イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

モダニティの社会学

厚東洋介、ミネルヴァ書房理論社会学の入門書。サブタイトルは「ポストモダンからグローバリゼーションへ」とあるのだが、この本は徹頭徹尾モダンへの言及で筆を止めている。
ポストモダンも、アフターモダンも、モダンへの理解がなければ語ることも見ることも出来ないだろう。異端を知るためには正当を、鬼才を判るためには天才を、奇道を学ぶためには正道を。
その意味で、この本は非常に優秀なモダンに関する総合的な社会学書である。政治、経済、歴史、文化。社会学が触れるべき問題点を幅広く、そして過不足なく丁寧に追いかけている。元々は放送大学のテキストであったそうで、その通りわかり易く、かといって嘘のない丁寧な資料発掘が心地好い。
先にも述べたとおり、この本はモダン=近代という僕らが通り過ぎ、打ち捨ててしまった(かもしれない)場所に関する書物だ。しかし、僕らが建っている場所はモダンの跡地に立てられている(もしくは、モダンの残骸が僕らのスタンドポイントである) ならば、モダンに対する包括的な視座無しに、現代僕たちが立っている場所(それを社会ということも出来るだろう)へのまなざしを語ることは不誠実だし、不正確だと思う。
そして、この本は平易で、広範で、誠実で、丁寧なモダンへの入門書だ。過不足なく書く領域が纏まり、さまざまな意見が紹介されている。もちろん入り口なので踏み込みが浅い部分もあるが、平易さと引き換えだと考えればむしろ長所だろう。非常によい本である。名著。