イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

空のオルゴール

中島らも、新潮社。らもの小説である。僕は中島らもがとても好きなのだが、この本はタイトルを知りもしないところをすっぱり図書館で見つけたので借りてきた。
話のベースラインは単純だ。フランス文学の助手が、伝説の奇術師「ローベル・ウーダン」の本を探しにいく聖杯探求譚。その途中で、闘争がある。聖杯は簡単に見つかる。苦難は続く。そして、男は本当の聖杯を見つける。喪った女、美しい女だ。
奇術というファクターを上手く利用して、小説のどんでん返しと被せる手法は流石に老練だ。さまざまな「チェッカーテーブルのひっくり返し」が、さまざまな奇術によって行われる。そして世の中を斜めに楽しみながら語られるいつものペダンティックなジョーク。詩のようにかろやかな会話。いつもの中島らもの小説で。とっても面白かった。
でも、もう新しい中島らもの小説は読めないのだ。中島らもは死んでしまったのだ。哀しいなぁ。