イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

カトリシスムとは何か

イヴ・ブリュレ、白水社文庫クセジュ。サブタイトルの「キリスト教の歴史を通して」のとおり、キリストの誕生から第二次ヴァチカン公会議ならびにヨハネパウルス二世の改革路線までを網羅した、ローマカソリック(ならびにそれ以外のキリスト教)の入門書。
歴史がサブタイトルに入っていることから解るように、理念よりも事実、思想よりも出来事を重視するタイプの論の組み立てになっている。ので、人命・公会議名・事件名・修派名と具体的な名前、年号が山ほど出てきて、説得力がとてもある反面少々飲み込みにくい。事実を論の土台において構築するやり方は非常に堅牢かつ誠実ではあるが、可読性という点では少々難があるか。
とはいうものの、無味乾燥で味気ない記述にはなっておらず、事実の奥にある精神性や、社会情勢の変化などにも触れている。文庫であるので少々文面が足りなくかんじる部分もあるが、カソリック二千年の歴史を丁寧に追いかけた上で、大量の事例を紹介し、その上で事件の精神面にまで深く踏み込むのは非常に難しいだろう。
とまれ、事実の誤認もほとんどなく、各種異端が何故異端なのか、オーソドクス・アングリカンチャーチ・各種プロテスタントなど「他の」キリスト教とどこで何を原因にして道を違えたか、をしっかりと追いかけているのが非常に良いと思った。カソリックは「普遍」を意味するが、「普遍」はオーソドクスもプロテスタントも主張しているわけで、それでもなお「カソリック」を名前に抱くことの意味と独自性を、他との対比で浮き彫りにする手法は非常に丁寧かつ巧妙である。
少々飲み込むのに手間がかかるが、文章と研究のレベルが高く、カトリシスムをある程度知っている人もまったく知らない人も、見識を深めることの出来る本である。良著。