イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

幕末新撰組

池波正太郎、文春文庫。寒暖の差からか、風邪で寝込む。寝しなにちびちびと読むのに、池波の張り詰めていながら柔らかい文章は、やはり心地好い。この作品は新撰組でも沖田、斎藤に並ぶ使い手であり、明治期に新撰組の名誉回復に尽力した永倉新八を題材にしている。
結局新撰組は好きで、近藤も土方も山南も沖田も原田も島田も山崎もそのほかいろんな人が好きなのだ。皆色々志があったし、各々の人生の掘りも深い。斬り合いの日々の中で、それでも(もしくはそれゆえに)働いて、生きて、死んだ。
そんな新撰組の中で、長倉と斎藤は生き残った。生き恥を晒す、という言葉は似合わないだろう。彼らには生きる道があったという話なのだ。沖田に肺病で死ぬ星があったとも言わないし、土方に五稜郭で潰える星があったという話でもない。彼ら幕末に死んだものは、そういう道であった、ということなのだと思う。その道に左右の違いはあっても、優劣の違いはないだろう。
少し脱線したが、江戸気質の長倉の気持ちのよさ、すっぱりとした身の振り方は、流石に江戸っ子池波の本領発揮という感じである。撃剣の鋭さ、小常との愛の深さなども、池波らしい細やかな筆の運びに満ちている。梅庵や剣客ほどキャラクターの面白さがかけているわけではないが、やはり面白かった。