イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

うしおととら:第7話『伝承』感想

少年と妖怪が運命に立ち向かう物語、七話目は転換点となる旅立ちのお話。
今まで昼行灯だった時雨親父が輝き、光覇明宗の設定を説明し、潮の母や白面といった今後に繋がる要素をチラッと見せる、盛り沢山なエピソードでした。
単純な設定説明や伏線出しに終わらせず、潮と親父の不器用なぶつかり合いや、とらと親父が信頼関係を結ぶ過程なんかをちゃんと描いているのが、うしとららしい満足感につながってるね。

今回のお話はこれまで潮ととらという個人単位で進んでいた物語が、親父をハブに光覇明宗という組織と繋げっていく、結構な転換点です。
同時に状況に流されるまま人を助けていた潮に、『母親の探求』という大きなクエストが提示される回でもある。
勝手気ままな退魔行だったこれまでの話に比べると、こっからの話は組織のしがらみだとか、母への慕情と妖怪からの敵意だとか、より葛藤が強くなる=お話が更に面白くなる展開を盛り込みます。
この後伝承者候補とのぶつかり合いや、母にまつわる重大な設定開示など、更に盛り上がる要素をどんどん増やしていくわけで、ここでの折り返しをスマートにやれるかどうかは、結構お話全体の盛り上がりに直結します。

うしとらのアニメは省略と強調の選抜がとても上手いので、今回も必要な見せ場を適切にピックアップしつつ、飛ばせるところは飛ばす構成になっていました。
説明ゼリフの取捨選択が特に巧いと、個人的には感じております。
絵の力を信じて結構大胆にすっ飛ばすけど、伝えるべきものはちゃんとわかるし、不自然にもなってないからなぁ。


そういうスマートさを見せつつも、話の軸はあくまで時雨親父どのであり、今まで目立っていなかったチャランポランなオッサンをどうかっこ良く見せるか、ということになります。
時雨は妖怪を狩る退魔僧であり、死と隣り合わせかつ表沙汰にならない稼業についています。
だから、潮の前ではチャランポランなおっさんを演じ、危険な領域には立ち入らせないよう遠ざけていたのは、道理っちゃあ道理。
しかし槍が開放され否応なく自分の領域に入ってきた以上、そして宿命の重さから息子には『死んだ』と伝えてきた母に興味を持ってしまった以上、もう安全な領域に留めておくことは出来ない。
そういう現状を正確に認識して、ちゃんと説明の場を作る筋の立て方が、まず大人としてちゃんとしているわけです。

その上で、あまり一緒にいられなかったこと、沢山嘘をついてきたことで溜まった潮の鬱屈を吐き出させるべく、『親子の関係にゼニを持ち出す』という神経の逆撫でをあえてやるのが、あまりにオヤジすぎてやべぇ。
自分の息子がキレて一回殴れば気が静まる気性の持ち主だと時雨は知っているわけで、『俺は本気(マジ)なんだぜぇ!!』は綺麗に掌の上で踊らされた上で打たされたパンチだったと言えます。
息子の本気のパンチを受けて、伝承者としての資質を見極める意味合いも含んでいて、流石に凄腕の退魔僧、行動に無駄がないなと感心します。
その上で、過酷な運命に巻き込まれた息子の激情を、正面から受け止めてやろうという気概が一番最初に立ってる所が、最高に良いんだけどね。
ノリよく息子とじゃれ合っているファンキーなおじさんが、錫杖を構え口上を見事に決めるギャップも良いんですが、根本的な格好良さがビジュアルやシチュエーションではなく、時雨の行動理念にあることが、うしとらが広くて強い作品な理由でしょう。


初対面のとらちゃんとの掛け合いも見事で、戦いの中で性根をお互いに確認することで、オヤジもとらちゃんも、生半ではない実力の持ち主だと納得させられる描写でした。
潮が日々ツンツンデレデレしていることが、今回時雨の見せたクールな対応と良い対比になってる気がするな。
旅立つ息子の道連れとしても、ここでとらを認めておかないと感情がスッキリ収まらないわけで、綺麗に収束させていますね。

あと危機演出担当の退魔僧Sが最高に上手いトスをあげていて、『ゲスな妖怪』呼ばわりしてとらちゃんのキレ芸を誘ったり、場が荒れたら即座に開放される程度の拘束でピンチを盛り上げたり、潮を気絶させて時雨ととらちゃんの1ON1状況を作ったり、見事なGM捌きだった。
ああいうトスを上げてくれると、シーンは最高に盛り上がるし、スパイク決める側としても気持ちいいんだよなぁ。
『何か……何か切っ掛けがあれば……』と言ってる時の時雨PLのニヤニヤ顔と、それを受けて『あ、乱入します乱入、坊主ぶっ飛ばしてド派手に。不動金縛りはフレーバー拘束ですよね?』と答えたとらPLのニヤニヤ顔、俺見たもん。


一見繋ぎ回のように見えて、貪欲にサブキャラクターの魅力を掘り下げ、今後の展開をスムーズにする要素を沢山盛り込んだエピソードでした。
バシッと派手なのを決める回も良いんですが、比較的地味目なこういう回がしっかり面白く、キャラクターの感情のうねりを強く感じ取れる作りになってるのは、とっても良い。
来週からまたたびモード(またたびモードでーす)が、OPでも異常な存在感を出している衾くんが、どんだけキモく演出されるのか楽しみです。