イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

エル・アレフ

ホルヘ・ルイス・ボルヘス。さて、ボルヘスという作家をいかにして語るべきだろうか。驚異的な博識、西欧正等の極みとも言える端整な構成と文体、盲目の魔法使い。そのとおり。この短編集には、ボルヘスの魅力がみずみずしく詰まっている。
イスラム古代ギリシャ、インド、初期キリスト教、そして中南米……。円環を一つのテーマとした短編集の中で、ボルヘスの博識はなんの兆しも見せず、なんの衒いもかざさずにひょっこりと顔を出す。それは当たり前のように描かれ、当たり前のように消える。しかし、その博識とは尋常ではない量の読書、まさにバベルの図書館に踏み込むような道のりの果てに得られたものだなのだ。その労苦を一切見せず、さらりと使いこなすボルヘスの天才には、ただただ頭が下がる。
とにかく切れ味のいい短編集であり、文章の端整さと構成は完成といっていいだろう。そして、彼の代名詞であるマジックリアリズムという感覚。魔法の国に迷い込んだような、不思議な才気。まさに名著である。