イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

自殺の思想

朝倉喬司、大田出版。明治の藤村操から昭和の岡田有希子までの、日本人の自殺を扱った本。凡書である。一つには、デュルケームの自殺論を論拠としておきながらその説明・分析がほぼ一切なく、無批判かつ無条件にそれを採用していること。次に、自殺という問題点に自身を置きながら、あまりにも「自分はわかっている」という態度での論調が多すぎること。最後に、「理由があったから自殺した人」ばかりを取り上げ、現在今まさに在る「しにたかないけど死んじゃう人」への言及のないあまりの厚顔無恥
以前に「早すぎる夜の訪れ」という傑作を読んでいるせいか、途中にあまりの不愉快に読む指を止め、食餌でもするかのように読んだ。自殺はきつい。ハードでソリッドな問題だ。それに対する筆者のあまりの無神経さ、自分の位置を確立すべく「俺はわかってる」という態度が、デュルケームの受け売りにしか支えられていない薄っぺらさ。
ここという場で悪口雑言を書き連ねるつもりはないのだが、問題が自死・自殺という領域なだけに口を閉じることが出来なかった。己の未熟を恥じる。が、この気持ちは本当なので恥を恥として書き残すことにする。