イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

異邦の身体

アルフォンソ・リンギス、河出書房新社フーコーを背骨にした身体/性=生/死にかんする論考。豊かな本である。最初はそのあまりに豊かな表現に翻弄されていたが、一度筆者の有する論理的な背骨をつかむと、身体論というどうしても誌的=私的になりがちな領域を言い表すのに最適な表現としてぐいぐいと引き込まれる。
とにかく横に広い本である。テクスト読解としては三島由紀夫トゥルニエの「フライデーあるいは太平洋の冥界」、理論解析としてはレヴィナスフーコーの身体論、フロイトのリビドー論、文化人類学としてはサンビア文化のイニシエーション分析。そしてそれら全てがしっかりとした調査と明晰な論理、豊穣な文体によって深く掘り下げられている。
「私の体」のことは難しい。「私のこと」だから、言葉としてそれを捉えることができるのは多分誌だけだろう。だから、驚異的な博識に支えられながら、あまりに豊かな着想によって一種の詩の風味を帯びたこの本は、正しい方法を選んでいる。「私」は、多分、私にたどり着くことはない。近づくことはあっても。そのぎりぎり、0に非常に近い1まで近づいている本であると思う。傑作。