イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

黒い時計の旅

スティーブ・エリクソン、白水Uブックス。よい小説である。「ヒトラーが生きていた20世紀」という手垢に塗れた題材を選び取りながらも、主人公の暴力と平穏に揺れるキャラクター、こちらの20世紀とあちらの20世紀にゆれる画面の構成、満足と後悔に揺れる人々の心。巧みに計算され、丁寧に描かれた構成が全て噛みあい、小説という機械を回転させる。その速度が私を興奮させる。速度。そう、この小説には速度がある。眠っている、文学の褥で死の眠りについている安楽な小説にはない速度が。つまりは面白いということだ。是非。