イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

エキゾティカ

中島らも双葉社。というわけでらものアジアを舞台にした短編集。短編が上手く書ける作家はとにかく少ない。着想の妙、手短に纏め上げる練達、短い枚数で盛り上げる手腕。とにかく「腕」が必要なのである。アジアのエキゾティック(もしくはオリエンタリズム)な部分に着目し、自分の足で歩き、ついでに悪い煙をもくもく吸って書いたこの短編集は、はまず上手い。
そう、中島らもはとにかく上手い作家だった。メッシーな柔らかさをともなった長編と、荒唐無稽でありながらぐいぐい読まされる短編。その両方にスピードとパワーを持っていた作家だった。それは上手さであり、その上手さの背骨を支えていたのは膨大な量の知識と、強烈な現実感覚だ。ジャンキーである自分、ポエットである自分。それを空から見下している自分。とにかく、自分と読者を見つめる視座の確立が上手い作家だった。その上手さが、この短編集には結実している。やはりらもはいい。