イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

無限の話

ジョン・D・バロウ、青土社。非常に優秀な数理学者、物理学者にしてサイエンスライターであるバロウの、無限にまつわるライトサイエンス。数学、物理学、論理学の三分野における無限を扱った本である。
分かりやすい本である。グラフや図が多用され、文章は明晰である。各領域における『無限』は交じり合いながらも混乱することはなく、豊かなサイエンス・ライティングとなっている。それはつまり、筆者であるバロウの豊かな学識と適切な理解、そしてそれを纏め上げる筆力の賜物であるといえる。
豊かな本である。無限、という掴みにくく分かりにくい学術概念を核に、数理的に無数に存在する無限の概念を数学者カントールの生涯と交えて語り、物理学における無限と宇宙論を書ききる。題材は豊富で、しっかりと腰の据わった解説がなされながら、分かりやすい。各項において、何を話すべきなのか、道はなすべきなのかが丁寧に吟味され、短い文章で必要な情報を届けてくれるからであろう。
無限をキータームにさまざまな学問領域−インフレーション宇宙論からスーパータスク、神の存在証明まで−に潜り込んで行くこの本はしかし、読みやすい。正しくライトサイエンスとして軽妙で、それでいてしっかりしている。それはバロウの学識と筆力がもたらした、一つの完成した様式だ。名著。