イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

新興宗教オモイデ教外伝 1

原田宇陀児小学館。というわけでガガガ文庫を買って読みました。一番気になっているのはもちろんこの、オモイデ教×うだるちんのプロジェクトでありました。ええ、オーケンとか大好きですからね。本編も擦り切れるほど読んでますからね。うだるちんも大好きですからね。
まぁそこら辺はさておき。難しい本だなぁ、というのが第一の感想です。流れが流れだけに、オーケンオモイデ教と比較するのは必定。ですが、オーケンオモイデ教自体がなんと言うか、小説の神様の気まぐれというか奇跡で出来上がったようなもので、もう一度書け、と言ってもけして書けないプレシャスなものだけで出来上がっている非常に稀有な作品なわけです。そういう作品と比べれば、どんな出来の作品だろうとある意味下におかれるわけです。
そういう視点を廃さないで見た場合、この小説は少し厳しい場所にある。オーケンオモイデ教にあった詩情、切なさ、狂いの匂い、身を切り裂くような女々しさ。そういうものを同じレイヤーで提出できているか、というと出来ていないわけです。それにはもちろん、15年前にあの本を読んだ僕自身のノスタルジーとかそういうモノが不可避に混じっているのだけど、多分それを取り除いても、あの奇跡には届いていない。
じゃあダメなのか、といわれれば、そうではないと答えましょう。ライトノベルの文法をなぞりながらも、オモイデの世界を維持しているのはうだるちんの才覚と技量、何よりも内側にたぎってる反骨が理由でしょう。相も変わらず文章は綺麗だし、筋少が使ったモチーフへの大量のオマージュとか、にやりとする巧さもあるわけです。
総じて面白かったわけですが、ガガガ文庫ライトノベルレーベルで、この小説は確実にカテゴリー的にはライトノベルではない。使っている語句も、表現している事象も少し難しすぎる。これが「続く」かどうかは、オモイデの世界とそれを崩さず繋いでいる原田宇陀児を消費者(読者ではなくて)が許容できるかどうか、にかかってくると思います。そういう意味で、この良質の小説は一種の試金石なのではないかなと思います。
ま、僕はね、うだるちんも、オーケンも、オモイデも大好きなんですよ。だから面白かったし、続いて欲しいと思います。難しいかな、とも同時に思いますけどね。