イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Go! プリンセスプリキュア ベストエピソード五選

というわけで、まさに大団円を迎えたプリキュアシリーズ……というかヒーロー・フィクション史上、女児アニメ史上に残る傑作プリプリ。長いシリーズですので、個人的な想いを振り返る意味でも、ベストエピソードを5つ選び一言書きたいと思います。

 

・第4話『キラキラきららはキュアトゥインクル?』

黄色もその分に漏れず、マイペースなだけではない強い意志と、夢を見据えて全力で走る真っ直ぐさを兼ね備えた、非常にしっかりした娘さんでした。

アニメ感想日記 15/02/22 - イマワノキワ

序盤からはきららちゃん登場回を。フックの強いヴィジュアルで歪んだ理想を押し付けられていた彼女ですが、そういう妄想を一気に蹴り飛ばす可憐さ、鮮烈さ、格好良さを兼ね備えた、衝撃のデビューでした。

クローズさん最高のトス上げ「大した夢じゃねぇんだろ!」をきっちり受け、星空と世界中の夢を背負っての変身、流れ星のような必殺キックと、とにかく前向きでかっこいい女の子を印象的に描いています。ここで感じた印象がブレることなく豊かに発展していく意味でも、きららちゃんの原点といえるアニメ。

ノーブルな雰囲気と甘さが先に立って、『好きな空気だけどヒーローモノとしてはちょっとパンチ足らない?』と侮っていた意識を、綺麗に刈り取る名乗りだったなぁ……。僕はカッコいい女の子がとても好きなので、ここでガツンとやられて前のめりになっていきました。 

 

・第24話『笑顔がカタイ? ルームメイトはプリンセス!』

くすぐり合った後見つめ合う所の絶妙な間のとり方といい、気のおけない少女たちの弾けるような若さの描写といい、二人の距離が縮まる説得力がたっぷりあって、キメ所がキッチリしてるお話は見てて気持ちいいなぁと思うことしきり。

Go! プリンセスプリキュア:第24話『笑顔がカタイ?ルームメイトはプリンセス!』感想 - イマワノキワ

中盤からは濃厚なきらトワ回を。メッセージ性やテーマへの取り組み、構成の見事さが目立つプリプリですが、女の子同士の柔らかく輝く瞬間をしっかり切り取り、フレッシュに描く筆も冴えていました。そういう柔らかな瞬間の魅力が一番出ている回だと思います。

ダレ場になりがちな夏のプリキュアですが、プリプリ は『トワ様の社会復帰』というテーマを一本入れることで、巧く中だるみを回避していました。4~6話くらいでサイクルを切り替えつつ、全てを根本テーマである『夢』に連結してシリーズを構築するスタイルが、構造疲労を巧く避けていた印象です。

トワ様のベトナム帰還兵っぷりはなかなか印象的でしたが、はるかがなかなか折れない子ども(一回超派手にへし折れるけど)なので、『夢』を語るときに忘れがちな弱者への視線を受け止める役目として、結構大事なエピソード群だったと思います。そこに寄り添って支える側を描く意味でも、この話は大事だし好き。『少女たちがイチャイチャするためだけに存在する、なんかムード満点で綺麗な泉』が唐突にポップアップする所とか。

 

・第33話『教えてシャムール♪ 願い叶える幸せレッスン!』

大事大事と言っている夢もまた、生徒や子供だけが持つのではなく、大人であり先生でもあるシャムールもしっかり持っている。 『地球の文化を学んで、いつかかならず来る祖国復興と人材育成に役立てる』という、大した(本当に大した)夢が。 この『夢を見るのは子供の特権ではないし、夢を叶えたあとにもまた夢がある』という描き方は、本当に素晴らしい。

Go! プリンセスプリキュア:第33話『教えてシャムール♪ 願い叶える幸せレッスン!』感想 - イマワノキワ

 作中最強クラスの人間力を誇る猫教師と、己の絶望とゲイネスに悩みつつ美しさに辿り着いた男。俺の好きなキャラクターが二人もメインを張るんだから、そらー気に入らないわけがないっていう回です。

どうしても戦闘がメインになりがちなプリキュアですが、それを終えた後の人生、潤いを必要とする余生に生きがいを感じ、未来のために子どもを導くシャムールは、世界の幅を広げる見事なキャラだったと思います。ある意味、月影ゆりが拾いきれなかった問題を作中で拾いに行ったというか。

シャットさんも絶望に生まれつきつつ『美しさ』を夢見るという、アンビバレントな存在なわけですが、ここでシャムールと出会ったことで一つの答えを得て、マフラーもらったりしつつ生存ルートに入りました。こうして己のカルマを乗り越え、新しい道に飛び出すキャラがいることで、主人公たちが象徴する『夢』の存在感がより確かなものになるってのは、スゲー重要。

後単純に、シャットさんもシャムールも可愛げがあって、凄く好きになれるキャラだったってのはデカい。図式がしっかりしてるのがプリプリの強みなんだけど、単純なキャラ萌え力の強さ、キャラクターを好きになれるフックの強さは見落としたくない感じですな。


