イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

零度の社会

荻野昌弘、世界思想社。サブタイトルは詐欺と贈与の社会学。贈与関係から社会学を語る本は数あるが、これはそ正反対にある不誠実で一方的な贈与、つまり詐欺を、実例分析を交えながらも西洋智への深い理解と、東洋民俗学への見識を応用して解析した社会学論考である。
非常に新規な視座をすえながらも論考の足取りは鋭く、的確である。なによりも文章の足腰がしっかりしており、読みやすい。また、阪神大震災という、資本主義契約以前の世界、ホッブズから始まる暴力の独占による近代国家成立、という定義以前の瞬間を実例で示し、強力な観察眼で分析、例示してくる。とにかくこれぞ論考という鋭さであり、その鋭利な刃を持って現在の資本主義社会の歪さ、社会学分析のゆがみを切り裂いてくる。名著である。