イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

核テロリズムの時代

NHK広島「核テロ」取材班、NHK取材班。NHKスペシャルとして纏まった同タイトルのTVを書籍として深く切り込んだもの。ルポタージュとしても世界中飛び回り、ロシアからアメリカ、オーストリアなどなど労苦を惜しまずとにかく取材している。編書の形式なのだが各章の筆のレベルにムラがなく、なかなかいいルポタージュに仕上がっている。
同時に、TV特集として核査察や核拡散という問題を扱う難しさについても率直に告白していて、ジャーナリズム・ルポタージュとしての側面も楽しめる。全般的に嘘とはったりが少なく、率直な態度に好感を覚えた。
冷戦は終わったが、もちろん武力はなくなりはしないし、その最大のものが核だ。NHK広島がそれを追いかけるのはむしろ当然の動きだし、1945年以降銃弾の音が遠いこの国の核テロは多分、そこが請け負う資格と義務がある。政治の匂いのするごちゃごちゃしたことはあえてさておき、そのことは日本人である僕が忘れてはいけないことだ。
そして、同時に人類である僕は、この本のタイトルのとおり核テロリズムの時代に生きている。爆薬と銃弾と放射能で人が死に、経済封鎖と内戦で人が餓える時代に生きている。そのことをいかに向こうに回すか(もしくは向こうに立つか) 難しい問題だが、そのことを考えるヒントは、この大量の取材にちりばめられているように思えた。良著。