イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

艦これRPGレビュー

燎原の火のごとく、あっという間に店頭から消えた艦これRPGですが、アマゾン先生の粘り腰によりガッツリ届きました。 
簡単なレビューをしますよ。 

◎リプレイパート 
内容はルールパートとリプレイパートにわかれた、サイフィクの基本フォーマットです。 
このリプレイがなかなか良い初心者向けリプレイで、ゲーム内の処理だけではなく、「初対面の人達が出会った時GMがやるべきこと」「プレイヤー/GMの距離感の作り方」「提案の受け取り方/拒否の仕方」など、"GMやるときに微妙に悩むけど、あんま纏まってないポイント"を細かく乗せてます。 
非常に実プレイの参考になる、教本的リプレイだと思います。 

PLの立ち位置も 
TRPGも軍事も詳しくない初心者(ややセクシャル方面にマナーが悪い)」 
TRPGは経験が薄いが、軍事ネタに詳しい初心者」 
TRPG経験が豊富だが、艦これにはあまり詳しくない(体を装っている)経験者」 
TRPG経験豊富であり、艦これもやってはいるが意図的に理解をずらして再現する人」 
と綺麗に分かれており、この本を手にとって遊ぶ人種を巧くトレースできている気がします。 
速水さんの周囲をよく見つつ、可能な限り暴走する動きが僕は好き。 

PL/GMともにプレイに対して協力的であり、積極的な提案や相手に受け取りやすい玉を投げる努力など、マナーのいいプレイングが目立つのもいいところ。 
此処に書かれたプレイングをトレースしていくと、結構グッドプレイヤーになれるんじゃなかろうか、と思った。(ただし、速水さんのプレイングは難しいのであんま推奨しない) 
経験者もしっかりと背筋を伸ばせる、非常に優れた教本だと思いましたよ。 

◎ルールパート 
艦これのファンアイテムとしての側面も持つこのゲーム、なんとキャラビルドルールはほぼないです。 
ブラゲー版のキャラがデータ化されており、それを選択して遊ぶ形になります。 
「なりきりしなきゃいけないんじゃないのー」とか「艦これ知らないと遊べないんじゃないのー」という部分はリプレイで丁寧に解答しているのでそっちを読んでもらうとして、世界観を固定できない制約もあって、TRPGで遊ぶ上ではちょっと難しい部分もあります。 
艦むすたちはあくまで艦これ運営のキャラであって俺のキャラじゃねーなーという部分をどう埋めるのか、というのが大事になってくると思いますが、そこら辺は色々考えられています。 

シナリオ途中で「個性(≒特技)」が任意に増えるので、「俺もうちょっとこのキャラ殺伐とさせたい」とか「エロキャラ扱いだけど真面目にしたい」と思ったらカスタム出来るようになっています。 
後はまぁ、プレイグループ内部での同意をある程度作った上で遊ぶのがいいんじゃないでしょうか。 
「どのくらい原作準拠でキャラをロールするか」「世界観の殺伐具合はどの程度にするか」「ラブコメっぽいことするかしないか」辺りは、システムサイドというか卓内部の問題であり、プレイ前にぶっちゃけて話しておくと事故は少ないんじゃないかなぁ。 

システム面で言うと、艦種ごとの特徴や射程による行動順などをかなりスマートに落としこんでおり、「お、艦これっぽい」という印象はビンビンします。行動力と資源というリソースの使い方がなかなか面白く、「戦艦にできること/できないこと」「駆逐にできること/できないこと」がなかなかスムーズに表現されています。 
行動力効率の格差で上手くクラスごとの仕事が回転するようになっていると思うので、艦種をかぶらせず遊ぶのが基本になるのかなぁ。 
敵が判定をしないのも、なかなかスマートでいいんじゃないでしょうか。 
GMが処理する敵の数多いしね。 

シナリオの方は半分シナリオクラフトみたいな、ダイスふってるとイベントが起きる系ゲームなんですけども、起こるイベントをPLサイドから提案するシステムが盛り込まれていて、なかなか面白い。 
実際に回してみないと取り回しはわからないですけど、GMの負担をPLサイドに分担させることで敷居を下げるのは結構グッドな試みだと思います。 
全体的に、初めてTRPGを遊ぶ人に向けたデザイニングをそこかしこに感じるルールとなっております。 

◎ 世界観パート 
ブラゲ版にストーリーがなく、「艦これ世界ってどーなってんだろーな」っていう語り合いもひっくるめてゲームというデザインになっている以上、TRPG版がそこまで世界観を固定できない制約があります。 
「艦むすって何?」「深海棲艦はなんで攻めてくるの?」「彼女たちはなぜ闘ってるの?」といった、ゲームの根っこになる部分はまるっとボヤカされています。 
わりとどーでもいい部分では死ぬほどロックなんですけどね……ワオキツネザル提督とか。 
なので、そこら辺のコンセンサスはシステムサイドではなく、テーブルサイドで補強しながら遊ぶといいかな、と感じました。 
環境がキャッキャした気軽なゲームを遊びたいのであればそのように、シリアスでソリッドなプレイがしたければそのように、世界観を足したし遊ぶとグッドかな。 

その上で個人的な好みとしては、戦争を扱っている以上それなり以上に真顔でプレイしたいので、「キャラクターは戦争をどう感じているのか」「敵をどう考えているのか」辺りははっきりさせたい。 
そこら辺の情報はわりかし、はっきりしてるキャラとぼんやりしてるキャラが明確かなぁとも思います。 
ぶっちゃけ提督との色恋ネタがキャラ立ちになってるキャラより、戦争に対して何らかのスタンスを持っているキャラ(長門、赤城、天龍、那智、叢雲、響あたり?)が素直にプレイできると思います。 
吹雪を艦むす成り立てド新兵プレイで遊ぶのも、やりやすそうな感じ。 
無論キャラの個性化はデータ面でも設定面でも許容されているので、道化をあえて装いつつ戦艦・正規空母軽巡・駆逐の間をつなぐ立場を自認してる苦労人龍驤ちゃんとかも出来ますけどね。 
リプレイで川嶋さんも言ってましたけど、原作そのままよりも、各卓ごとに味付けしながら遊んだほうが、ストレスなく遊べると思います。 


こんな感じでしょうか。 
正直「ファンアイテムショーどーせー」と思ってたら、相当に遊びやすくスマートなシステムが出てきて嬉しい誤算というか、ぶっちゃけ遊びたい。 
……やるか、机上演習(ソロプレイに対応してる所も、TRPG初めての人に向けた気配りを感じられてグッドですね)