・第39話『夢の花ひらく時! 舞え、復活のプリンセス!』

ずっと誰かに導かれてプリンセスを目指してきた子供は、ただ自分のために、そしてみんなのために夢の痛みを受け入れる女の子になりました。 故国のために、家族のために、王族としての誇りと義務のために戦い続けて傷ついた王子は、新しい夢を手に入れました。 真正面から愛と夢、強さと正しさと美しさについて語ってきたお話しの一つの結論として、本当に素晴らしいお話だったと思います。

Go! プリンセスプリキュア:第39話『夢の花ひらく時! 舞え、復活のプリンセス!』感想 - イマワノキワ

話が最終局面に入る前に、主人公の物語を総括し完全に語り尽くす名エピソードを入れるのが、プリプリというアニメ。『フンワリした夢過ぎて、あんま乗れねぇ』という冷静なツッコミまで含めて、はるかの物語を全て回収しにかかる強烈なお話です。

このエピソードで示した『夢の道は結局一人』『でも、けして一人では歩けない』というシビアで矛盾した現実認識は、個々人の夢を大事にして前向きに手を離す開放的な終わり方にも繋がっているし、ひとりひとりの夢を守る力をプリキュアに独占させるのではなく、個人に受け渡す終盤の展開にも繋がってます。そういう意味でも要。

また単純にカナタとはるかのすれ違いのドラマ、再開の物語の温度が熱すぎて、見るものの心を震わせざるを得ないってのも大事です。冷静な構成と燃え上がる情熱の両立は、このアニメの強さに直結しとるわな。

ヒーロー変身不能から 初期衝動を思い出して奮起、決意を語りながらの部分変身、勇気に打たれたカナタの再起と、ヒーローものとして最高にかっこいいシーンが目白押しなのも、中盤のクライマックスを盛り上げていて素晴らしいですね。

あとカナタとはるかの恋心を、すごく素敵に描いてるのがいい。プリキュアは既存のジェンダーイメージをかなり大胆に蹴り飛ばすアニメなんですが、プリンセスというマッチョな政治に寄りかかった立場を再構築し、独力地力で王子様を引っ張り上げるパワフルなプリンセス像をしっかり打ち立てたのは、フェミニズム批評の視線からも評価されていいと思うんだよね。ラディカルな方向に行きすぎず、両性相補う関係をちゃんと描いてるのがいい。

 

・第50話『はるかなる夢へ! Go! プリンセスプリキュア!』

本当、良いアニメだった。 ありがとう、Go! プリンセスプリキュア

Go! プリンセスプリキュア:第50話『はるかなる夢へ! Go! プリンセスプリキュア!』感想 - イマワノキワ

 それしか言う言葉が見つからない……(唐突なジョニーッ面) 『終わり良ければ全て良し』って言葉がありますが、終わりに向けて細緻に構成を考え、実感を持って描写を積み上げていくと、物語ってこういうところまでたどり着けるんだねっていう見本みたいな最終回でした。

楽しいことも苦しいことも、立派なこともくだらなく思えることも、全ての日々が積み上がってこの満足感と清涼感に繋がっているわけで、1年シリーズを見事に走り切ったアニメの勲章みたいな最終回。控えめに言って完璧。

『完璧すぎて隙がない』ってのもプリプリ評でちらほらみる言葉だったんですが、完璧を目指すためにやらなければいけないこと、隙が暴れまわって可愛げに変わるために必要な土台の大事さを考えると、これだけ完璧にやれる(そして僕の目には、好きになるための隙もどっさりと用意されてた)パワーがプリキュアシリーズにあると示せたことは、大きな意味があると思います。

長く続けていれば構造疲労は避け得ないし、ライバルたちも当然本気でやっている以上厳しい戦いなのはわかりますが、いろいろな困難を乗り越え、『プリキュアとは何か』『ヒーローとは何か』『夢とは何か』というど真ん中の疑問に真っ向勝負を挑んで大勝利したこの作品、やっぱすげぇのよ本当。

 

 

色んな要素を沢山盛り込みつつ、ほぼ捨てる所なしで料理しきったおかげで、5つに絞るのは心苦しいですがとりあえずコレで。候補としては第1話、第11話、第21話、35話、第36話、第37話、第38話、第41話などがありました。……『カナタ記憶喪失編』のテーマ性、こうしてみると本当に凄いな。

プリキュアはまだまだやれる』という希望を鮮烈に打ち立てた、立派なシリーズ10作目だったと思います。細かく過去シリーズに感じていたしこりや不満点を拾い、別の回答を用意してたのはリブートとして最高だった。

プリプリが仕立て直した土台の上に魔法つかいがどういうお話を積み上げていくのか。期待は高まるけども、まぁ別のお話しだしね。引っ張られすぎず、視聴者も引っ張りすぎず、魔法つかいだけが持ってるチャーミングさを大事にしたいなぁと思います。