イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

知った気でいるあなたのためのポストモダン再入門

高田明典、夏目書房。表題のとおり、ポストモダンの入門書。挑発的なタイトルに「けっ」という反抗心を感じて手にとって見たが、いい。ポスト=/モダンが成立するためにはもちろんモダンがなければいけないわけで、そのモダンを生み出した古典も重要な役割を負っている。そのことをなおざりにせず、膨大な資料に丁寧に当たり、そして骨太な自己主張を持って分かりやすい筆致でえぐりこんでいく。
ポストモダニズムはたいそう評判が悪い。が、この作者が明らかな怒りを込めて主張しているように、それはファッションとして消費されていいものでもないし、相対主義、価値放棄主義のレッテルを貼られて放棄されていいものでもないと私も思う。
そう思わせるのは書物としての見事さ、論文のテクニックの巧みさというのも確かにある。しかし「けっ」で始まった読書をここまで引っ張ってくれたのはただの教条でも空論でもなく、作者の中に熾き火のように滾る怒りと青白く光る理想だ。それを前面に出すことは最近恥ずかしいことらしいが、筆者は臆面もなく胸を張りそれに立ち向かう。私はそれは、美しい行為だと思う。入門書としても素晴らしいし、一つの意思表明の本としても素晴らしい。是非。