりなく、『まぁ…こんな事もあるな…』くらいの温度感なのが、イマドキ不惑の実在感でなんとも言えなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
クリニック閉めるのって相当だと思うけど、スゲー体温低く、軽いジョーク交えつつ伝えてくんだもんな…その否・劇的な空気が、スゲー生っぽい。
そんな剛力は、親友の”温度”が高くなったと告げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
窃盗と密売の片棒担いだ女が自分に近づいてきたのは、悪漢の指示なのか。
心ときめかせたロマンスは、ただの嘘、ただの夢なのか。
小戸川はヌボっとした表情の奥で、色々考え色々感じている。
それは、ドブとのやり取りを見てても判る。
過去の体験から溺死にトラウマがある小戸川の、傷を抜け目なく嗅ぎ分ける猿の鼻。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
他人をいびって金を稼ぐクズの、生々しい描写に当てらて目眩がする。
山本さんといい、生っぽくヤバい人間造作するの、巧すぎるんだよなぁこのアニメ…外見は可愛い動物なのに。
後部座席から伸びる脅迫に汗をかきつつ、小戸川は毅然と協力を拒む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
それは強がりだが、確かに芯がある。
タクシードライバーである彼は、ちゃんと自分の操縦桿を握っている。
正気に見えた人達にヒビが入ってきて、シニカルな主役が秘めた頼もしさが、段々と染み入る。
洒脱なコメディに見えた物語はミドルノートに到達し、時代が変わっても漂う腐臭と、それに踊らされる謀略が芳しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
脅迫、謀略、逆恨みの狂気。
後部座席に怪物を載せつつ、我らの主人公はなんとか、眠れない夜を乗りこなしている。
小戸川の印象、マジ変わったなぁ…それが凄く良い。
無敵の超犯罪者に見えたドブも、逃げも隠れもせず悪漢退治に乗り出した椛島の圧力を受け、悲鳴を上げている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
”タクシードライバー”ではヴィジランテはベトナム帰りの運転手であったが、狂った正義感…を演じる承認欲求の怪物は、今作ではあくまで乗客である。
ふらつきながらもハンドルを握り、自分の腕で移動する鋼鉄を操縦できる自律性は、樺島にはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
SNS越しの喝采を求めて、顔と名前を晒して私刑を呼びかける。モニター越しにそれを消費して、安全圏から”いいね!”と喝采する。
樺島も、レールを外れて暴走を始めた。
今井くんも、小戸川にヒント貰ったナンバーズで稼いだ大金、無防備に晒しちゃってるし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
もう『バカだな~』で笑えない、半径5クリック圏内にありそうな電子時代の破滅が随所でかおをだしていて、なんとも怖い。
こういう人達、絶対”今・ここ”にいるでしょ。もしかすっと、それは俺かもしんない。
アニマル顔で造っていた距離が、暴力と謀略と狂気がヒタヒタ染み込んできて、気づけば近づいてる感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
でも『あるよね~』と笑って寄せてしまった心は、ヤバくなったからと言って簡単には戻ってくれない。
愉快でおバカな連中が、ちったぁマシな結論にたどり着いて欲しいと、どうしても考える。
着慣れないスーツで、高級レストランに馴染まない立ち回りを連発する柿花もまた、闇金の契約書をポケットに突っ込んで、破滅の淵に近づいている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
『夢が見たいんだよ!』と切実に吠えて、身を飾り背伸びした代償がコレたぁ、なんとも…なんとも…。
しほちゃんは露骨に話し合わせつつも、携帯電話に視線逃して体温無いし、まーどう考えても地獄しか待っていねぇ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
金の借り先を考えるとヤクザに繋がっていって、練馬の女子高生失踪事件、山本さんの黒い人脈と、イヤな感じに絵がかけるんだよな…こえー。
そんな感じで、シニカルな都市喜劇の皮をベロリ、一枚捲ってどす黒いマグマを見せるようなエピソードでした。大変良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
作品がこういう地金を持っていることは、第1話から上手く示唆されていたわけで、狙い通りのところにお話を導けているのではないでしょうか。
白川さんの秘密が暴かれて、小戸川のロマンスも一筋縄では行かないことが再確認されたけども、他にもアイドル暗黒伝に承認欲求ビジネスに食われた怪物たちと、物語は複雑に踊っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月6日
無防備に破滅の淵で踊る動物たちが、どんな歩みを続けるのか。
お話はまだまだ、夜の街を泳ぎ続ける。次回も楽しみ