イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

わが母なる暗黒

ジェイムズ・エルロイ文藝春秋。エルロイの自伝。乾いている。エルロイのほかの作品と同じように、エルロイの中の暗黒をたどるこの自伝もまた、乾いている。母の殺害、セックス、ドラッグ、バイオレンス。いくらでも湿り気を帯びた噛みやすい暗黒に出来る題材、自己憐憫と保身に逃げ込みたくなるような題材を、徹頭徹尾乾き、しずかな視線で貫いていく。
その鋭さ。その重さ。エルロイはエルロイとして、もはや代替が効かない作家なのだと思い知らされた。これは、彼以外には書けない自伝だろう。たとえ同じ体験をしたものが書いても、このような作品にはならないだろう。どこまでも乾いた、暗黒への旅路。自らの郷愁すらも乾燥させ、色あせた新聞記事のスクラップのように、そしてその奥底に煮えたぎる闇を潜ませて。凄まじい作品だ。傑作。