イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アンダーザローズ 6

船戸明里幻冬舎。ヴィクトリアン団鬼六だったり、館モノ群像劇だったり、身分間抗争メロドラマだったりする漫画の六巻目。お客様の歓迎フェイズは何とか無事に終了。ブレナン先生が少し人生に疲れきった顔で、落ちるところに落ちたりしてまぁ落ち着いたかな、と思ったらクソ親父が全開で地雷を踏み抜いた。
言われてみれば「ああそうね、ソレしかないよね」という地雷で、クソメガネことウィリアムの行動にも一応の説明が付く(が、先生をレイプする理由にはやっぱりならない)秘密。しかし、言われないと気付かないというのは素直に敗けでもある。同時に、負けでもいいかなぁ、という強烈なカタルシスが今回の展開にはあって、やはりこの漫画は徹底的に巧い。
この漫画は感情の上げ下げ、というか緊張と安定の供給がタイミング・その質ともに非常に巧い。どうにか幸せにならんかなぁ、と思わせるキャラクターと、どうにもならんよな、と納得させる舞台設定、綿密な描写、丁寧な漫画表現と台詞の選択。一つの問題が終わった、と思えば、キャラクター間に(そしてヴィクトリア朝という時代に)巧妙に準備されていた緊張が顔をだし、見事に脚を吹き飛ばす。
この緩急こそが最も基本的なお話のパワーだと思うし、そのある種の強引な横合いからの殴りつけが、繊細な漫画表現と魅力的な絵に支えられているという意味でも、この漫画は漫画でしか描けない。細やかさとパワー、緻密さとタフな一撃。相矛盾する魅力を兼ね備えているのに、トータルで見るとこれ異常ないほどにわかり易い。ようは貴族(とそれにたいするカウンターとしてのそれ以外の階級)の話しで、かなりクラシカルな物語なのだ。その上で、古臭さのない新鮮な切断面を兼ね備えている、活き活きとした漫画である。六巻も、やはり良かった。今後どうなることやら。