イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

すべてがFになる -THE PERFECT INSIDER-:第9話『黄色の死角』感想

止まっていた時が動き出した結果人が死ぬアニメの第9話は、閉ざされていた島が開かれたらトリックが解かれるお話。
原作からいろいろ改変しているアニメ版ですが、『死人がひとり減る』というかなり大胆な改変を経て、一気に解決編に突入しました。
血の繋がった家族だけが死ぬことで、真賀田四季の殺人の意味合いがくっきりするという狙いなのか、はたまた四季パートをねじ込むためのスペース空けの結果本筋が変わったのか。
そこら辺は分かりませんけどね。

自分は既読者でありトリック自体には驚く資格が無いため、重点的に見ていたのはキャラと感情でした。
つまり今までどおりの足場から見てたってことなんですが、久々の登場なった儀同世津子は真賀田四季とは別の意味で萌絵にはないもの-ねっとりとした媚態-をまとっていて、見ていて面白いキャラだった。
こっちのオチも知っちゃっているのでまた歪んだ目線から見るわけだけど、ほっさんのネットリした演技が最高によく聞いていて、そら萌絵ちゃんもムーっとするわなという動きになっていた。

世津子や警察といった外部と接続することでこの話は内破するわけですが、取材という形で外部と接触した途端、化粧を始める島田さんの俗物っぷりとか素晴らしく面白い。
あれは異物に対応するための一種の戦化粧であり、素っぴんで対応……どころか水着姿というトンチキ衣装まで一緒に着ていた萌絵と犀川は、外部ではなく内部として遇されていたということになる。
見られることに対して口紅をつける知恵を持ってる島田さんは、萌絵や犀川先生なんかよりずっと世渡りというものを分かっていて、だからこそ真賀田四季からは遠い存在なわけだ。
異界性すらただよう清潔感の塊として描かれながらも、こう言う部分で人間の体温を感じる演出をするのは、このアニメを僕が好きな理由の一つだ。


前回紫色の夜明けの中で分かり合っていた二人は、今回オレンジの夕焼けの中で真相にたどり着く。
所長の死都であったあの屋上は常に劇的な変化と出会う場所であり、外の風景が見えるけど未だ研究所の内部であるという、境界的な風景を担当している。
外部と内部が接することでミステリが内破し、事態が解決に滑り落ちていくというお話しの運動を、繰り返される場所の選択と、印象的な光の変化で説得的に見せる演出はやはり面白い。

答えにたどり着いてから一気に加速しクリティカルな局面に辿り着いて終わるのは、停滞がなくて良いと思った。
犀川先生の頭脳が加速した時の、普段にもましてトンチキな言動がエキセントリックさを増幅させていて、『よく分からんが自体は収束しつつある』という印象をあたえるのに成功していた。
『思い切り罵ってくれ!』のわけのわからないさはなかなかのもので、良い台詞だなぁと感心しきりである。
インティジャだのアンサイド・ショートだの、暗号にしか聞こえない言葉が飛び交ってガッツガッツと進む解析シーンも、おそらく来週行われる腰を落ち着けての解説編への期待を高めていて、好みの演出だった。

そんなこんなで、外海に向かって研究所が開かれ、異界を守っていた結界が破綻するお話でした。
密室は隠して解かれたわけだけど、殺人の動機と背景はこれから説明するところ。
真賀田四季の天才性と異質性ってのはこのお話を成り立たせる根本だと思うので、それを維持しつつどう納得できるシーンに仕上げるのか、
今から楽しみです。