イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

樹海人魚

中村九朗、小学館。表紙&霊感買いしたライトノベル。霊感に外れなく、何と言うか、えも言われる奇妙なテイストに満ち溢れた面白い小説だった。僕は奇妙な味がとても好きなので、美味しくいただきました。
ガガガというレーベルは癖の強い面子がそろっているなぁ、というのを痛感する内容で、説明を一切省いた唐突ともいえる世界の投げ方、あふれ出す奇想、変質的なまでに拘る特定の言語領域。どこを取っても食いつきの悪い、癖の強い小説です。
登場人物はどこか機械的というかシステマティックで「生き生き」とはしていないし、話の筋が亜音速でぶっ飛ぶので把握は大変だし、説明するべきことをすっ飛ばして書きたいことしか書かないしで、小説としてのお作法は正直巧いとは言えません。でも、そういうのを塗りつぶす熱と狂った情が、分厚い文字で押し込んでくる。詩情に満ちたイメージと小道具の造り、お作法から外れているが故に一足飛びに到達する凄まじいドライブの領域。
ライトノベルとしては正直キツいと思います。食いにくすぎるし、文字を噛み砕く筋肉を強要しすぎている。ようするに、小説なのです。そのくせ、話の大筋は「超常能力を持った女の子が、へたれた主人公といっしょに化け物倒す」というラノベフレームなのだから、どうにもどこにも行き着けない小説なのでしょう。
でも僕は、そういうジャンルとかカテゴリーとかに噛み付いている小説がとても好きだし、この小説はそのパンキッシュな態度(というかそうならざるを得ない強圧力)を差っ引いてもきれいで面白かったと思います。出来ればもっとこの人の小説を詠みたいけど、同時にそれは厳しいんだろうな、と思い納得してしまうことに、少しの寂しさと悲しさを感じます。誰も詩など聞いていないし、パノラマ島へ帰ろう帰ろう。