イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

夜の中世史

ジャン・ヴェルドン、原書房。「夜」をテーマにした中世の歴史書。とにかく骨の太い本である。恐怖と犯罪、冒涜に満ちた「悪魔の時間」としての夜、快楽と酒、食事の時間である「人間」の夜、そして夢と幻視、心霊との対話の時間である「神」の夜。三つに大きく切り分けられたテーマは、とにかく問答無用で雪崩のように提示される一次資料で背骨を支えられている。
参考にしている資料は膨大かつ一次資料ばかりだが、筆者の論点と論述の仕方がとにかく的確なので非常に可読性は高い。必要なところに必要な資料を提示し、図版も抱負である。なにより、中世の夜と現代の夜を対比し、むしろ科学によって征服された現代の夜の危険性を指摘してくる視座はなかなか希少なものである。中世に興味がある人には是非お勧めしたい名著。