イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

物のかたちをした知識

デービス・ベアード、青土社。科学哲学で軽んじられている、理論だけではない、実験機器に代表される「物知識」についての論考。ライトサイエンスだろー、と手にとって見たらこれが超骨太な科学哲学論であり、しかも非常にユーニークかつ重要な考えが述べてあったサプライズ
ファラデーの電池モーター、分光計、パルス・グラスなどの実際の科学機器の歴史的側面をまず述べ、そこかしこに強烈な切れ味を持つ科学哲学論考が挟まる。実例でがっしりと背骨を固めた後は、認識論・知識論という抽象論を、焦りのないしっかりとした論理展開と独特かつ希少な「物知識」重視の概念で提出してくる。
とにかく足腰のしっかりした本で、「物知識」の抽象にして具象である機器とそれが使われる学問領域についての説明が行き届いている。おかげでそこらへんに特に暗い僕でも、しっかりとこの有る意味奇想を噛み締めることができた。相当にしっかりした歯ごたえがあり、とても面白かった。名著。