イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

人類は衰退しました 2

田口ロミオ、小学館。実はでないだろうな、と思っていたロミオの小説二本目。他の小説なら盛り上がるところであろう、人類衰退の原因の場面は全てふっ飛ばし、旧人類とへんてこな現生人類である妖精の間の、へんてこな日々を書いた小説である。一見マスコット四コマ系の良い話に見えなくもない設定とイラストだが、ロミオがそんな話書くわけもなく。非常に色々捻じ曲がったつくりと話になっている。
全体を貫いているのはキュニクな知性だ。よくよく考えてみれば夢も希望も未来もないのだが、語り口とデザインは可愛く明るく。理解できるはずもない妖精と、意味もなく交渉を空転させる主人公の職業。女の子一人称という形式の裏側で空回る、非常に衒学的な筆。全ては読者のほうを向いているようで90度ほど横を向いていて、その微妙な距離と間合いの取り方が、冷えた感覚として全体を包んでいる。
そういう冷え込み方はなかなか真似ることが出来るわけではなく、田口ロミオという書き手のみが所有する知識と個性の結果なのだろう。それを好き勝手に振り回し、結果ある意味で非常に悪趣味な作品になっているこの世界と作品のことを、少なくとも僕は好きなのだ。台詞の中にひっそりと「ノゾミカナエタマエ」と入れてしまうひねくれ加減は、どうにも僕の背骨にしっくりはまる。大声で「俺は悪い!」と叫ぶラフさはどうにもかっこ悪くて性に合わず、かといって真顔で正論をこねるには賢しすぎる、どうにも中途な自分もまた、冷え込んだ笑いの中で止まっていく。
そんな感じの主義主張が、小説世界の形で一貫されている。やはりこの小説と作家はなかなかオリジナルだし、ということは読んでいて楽しい、ということなのだろう。僕はこの小説がすきだし、面白いと思った。