イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ミリオンドール:第4話『すう子の覚醒』感想

在宅と現場が交錯する時物語が始まりそうで始まらないアニメ、四話目はもう一人の主人公、すう子のお話。
と言いたいところだが、マリ子とイトリオの話も貪欲に進める。
OP・ED両方蹴っ飛ばしても四分という限られた尺の中で、ストーリーすごろくを進めるべくイベントをこなしまくるアグレッシブさは買う。
ミリオンドールは、話を進めることを選んだのだ。

だが、描写に厚みがなくてキャラの行動が目の前を通り過ぎて行ってしまっているのも、今までどおり。
イトリオがCDを売り切って『嬉しいね』と言ったシーンで、『良かったね、嬉しいね』と一緒に思った視聴者はあんまりいないと思う。
今回少しだけ別のキャラとの絡みが合ったマリ子と較べても、イトリオはイベントが起こったシーンに同席しているだけで、何を考え何を感じているのか見えない。

そんなことを丁寧に描写している時間はない、ということなのかもしれないが、それならばそれで
時間あたりの印象を濃くするべく、粒の立った絵が欲しくなる。
作画クオリティを上げるというのが無理な要求なのは画面見てれば分かるが、それでも一瞬しか尺が用意できない以上、絵の説得力で描写を圧縮しないと、キャラクターの気持ちが見えてこない。
現状、イトリオは高速で流れていくお話にされるがままの、ただの駒だ。


一方、在宅の雄すう子は結構時間を使って描写されていた。
リュウサンに負けず劣らずのダメ人間ではあるが、同じように鎌倉ひなみに救われ、人生の隅っこにギリギリしがみついている対比は好きだ。
何度拒絶されてもすう子を諦めない姉は、天使か何かなのだろうか。

メジャーになってしまったすう子がひなみを諦め、イトリオに乗り換えるところの心情は『頑張って推測してね』もしくは『リュウサンとだいたい同じなんで省略するね』ということなのだろうか。
メジャーデビュー宣言するひなみに一言、『さようなら、私のひなみ』とか入ってれば、見えないものを見ようと頑張る必要もないと思うけど……。
一話半(それでも6分だけど)描写されたリュウサンに比べて、同じ共感できないクソヲタ主人公たるすう子には、描写の後押しが薄い気がする。
他にもすう子のブログがひなみをメジャーにしたと言いたいのであれば、ブログの読者数を写すだけでは説得力が足らないんじゃないかとか、でもすう子ブログがやった行動→社会の反響とかイチイチ描写してる時間ないよなとか、色んな事を考えてしまった。


3分間で起伏があり、克服するべき葛藤があり、そこに絡みつく勘定がある『フツーの話』をやるのはいろいろ厳しいんだろうなとは、思いながら見ている。
無論金銭やスタッフなどの内情は、作品ごとに違うのだろう。(スタッフクレジットに監督いないし)
ミリオンドールに『フツーの話』を全うにやりきれというのは、高望みなのかもしれない。

しかし短い時間に情報や感情を圧縮し、伝えるべきメッセージを明確化してそれをやり切った先行作品は、幾つもある。
作品として世界に飛び出してしまえば様々な事情は切り落とされ、ただ三分間の映像だけが視聴者の目の前に置かれ、受け止められ、評価される。
内情がどうであれ、出てきたものをまず見るというのが、受け取る側の普通の姿勢だし創作物への礼儀でもあると、僕は思う。

そういう視座で見ると、30分でやるべきお話を3分にまとめる無理を感じるし、その無理をひっくり返す努力は尽くされていない。
『ダブル主人公・ダブルアイドル』『均質に描写され気味な二次元アイドルに、リアルな対立軸を埋める』というコンセプトは好きだし魅力を感じるので、僕はずっと高望みをし続けるのだろう。
それは叶わないのかもしれない……というか多分叶わない。
でも、この作品を諦めてしまうのも、『ミリオンドールはこんなもん』と言ってしまうのもまだ早いような、中途半端な状態に、今の僕はある。

来週、何が起きるんだろうか。
というか、何が起きないのだろうか。
さっぱり分からないまま、僕は待つ。
結局、僕はこのアニメ好きなんだと思います。